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【高校野球】ベテラン監督から最高の形でつながれたバトン 桐光学園新監督が県大会初勝利

 

「早く勝てる手段を選びました」


初戦突破を遂げた桐光学園高・天野監督は試合後、報道陣の取材に応じた[写真=BBM]


【秋季神奈川県大会】
▽2回戦 等々力球場
桐光学園10-0追浜(6回コールド)

 桐光学園高が9対0でリードした6回裏の攻撃。大会規定により、5回10点差以上でコールドゲームが成立する。無死一、二塁。今秋から母校の指揮を執る天野喜英監督はこの日、1回裏無死満塁から3点を先制する走者一掃の先制適時二塁打を放った四番・小田倉優真(1年)に、犠打のサインを出した。意図を語る。

「1点取れば勝ち。前の塁、前の塁へと進める。早く勝てる手段を選びました」

 一死二、三塁。次打者の遊ゴロ後、相手校のバッテリーミスにより、三塁走者が生還し10対0、試合が終わった。

 天野監督にとって、県大会初勝利である。

「(今夏までのコーチからの)立場が変わっても、勝利の喜びは、何も変わらないです。夏の1敗、秋の1敗も同じ。1回も負けられない。目の前の一戦に集中することは当然ですが、目標を持っています。未来を見据えながら戦うことで、今がある。投手起用、打順なども試行錯誤しながら、一番良い選手を起用し、最善の選択をしていきたいと思います」

 40年近く、桐光学園高を率いた野呂雅之前監督が今夏の神奈川大会限りで退任し、天野新監督が就任した。2001年春、同校が春夏を通じて初の甲子園出場を遂げた際の主将・捕手である。東海大を経て、社会人野球・セガサミーでプレー。2012年に母校に戻り、野呂前監督をサポートしてきた。「桐光野球」が擦り込まれている。伝統のスタイルとは何か。

 負けない野球である。バッテリーを中心に守りを固め、攻撃はきっちり得点圏に走者を進め、1点をもぎ取る。追浜高との初戦(2回戦)はまさしく、そのポリシーが徹底されていた。主将兼エース・林晃成(2年)を、バックが無失策でもり立てた。打線は相手からもらったミスを、確実に得点につなげた。

「もっと、精度を高めないといけない。バントを決めた中でも『こういう形のほうがいい』というのがある。このチームは何も実績を残していませんので、最善を尽くすのみです」

 天野監督は元捕手らしい発言をした。すべて、最悪を想定して動くのだ。

桐光学園では異例の投手が主将


桐光学園高のエース・林は同校では異例の投手でキャプテンを務める。右袖には主将マークが縫い付けられている[写真=BBM]


 桐光学園では異例と言える投手が主将を務める。「1年生を含めても、誰がキャプテンをしてもいい。この秋は期待を込めて林にしました。(遊撃手で副将の)米山(蒼汰)がサポートしてくれている」(天野監督)

 5回2安打無失点に抑えた林は言う。「未熟なところもありますが、もっと成長できればと思います。今日は緊張しましたが、自分が勝たせてやろうと思っていました」。チームリーダーの自覚が日々、芽生えてきている。1年生・周東希虎も副将として支え、学年の枠を越えて、チームが一体となっている。

「(この秋は)県大会決勝まで進出し、関東大会の出場権を得て、勝ち上がり、来春のセンバツ甲子園に行きたいと思います」(林主将)

今秋からチームを指揮する天野監督は県大会初勝利。試合中は的確な指示を出していた。右は増田仁コーチ[顧問][写真=BBM]


 試合後。ベンチ入り25人、記録員ら全員で素早く荷物を片付け、三塁ロッカールームから二列で、整然と引き揚げた。「最後までしっかり」。こんな声が聞こえてきた。ゲームだけでなない、試合会場から出るまでの立ち居振る舞いを意識。春、夏の甲子園大会では常に、迅速な行動が求められる。県大会初戦から「全国レベル」を頭に入れた所作に、強豪校のプライドを垣間見た。野呂前監督は今もグラウンドに姿を見せ、指導者、選手とコミュニケーションを取っているという。ありがたい存在だ。ベテラン指揮官から41歳・天野監督へのバトンは、最高の形でつながれている。

文=岡本朋祐
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