今春、初のベンチ入り

早大・清宮が学生ラストシーズンへの思いを語った[写真=BBM]
東京六大学リーグ戦は9月13日、神宮球場で開幕する。早大は部史上2度目となる4連覇をかけた秋となるが、並々ならぬ決意を固めている右打者がいる。
外野手の
清宮福太郎(4年・早実)だ。
日本ハム・
清宮幸太郎の弟。幼少時代から強打者として注目を集め、兄に続いて主将を務めた早実では高校通算20本塁打を放った。
「同じスポーツをやっている以上、常に兄と比較されてきましたが、自分のことを知っていただく機会として、とらえていました。今は日々、刺激を受けています。兄の存在で、人にはできない経験ができ、感謝しています」
父・克幸さん(日本ラグビー協会副会長)の教えも、アスリートとしての支えである。
「失敗したことを反省することは大事ですが、なぜ、できなかったのかと後悔するのは意味がない。終わったことは、振り返らない」
ラガーマンのように、転んでも立ち上がり、前へ前へと進むのが人生のポリシーである。現在の登録は182センチ95キロ。小さい頃から頭一つ抜けていた。恵まれた体格であり、ラグビーを志したことがなかったのか。
「まったくないです。父がラグビーの監督として、指揮している姿を見てきました。そのレベルの高さを目の当たりにしてきましたから、途中からラグビーをやるなんておこがましい。早実で主将もやらせていただき、早稲田大学で野球をやろうと思っていました」
3年間、地道に努力を続け今春、初めてベンチ入り。兄が日本ハムで着ける同じ背番号『21』が与えられた。
「小宮山(
小宮山悟)監督の配慮です。モチベーションが高まりますし、やりがいも出る。ありがたいです」
卒業後は一般就職

新潟・南魚沼のベーマガスタジアムで行われた8月の全早稲田戦では代打で出場した[写真=矢野寿明]
この春はメンバーとしてリーグ3連覇を経験した。清宮自身は代打2打席で安打を放つことができなかったが、いずれも相手の失策を誘い、出塁している。「グラウンドで味わえたのは、感慨深いものがあった」と、チームとしての勝利を素直に喜んだ。
持ち味である打撃に苦しんだ時期もあったが、
金森栄治助監督から「詰まるのは負けではない」と、付きっ切りで指導を受け、打席での迷いがなくなった。この秋でユニフォームを脱ぐと決めたのは、昨年11月だという。
「入部したころはレギュラーを張って、バリバリ主力としてチームに貢献するつもりでしたが……。進路を決めないといけない昨秋の段階で、先発で出場することができなかったので、一区切りにすることを決めました」
大学卒業後は一般就職する。
「新しい価値観を生み出す仕事。人に影響を与えられるような社会人になりたいです」
集大成の秋。外野手の定位置奪取のため、この夏場は誰よりもバットを振った。開幕を前に状態は上がっており、出場機会をうかがう。下積み生活が長かっただけに、サポートメンバーへの感謝を忘れない。
「WASEDAのユニフォームが着られない4年生のためにも、リーグ優勝で終われれば、最高の恩返しになる。この4年生と野球ができる時間もわずかです。同級生全員で、笑って終わりたい。早稲田で野球をやれて良かったと思えるようなシーズンにしたい」
清宮にはスポーツ選手としての基本精神である「One for All All for One」が擦り込まれている。試合に挑むまではチームの和を重んじ、グラウンドでは個として戦う。一人のプレーヤーとして果たしたい目標がある。
「まずはヒットを打ちたい。好機で回れば、タイムリーを打ちたい。形は何でもいいです」
兄は幸太郎、弟は福太郎。
「名前は好きです。覚えてもらいやすいので、両親には感謝しています」
8月、南魚沼キャンプで行われた「全早稲田戦」で、スタンドには父と母の姿があった。野球選手としてこの秋、神宮で燃え尽きる。
文=岡本朋祐