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【大学野球】「プロに入ることで満足してはいけない」 “今春三冠王”立大・山形球道の大きな野望

 

ターニングポイントは3年秋


右足を上げる打撃が特長。実戦においては、これ以上に高く上げる。豪快な打撃を前面に出しながらも、バットコントロールが秀逸である[写真=BBM]


 東京六大学リーグ戦は9月13日に開幕した。立大は第2週の法大戦から登場。就任2年目の木村泰雄監督は母校を率いた3シーズンで、昨春から今春まで5位(勝ち点1)、4位(勝ち点2)、3位(勝ち点3)と着実にステップアップ。今秋は2017年春以来、14度目のリーグ制覇を虎視眈々と狙っている。木村監督が天皇杯奪還へのキーマンに挙げる一人が山形球道(4年・興南高)だ。

 この半年で、取り巻く環境が激変した。3年秋までは規定打席に到達したことのなかったが、今春は打率.444、5本塁打、17打点で戦後18人目の三冠王に輝いた。7月には侍ジャパン大学代表として、日米大学選手権優勝に貢献。最終学年を迎えるまで、卒業後は社会人野球でプレーするつもりだったが、進路の方針を転換。「挑戦する価値のあるもの」と、9月9日にプロ志望届を提出した。

 常に前を見てきた。山形にはポリシーがある。

「普通の人生を歩みたくない。挑戦し尽くしたい。やりたいことをやりたい。チャレンジしてきてきたからこそ、いまがあると思っています」

 東京都出身も高校は興南高(沖縄)へ進学。同校の我喜屋優監督の指導力に惹かれ、自らの意志で志望し、沖縄で充実の3年間を過ごした。甲子園の土を踏むことはできなかったが、勉強にも力を入れ、指定校推薦で父が4年間を過ごした立大に入学している。

 ターニングポイントは3年秋に訪れた。練習で試行錯誤していると、右足を大きく上げる打撃フォームがはまった。

「最も打球が飛び、バットが強く振れる。1学年上の柴田恭佑さん(西部ガス)とパートナーを組んでいたんですが、その助言がきっかけです」

 なぜ、右足を上げるのか。

「勢いではなく、タイミングを取る一つの方法です」

 昨秋の法大1回戦で放ったリーグ戦初本塁打。相手エース・篠木健太郎(現DeNA)の甘く入った内角真っすぐをライトスタンドへ運んだ。「高校時代から知っている投手から打てたのは手応えを得ました」。東大2回戦でも第2号を放ち、最終学年につなげた。そして、約1カ月に及ぶ鹿児島、宮崎での春季キャンプを通じて、自身の打撃フォームを確立した。

プロ相手にも出した成果


大学4年間を過ごした智徳寮の玄関前にて。父も過ごした場所で、心技体を磨いてきた[写真=BBM]


「自信」が、さらに飛躍した打席があった。今春の早大3回戦で伊藤樹(4年・仙台育英高)から右越えの本塁打を放った。「樹は六大学で一番良い投手。あの打席で自分の打撃に確信を持てるようになりました」。伊藤樹との対戦では151キロの内角真っすぐを左前打。あるNPBスカウトは「あの厳しいコースを逆方向に飛ばすのは、相当な技術が必要」と絶賛している。また、8月の楽天との交流戦では左腕・早川隆久の外角真っすぐを左前打。一軍で活躍するプロ相手にも、成果を出した。

 この夏場も、左右に巧みに打ち分けるバットコントロールに磨きをかけてきた。「三振をしない自信がある」。豪打だけではない、巧さも持ち合わせるのが、山形の魅力である。バットはMLBのアクーニャ・ジュニアのモデルを軸に太めのデザインを好む。「こん棒みたい、と言われるんですが、硬くて、振り抜きやすいんです」。870グラムのメープル素材を愛用している。

 向上心が旺盛。入学以来、施設で打撃の動作分析を行い、改善ドリルで何がベストであるかを探求してきた。体づくりにも熱心であり、ウエートトレーニングで体を大きくしながらも「筋肥大は避け、キレを出して、動きやすさをキープする」と考えてきた。除脂肪体重は1年時に58キロだったが、現在は67キロ(172センチ84キロ)。競技パフォーマンスの維持・向上に不可欠な要素を磨いてきた。

 打球速度の自己最高は172キロ。昨年までは136キロだったアベレージは、今春は145キロと飛躍的に数値を上げている。

 好きな選手はレッドソックス・吉田正尚と、興南高の先輩・宮城大弥である。

「吉田さんは打撃の参考にさせていただいています。宮城さんはプロの世界で身長が関係ないことを証明し、勇気をもらっています」

 さらなる大きな野望がある。

「プロに入ることで満足してはいけないと思っています。1年目から新人王を獲得するぐらいの思いで、今から取り組んでいかないと通用しないです。打って、打って、打ちまくる。長い目で見れば、1500安打は打ちたいです。息の長い選手を目指します」

 進路を自らのバットで切り拓くためにも、まずは、立大でやるべきことがある。今夏、侍ジャパンでプレーし「自分の中で、当たり前のレベルが上がった」と明かす。同じ左打者でドラフト上位候補に挙がる明大・小島大河(4年・東海大相模高)をライバル視する。

「もう一度、タイトルを狙いにいく。2季連続で首位打者を取りたいです。打率.350、3本塁打が六大学における好選手の基準だと思っているので、まずは、そこを超えていきたい。チームとしては、完全優勝が目標です」

 右足を大きく上げる山形の豪快なフルスイングがこの秋も、神宮の杜を席巻する。

文=岡本朋祐
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