力強さが増した打球

巨人育成2年目の宇都宮。今年はフレッシュオールスターにも出場した
巨人が9月16日のイースタン・リーグの
西武戦(CAR3219)で6対3と快勝し、2年ぶり29度目のリーグ優勝を決めた。ファームは若手の育成に主眼が置かれるが、選手個々の野球人生を考えると優勝を経験することは大きな財産になる。
1人でも多くの若手の台頭が待ち望まれる中、楽しみな選手がいる。育成2年目の
宇都宮葵星だ。名前の「きさら」の愛称で親しまれるスピードスターは、俊足を武器に安打を積み重ねている。今年はイースタンで79試合出場し、打率.295、19盗塁をマーク。故障で出場辞退した
石塚裕惺の代役としてフレッシュオールスターにも出場した。ミート能力が上がると共に、打球に力強さが増している。7月8日の西武戦(CAR3219)では、3回に
宮澤太成の149キロ直球を右翼席に運ぶ初アーチ。他の打席でも右翼線二塁打、右前打を放って初の猛打賞をマークした。
独立リーグから巨人へ
松山工高を卒業後、父の宇都宮勝平さんが投手としてプレーしていた四国アイランドリーグplus・愛媛に入団。遊撃の定位置をつかみ、俊足を武器に43試合出場で打率.256、14打点、2盗塁をマークした。武器のスピードにこだわり、凡打の打席も無駄にしない。愛媛の
伊藤隼太コーチ(元
阪神)から「フライが上がったらセカンドまで思いっきり走れ!」と言われ、ダイヤモンドを駆け抜け続けていた。
「でも、フライ上げたら上げたで怒られていました。監督(愛媛・
弓岡敬二郎監督/阪急・
オリックス)に」と笑ったが、ひたむきな姿勢をプロのスカウトは見ていた。みやざきフェ
ニックス・リーグでも巧打を連発したことで評価を高め、巨人に育成3位指名で入団。父が果たせなかったNPB入団の夢を叶えたが、「(NPBに)入るだけでは、まだ(父親を)抜いてないと思うんですよ。ちゃんと一軍に上がって、グラウンドに足を踏み入れて、初めてプロ野球選手になったっていうか。そういう感じなんで」と語っていた。
育成からはい上がった周東

今年も一番として打線をけん引している周東
宇都宮が目標に掲げる選手に1人が、
周東佑京(
ソフトバンク)だ。スピードを武器に育成入団から球界を代表するリードオフマンに上り詰めた。盗塁王を3度獲得し、侍ジャパンの常連に。語り継がれる好走塁が2023年のWBCだ。準決勝・メキシコ戦で1点差を追いかける9回無死一、二塁の好機で、一塁走者・
吉田正尚(レッドソックス)の代走で出場すると、
村上宗隆(
ヤクルト)が打った左中間への打球に迷わずスタートを切り、二塁走者・
大谷翔平(ドジャース)を追い越す勢いで一塁から本塁生還。逆転サヨナラ勝ちを飾り、決勝進出に大きく貢献した。
周東はプロ2年目の開幕前に支配下昇格したが、決して順風満帆だったわけではない。新人の18年にウエスタン・リーグでリーグトップの27盗塁をマーク。フレッシュオールスターでも優秀選手に選ばれる活躍を見せたが、シーズン中の支配下昇格は叶わなかった。週刊ベースボールのインタビューで当時の心境を振り返っている。
「すぐには気持ちの切り替えはできなかったですね。『この半年、何だったんだろう』と思って。やる気が出なかったです。ファームで試合に出る意味も分からなくなりました」
目標を見失いかけたが、「先輩方やファームの首脳陣の方と話をして、少ししてからU-23W杯(第2回 WBSC U-23ワールドカップ)の話も来ました。そこからですね。特に、育成出身の先輩方の話で『オフシーズンの昇格もあるぞ』と。年末に(支配下に)なれるチャンスがあるんだったら、そこを目指そうと思いました」と、シーズンオフにU-23W杯、プエルトリコで行われたウインター・リーグに参加して野球漬けの日々を送ることで、新たな気づきがあった。
「海外の野球は日本ほど細かくないと思いましたね。また、ウインター・リーグに行ったときは来年の所属チームが決まってない選手も結構いたので、ハングリーさをすごく感じました。自分も支配下になるために、さらに必死に、泥臭くいこうと思いました」
宇都宮はプロ2年間で支配下昇格は勝ち取れなかったが、間違いなく成長曲線を描いている。父親を超えて、球界を代表するスピードスターに。サクセスストーリーを実現させる。
写真=BBM