なかなかつかない白星

1年目の今季、勝利には恵まれなかったが好投を続けた金丸
好投してもなかなか白星がつかない。
中日のドラフト1位左腕・金丸夢斗だ。
9月17日の
DeNA戦(バンテリン)では7回4安打1失点。相手エース・
東克樹と一歩も譲らない投手戦を繰り広げたが、両チーム無得点で迎えた7回にジェイソン・ボスラーの失策をきっかけに一死三塁のピンチを招くと、東にスクイズを決められて先制点を献上。決勝点となり6敗目を喫した。
14試合登板で2勝6敗、防御率2.71。クォリティー・スタート(先発投手が6イニング以上投げ、自責点3以内)率は78.6%で
高橋宏斗、
大野雄大、
松葉貴大を上回るチームトップの数値だが、白星に恵まれない。象徴的な試合が7月8日の
巨人戦(山形)だった。7回まで5安打2失点と力投すると、同点の8回に
上林誠知の勝ち越しアーチで勝利投手の権利を手にしたが、9回に
清水達也が痛打を浴びて逆転サヨナラ負け。プロ初勝利が土壇場で消えた。
目を見張る修正能力
昨秋のドラフト1位で4球団が競合。
井上一樹監督は「特別なピッチャーになってほしいと思っている。自分がドラフトで指名して、クジを引いたというのもある。とにかくスケールの大きなピッチャーになってもらいたいね」と期待を込めていたが、投球内容を見れば、並の新人ではないことが分かる。150キロ前後のキレのある直球を内外角に投げ分け、スライダーやスプリットで仕留める。打者のタイミングを外すカーブ、チェンジアップも有効球になり、試合を作る能力が高い。
目を見張るのは修正能力だ。6月5日の
ソフトバンク戦(みずほPayPay)で初回に4失点を喫すると、「何かおかしい」と異変を察知。分析部門と話し合い、動画を何度も確認して癖を見つけた。次回登板となった6月13日の
西武戦(ベルーナ)で自己最多の110球を投げ、7回途中1失点の粘投。「癖を利用するというか、癖ならこの球種ですよ、というところで別の球種を投げました。いきなり完璧に修正するのも難しいところもあるので、対策のひとつとしてやりました」。癖を利用して相手を手玉に取る。新人離れした投球術ですぐに立て直した。
中日は高橋宏がメジャーからの注目度が高いが、米国球団のスカウトは「金丸はいい投手ですよ。メジャーは勝ち星を重視していません。防御率、イニング数、QS率、WHIP(1イニングで走者を出した回数を表す指標)などの指標が重視される中で、金丸は先発投手として高い数値を記録している。球界を代表する左腕になることは間違いないでしょう」と絶賛する。
4年目に初の2ケタ勝利の左腕

4年目の今季、隅田は初の2ケタ勝利に到達した
新人時代に白星に恵まれなかったが、その後に大きく飛躍した投手が
隅田知一郎(西武)だ。金丸とはドラフト1位で4球団が競合した大卒の左腕という共通点を持つ。即戦力として期待された隅田は新人の2022年に1勝10敗、防御率3.75。投球内容は決して悪くなかったが打線の援護に恵まれず、パ・リーグの新人でワーストの10連敗を喫した。試練を糧にして、ここからはい上がる。翌22年は9勝10敗、防御率3.44。昨年は179回1/3を投げて自身初の規定投球回をクリアし、9勝10敗、防御率2.76と安定感がグッと増した。プロ4年目の今年は初の2ケタ勝利をマーク。防御率2.49、QS率77.3%と球界を代表する左腕に挙げられる投手になった。
隅田は西武の球団オフィシャルブック(ベースボール・マガジン社)で、プロ1年目の経験について以下のように語っていた。
「アマチュア時代は強いリーグじゃなかったので、1試合で打たれても(安打数が)6、7本で『ああ、打たれているなあ』という感覚でした。投げる試合は4安打で10奪三振という形が多かった。だからプロに入って投げていて、相当打たれているなと。感覚のギャップはありましたね。今まで経験したことのないゲームメーク、ランクが2つも3つも上がったゲームをしないと抑えきれない。すべての選手の足が速かったり、『このボールは絶対振らない』と決めているなとか。追い込んでも決め球を全然振ってくれない。データを含めてやりづらかったですね。難しいなと」
一流になる投手は俯瞰した視点で分析する能力が高い。金丸もその資質を備えている。今年の最終登板は28日の
阪神戦(甲子園)。意外なことにプロ入りしてまだ無失点の投球がない。良いイメージで来季につなげるためにも、アマチュア時代からの特別な聖地で快投を見せたい。
写真=BBM