守りからリズムをつくる伝統

法政二高の主将・平松は「二番・右翼」。バットを短く持ち、小技が得意だ。つなぎ役に徹し、野球をよく知っている[写真=BBM]
【9月27日】
秋季神奈川県大会準々決勝
法政二高8-4橘高
法政二高は5回終了時で、2対4とリードを許していた。試合前半を終え、10分間のグラウンド整備とクーリングタイム。主将・平松迅(2年)は三塁ベンチに選手たちを集めた。
「硬さが出ている。焦ってはいけない。もう1回、リセットしていこう!!」
4、5回に計4失点していたエース右腕・松田早太(2年)は落ち着きを取り戻し、6回表の橘高の攻撃を三者凡退に抑えた。バッテリーを中心と、守りからリズムをつくるのが法政二高の伝統である。
6回裏、法政二高の打順の巡り合わせが良かった。先頭打者の一番・當房潤也(2年)が左中間二塁打で出塁すると、二番・平松は犠打が目的も、自らの出塁も狙ったセーフティーバントが内野安打となった。平松はすかさず二盗を決め、無死二、三塁から大江俊太朗(1年)の中犠飛で1点を返す。続く四番・榑松正悟(2年)の右二塁打で追いつき、五番・柴田修伍(2年)の左前適時打で勝ち越した。7、8回裏にも得点を重ね、エース・松田は完全に立ち直り、6回以降は1安打に抑えた。法政二高は8対4で勝利し、25年ぶりの準決勝進出を決めている。

法政二高の先発・松田は4失点完投した[写真=BBM]
10月4日、立花学園高との準決勝で勝利すれば、1992年秋以来の関東大会出場が決まる。
33年ぶりの偉業まで「あと1勝」。主将・平松はこう受け止めている。
「『何年ぶり』とかはありますけど、自分たちの代で新しいチームをつくり上げていくことを意識しています。この秋のチーム目標は、この神奈川県大会で決勝に進み、関東大会に出場して、来春のセンバツに出ることです」
主将・平松は、一つの「革新」に着手した。今秋の新チーム結成以降、原則、丸刈りだった頭髪を自主性に任せたのである。
「これまでは強制だったのですが、個人の意思を尊重しよう、と、話し合いの中で、進めました。『形』から入るわけではありませんが『新しいチームをつくる』上での、一つのきっかけになりました。絹田(史郎)監督は、自分たちの意見を受け入れてくれました」
準決勝にすべてを集中

母校・法政二高を指揮する絹田監督は伝統の「守り勝つ野球」に手応えを得ている[写真=BBM]
法政二高は今夏の神奈川大会で、11年ぶりの5回戦に進出と、古豪復活への足がかりを記した。「この夏は僅差の試合を勝ち上がったのですが、3年生が残してくれた財産。積極的な走塁を目指し、今日はノーエラーで(二塁手の)榑松が守りの中心でまとめてくれている。まとまりと、徹底力のあるチームです」。今夏の16強進出の原動力の一人となった松田は最上級生として、エースの自覚が増しており、絹田監督も確かな手応えを得ている。
法政二高は1960年夏、61年春の甲子園で優勝を遂げ、過去に春2回、夏9回の出場がある。すべて昭和時代の実績で春は84年、夏は88年を最後に全国舞台から遠ざかる。平成時代は、聖地の土を踏むことができなかった。
「ここ最近、低迷しているので、全力で、応援していただいている方の期待にこたえたい」
絹田監督は1982年夏の甲子園を、右翼手として経験している。「柴田(
柴田勲、元
巨人)さんらが夏春連覇を遂げ、3連覇を狙った61年夏(準決勝敗退)以来、21年ぶりの出場だったんですが、あの光景は、いまも忘れません。人生のプラスになっています。いまの生徒にも、あの景色を見てもらいたい」。もちろん、まだ、先を見ることはできない。10月4日、1週間後の準決勝にすべてを集中する。
文=岡本朋祐