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【高校野球】劇的なサヨナラ勝利の立花学園 勝って学ぶことができる教訓が詰まったゲーム

 

エースはひざまずいて嗚咽


立花学園高は8回表に6点リードを逆転されたが、2点を追う9回裏に敵的なサヨナラ勝ちを収めた[写真=BBM]


【9月27日】
秋季神奈川県大会準々決勝
立花学園高11x-10桐光学園高

 勝って、大号泣である。

 立花学園高のエース右腕・根本奨大(2年)は桐光学園高との準々決勝で、141球を一人で投げ切った。9回表を無失点に抑えると、一塁ベンチへ戻る際は、肩で息をしていた。体力の限界は近かったはずだが、あの状況で、マウンドを譲るわけにはいかなかった。

 あわや7回7点差以上で成立する、コールドペースだった。立花学園高は7回裏、押し出し四球などで3点を追加し8対2とした。なおも、二死一、二塁、フルカウントまで追い詰めたが、左飛に倒れた。押せ押せムードから一転、立花学園高サイドとしては嫌なムードが流れた。根本は6回まで3安打2失点と強打・桐光打線を封じていたが、微妙なナインの空気感が伝染してしまった。野球は怖い。

「どこかで気の緩みがあって……」(根本)

 一死後に死球を与えると、リズムを崩した。6連打で1点差とされると、二死二、三塁から痛恨の逆転3ランを浴びた。桐光学園高は打者11人の猛攻、一挙8得点で、10対8と一気に試合を引っ繰り返したのである。意気消沈したナインを一塁ベンチ前で出迎えた志賀正啓監督は、諭すようにこう言った。

「自分たちは、変わらない。自分たちのパフォーマンスだけ下げないことを考えればいい。相手は見なくていい。あと6アウトあるんだから、そこで3点を取ろう。同じようにやっていれば、流れは来るから」

 試合序盤から積極的なスイングで、主導権を握っていた。しかし、この劣勢の展開で、ショックから切り替えるのは難しい。立花学園高は8回裏の攻撃を、簡単に3人で終えた。桐光学園高からすれば、早く試合を終わらせたい。そこに、もう一つの落とし穴があった。

 冒頭の9回表。根本は続投だった。志賀監督は「ストライクが入っていたので」と、8回まで1死球の背番号1を交代させる選択肢はなかった。根本は指揮官の期待に応えた。

「試合はまだ、終わっていない。味方の逆転を信じて投げました」

エース・根本は背番号1の責任感から、最後までマウンドを守り抜いた[写真=BBM]


 追加点を与えず、何とか踏みとどまった。9回裏、立花学園高は先頭打者が二塁打で出塁するも、後続が倒れ、二死一、二塁と追い込まれた。だが、粘る。ここで一番・菅沼勇希(2年)が右翼線にしぶとく落とすと(二塁打)、二塁走者がかえり1点差。二死二、三塁から途中出場の八代晄太(2年)がボールに食らいつく左前打。2人の走者が本塁を踏み締め、劇的なサヨナラ勝ちで幕切れとなった。三塁走者として10対10、同点のホームを踏んだ根本はひざまずいて嗚咽を漏らした。

「正直、信じられなかった。ありがとう、と。仲間が返してくれたので感謝しかありません」

 11対10。2時間56分の熱戦を制した立花学園高は、法政二高との準決勝進出を決めた。「あと1勝」で関東大会出場の権利を手にすることができる。根本はようやく、冷静さを取り戻した。

「目標は神奈川の頂点に立つこと。10月4日(の準決勝)に向けて準備していきたい」

 勝って学ぶことができる、たくさんの教訓が詰まったゲームだった。

文=岡本朋祐
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