史上4人目の記録

中日に移籍して、細川のスラッガーとしての能力が開花した
大きな価値のある一撃だ。中日の
細川成也が9月30日の
巨人戦(東京ドーム)で、3点差を追いかける3回二死一塁で
田中将大の直球をはじき返し、右中間へ20号2ランを放った。
中日が1997年にナゴヤドーム(現バンテリンドームナゴヤ)を本拠地にして以降、3年連続で20本塁打以上を放った選手は
レオ・ゴメス、
福留孝介、
タイロン・ウッズの3選手のみ。ナゴヤ球場時代を含めて移籍1年目から達成した中日の日本人選手は、6年連続20本塁打を記録した
落合博満以来33年ぶりだった。他球団の打撃コーチは「細川はもっと評価されるべき選手だと思います。本拠地が広いバンテリンドームで20本以上のアーチを打ち続けることはなかなかできません。飛距離で言えば球界屈指でしょう。ミスショットが減り、年々レベルアップしている」と高く評価する。
今年は故障で苦しんだ時期があっただけに、20本塁打をクリアしたことは大きな意義がある。5月5日の
DeNA戦(バンテリン)の走塁中に負傷交代。右ハムストリングスのコンディショニング不良で1カ月以上戦列離脱した。下半身の故障は打撃に大きく影響する。6月終了時点では3本塁打だったが、7月に6本塁打、8月に4本塁打、9月に7本塁打と量産体制に。相手バッテリーのマークが厳しくなる中、ボール球をきっちり見逃す場面が増えた。108試合出場で61四球は自己最多。ストライクゾーンに来た球をきっちり捉えていた。
現役ドラフトの価値を高めた活躍
初導入された現役ドラフトで中日に移籍したのが2022年オフ。細川の活躍が、この移籍システムの価値を高めたと言っていいだろう。DeNAでは一軍に定着できず伸び悩んでいたが、新天地で恩師・
和田一浩打撃コーチの出会いもあり、移籍1年目の23年から定位置を獲得して140試合出場で打率.253、24本塁打、78打点をマーク。野球評論家の
堀内恒夫氏は細川の活躍ぶりを、週刊ベースボールのコラムで高く評価していた。
「昨季は一軍で18試合に出場、19打数1安打、打率.053と低迷していた。プロ6年間で鳴かず飛ばずだった男が、今季は新天地でレギュラーの座を獲得。三番に抜てきされると、打率3割を超える大活躍を見せている。これもまた驚きだね。新天地で一夜明けたら、主役の座が転がり込んできて、サクセス・ストーリーの幕が切って落とされたというわけだよ。旧所属チームでは何らかの事情で伸び悩んでいた人材も、新天地で活躍の場を与えられれば飛躍できる可能性がある。『このチームの首脳陣では認めてくれないから使ってもらえない」と腐り切っている選手は
大勢いる。「使ってくれないのなら他チームへトレードしてください!』と選手が志願しても、『トレードした先で、大活躍されては困る』という旧球団の意思が働いたとしたら、その選手は『飼い殺し!』の憂き目にあうわけだよ。だから、『現役ドラフトのような制度は、これからも大いに活用されるべきだと、俺は思うね」
タイトル獲得の能力は十分
翌24年は全143試合出場で打率.292、23本塁打、67打点。リーグ4位の打率と確実性が上がり、今年3月に開催された強化試合・オランダ戦で侍ジャパンに初選出された。
今年は
佐藤輝明(
阪神)が自己最多の40本塁打をマークし、自身初となる本塁打王のタイトルを獲得。
村上宗隆(
ヤクルト)、
岡本和真(巨人)は故障で長期離脱したことが響き、タイトル争いに絡めなかった。両主砲は今オフにポスティングシステムでメジャー挑戦の可能性があるが、その場合は佐藤輝の最大のライバルとなるのが細川だろう。能力の高さを考えれば、30本塁打を達成する力を持っている。
個人としては夏場以降に巻き返しを果たしたシーズンだったが、チームは借金15で4位と5年連続Bクラスに低迷したため、満足感はないだろう。低迷期から脱出しなければ心から喜べない。中日のスラッガーから、球界を代表するスラッガーへ。つかの間の休息を経て、来季に向けてレベルアップを図る。
写真=BBM