現役ドラフトで巨人へ

巨人に移籍した今季、中継ぎとして才能が開花した田中瑛
今季リーグ連覇を逃した巨人だが、救援陣は奮闘した。
中日から新加入の
R.マルティネスは58試合登板で3勝2敗46セーブ3ホールド、防御率1.11で、
松山晋也(中日)と共に2年連続3度目の最多セーブを受賞。抑えからセットアッパーに配置転換された
大勢も62試合登板で8勝4敗1セーブ46ホールド、防御率2.11で最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得した。
大勢、R.マルティネスは昨年までの実績を考えれば、「勝利の方程式」として稼働してもらわなければ困る。その中で、期待以上の活躍を見せたのが昨オフに
日本ハムから現役ドラフトで移籍した
田中瑛斗だ。自己最多の62試合登板で1勝3敗36ホールド、防御率2.13。投球の半分以上を占めるシュートで右打者の内角をえぐる投球スタイルを確立し、「チーム内のMVP」と絶賛される活躍を見せた。
大分・柳ヶ浦高から2017年秋のドラフトで日本ハムから3位指名を受け入団。多彩な変化球と150キロを超えるストレートで将来を嘱望されたが、一軍に定着できなかった。在籍7年間で計10試合登板して1勝4敗、防御率6.00。昨年12月に現役ドラフトで巨人に移籍が決まると、「移籍することに関してはポジティブだったので、『ヨシ!』という気持ちだったんですけど。『ジャイアンツか……いい投手多いよな』って。12球団で一番防御率が良かったのは知っていたんで、『大丈夫かな』ってちょっと不安はあった」と明かした上で、「ファイターズに不満があるとかではないけど、自分のことをイチから見てくれるチームに興味があった。もし、そういうチャンスがあるんだったら、新しい地で頑張りたいという気持ちはあった」と野球人生の転機と捉えていた。
シュートを武器にして
環境が変われば、首脳陣の見方が変わる。
阿部慎之助監督が高く評価したのは、150キロ近い球速で右打者の懐を突くシュートだった。得意な球ではあったが、スイーパーのほうが自信のある球種だったため、「曲がり球には自信があったので『そこ言われるんだ』みたいな。『はい』って言ったものの、本当にできるのかなって不安はあった」と戸惑いを感じた。
半信半疑だったが、シュートを投球の軸にして投げ込むと打者は明らかに嫌がっていた。空振りや内野ゴロに仕留めることで自信を深めていく。象徴的なマウンドが、5月22日の
阪神戦(甲子園)だ。同点の8回無死満塁のピンチでマウンドに上がると、「(甲子園の阪神への声援が)むちゃくちゃうるさいなと思って、黙らせてやろうと思って投げました」と強気の姿勢で対峙した。三番・
森下翔太に6球すべて内角をえぐるシュートを投げ込み、三ゴロ併殺打に。
佐藤輝明を敬遠後、五番・
大山悠輔もシュート攻めで内角を意識させると、最後は外角に逃げるスライダーで空振り三振。絶体絶命のピンチで勝ち越しを許さず、延長戦の末に白星をつかんだ。
田中将の大記録にも貢献
田中将大の日米通算200勝が掛かった9月30日の中日戦(東京ドーム)も、きっちり仕事を遂行した。1点リードの7回二死二塁でマウンドに上がると、代打・
鵜飼航丞にシュートを3球続けた後、スライダーで空振り三振に仕留めてガッツポーズ。ピンチの場面で臆せず腕を触れる強靭なメンタリティーは大きな魅力だ。田中将の日米通算200勝、R.マルティネスのタイトルが掛かった試合で、完ぺきな火消しをした。
新天地で大きくステップアップしたが、戦いはまだ続く。CSファーストステージで2位・
DeNAと対戦する。リーグ制覇した阪神への挑戦権を勝ち取るためにも、負けられない。田中瑛は試合の勝負所でマウンドに上がることになるだろう。DeNAは故障から復帰予定の
牧秀悟、
宮崎敏郎がキーマンになるが、今年は2人の強打者との対戦で無安打に抑えている。短期決戦も、人生を変えた自慢のシュートを果敢に投げ込む。
写真=BBM