打線に不可欠な存在

力強い打撃が魅力の蝦名
リーグ覇者の
阪神がセ・リーグのファイナルステージで第1戦を2対0と完封勝利を飾った。
DeNAは相手を上回る8安打を打ちながら、決定打が出ない。エース・
東克樹は5回まで無失点と踏ん張っていただけにダメージが残る敗戦だが、気持ちを切り替えるしかない。
阪神はアドバンテージ分の1勝を含めて2勝している。DeNAがひっくり返すためには打線の爆発が不可欠になる。打線の切り込み隊長として期待されるのが、一番の
蝦名達夫だ。CSファーストステージ第1戦では1点リードの3回一死二塁で、
山崎伊織から左前適時打を放って貴重な追加点をたたき出した。第2戦でも延長11回に同点に追いつくと、さらに二死一、三塁の好機で、
田中瑛斗に対してファウルで粘った後に7球目のシュートを左前にはじき返すサヨナラ適時打。CS、日本シリーズを勝ち抜いて日本一に輝いた昨年はCSで6試合3打席、日本シリーズで3試合2打席の出場にとどまったが、この短期決戦では不可欠な存在になっている。
打席で意識していること
今季は115試合出場で打率.284、8本塁打、41打点をマーク。8月中旬から一番打者に定着すると、最終戦まで33試合連続出塁を記録した。8月は月間打率.344、9月は月間打率.330とコンスタントに打ち続け、選球眼の良さも光った。ボール球になる変化球をきっちり見逃し、打撃が崩れない。今季の31四球は
佐野恵太、
筒香嘉智に次ぐチーム3位の数字。規定打席には到達しなかったが、400打席以上立った選手の中で出塁率.355はチームトップの数字だった。蝦名は打席で意識していることについて、以下のように語っていた。
「相手投手に1球でも多く投げさせる気持ちで打席に入っています。後ろにいいバッターがいるので、そこで点を取ってくれると信じています。今は1打席を大切にしていて、それが結果に表れています。長くボールを見られているので、周囲から落ち着きがあるように見られているのかもしれません。相手投手にいいボールを投げられたら仕方ない。そういうマインドでいるので、たまには三振もしますが、そういった時も切り替えられています。去年のCSと日本シリーズはレギュラーとして試合に出ていません。(主力で戦えることに)ワクワクしているなかで、まずはハマスタでCSをやることに向けて戦っていくだけです」
シーズン中にショッキングな出来事
順風満帆なシーズンだったわけではない。5月に6歳上の兄が急逝するショッキングな出来事が起きた。兄にあこがれて野球を始め、背中をずっと追いかけてきただけに精神的なショックは大きい。だが、悲しみの日々も試合はやってくる。5月22日の
中日戦(横浜)。兄を亡くしてから初のスタメン出場で攻守に奮闘した。1点リードの初回二死一、二塁で相手左腕・マラーの直球を左前に運ぶ適時打を放つなど猛打賞。右翼の守備でも好守を連発した。
2回に先頭打者・
カリステの右翼線への飛球を背走しながら捕球すると、そのままフェンスに激突。倒れこんだがボールをつかんだまま離さず、スタンドから拍手が起きた。4回も
田中幹也の右中間に飛んだ打球をダイビングキャッチ。勝利に貢献した試合後のお立ち台では、「先日、兄貴を亡くしてしまって、突然だったので……。チームを離れてしまったんですけど、兄の分もそうですね…。やらなきゃいけないと思っているので。思い切ってやりました」と涙をこらえながら、兄への特別な思いを口にした。
野球に対して真剣
ドラフト6位で入団し、今年がプロ6年目。同学年の
坂本裕哉は「達夫は野球に対してすごく真剣。取り組みの素晴らしい選手で、かわいいやつですよ。野手目線の話を聞いたり、彼はトレーニングが好きなので、一緒にやりながらトレーニングの話をする。(同期入団の)2人(蝦名と
伊勢大夢)が活躍するとうれしいし、自分自身も負けていられないという気持ちになる。チームメートの中でも同学年は特別な存在かなと思います」と語る。
阪神は強敵だが、2年連続日本シリーズに進出するためには乗り越えなければいけない壁だ。蝦名がチャンスメークし、強力打線に火をつける。
写真=BBM