ゲーム前のルーティン

ドラフト上位候補に挙がる左腕・毛利[左]、正捕手・小島[右]が早大1回戦の先勝に貢献し、Vへ王手とした[写真=矢野寿明]
【10月18日】
東京六大学リーグ戦第6週
明大9-2早大(明大1勝)
試合前の打撃練習を控え、明大ナインは三塁ベンチ裏に集合した。ムードメーカーの副将・
瀬千皓(4年・天理高)が音頭を取って『乾杯』を歌った。この秋、シーズンを通じて継続している、ゲーム前のルーティンである。
「英(今井英寿=4年・松商学園高)と考えて、一体感が出て、なおかつ、指導陣も口ずさむことができる曲を考えたんです」
開幕6連勝で迎えた天王山・早大戦。明大に立ちはだかるのは早大のエース・
伊藤樹(4年・仙台育英高)だ。顔も見たくない「天敵」であるはず。伊藤が先発の軸となった24年春以降の結果を見れば、その理由がよく分かる。
▽伊藤樹の対明大成績
【24年春】
明大(1)5-4〇 7回4失点(勝敗なし)
明大(3)5-0〇 11回完封(勝利投手)
【24年秋】
明大(1)3-2〇 8回1失点(勝利投手)
明大(3)2-0〇 8回無失点(勝利投手)
優勝決定戦4-0〇 9回完封(勝利投手)
【25年春】
明大(1)1-0〇 ノーヒットノーラン(勝利投手)
明大(3)8-6〇 1回2/3無失点(完了、勝利投手)
優勝決定戦6-5〇 9回5失点完投(勝利投手)
明大は昨秋、今春と2季連続でV決定戦の末、涙をのんだ。さらに、今春は部史上初となるノーヒットノーランの屈辱まで味わった。
「1回も樹には勝てていない。春も優勝決定戦で負けて、このためにやってきた。強い気持ちでマウンドに立ち、先に点を与えないように粘り強く投げていこうと思っていました」
「気合が良い方向にいった」

明大の先発・毛利は7回2失点に抑えた[写真=矢野寿明]
明大の先発左腕・
毛利海大(4年・福岡大大濠高)は昨秋、今春と優勝決定戦でいずれも先発で伊藤と投げ合い、敗戦投手となっていた。並々ならぬ思いでこの一戦の臨み、7回2失点に抑えた。打線は伊藤から7得点で攻略し、6回途中で降板させた。9対2で快勝。23年春以来のリーグ制覇へ王手をかけた。

明大の四番・小島は4回表、貴重な追加点となる右前適時打を放った[写真=矢野寿明]
ついに、伊藤に黒星をつけたのだ。2打点を挙げた四番・
小島大河(4年・東海大相模高)は「好投手なので、簡単には打てない。気合が良い方向にいきました。積極的にいくのと同時に、ボール球を見極められた」と語った。毛利、小島とも伊藤とは今夏の侍ジャパン大学代表でのチームメート。同じ釜の飯を食べた親しい間柄だけに、喜びも格別だった。
今春から母校を指揮する戸塚俊美監督は「選手が一番、悔しい思いをしてきた。打倒・伊藤君をイメージして練習してきた成果が出た。アナライザーの4年生が良いデータを作ってくれました」と、寝る間を惜しんで資料を作成した石田健太朗(大阪府立三島高)と中薗遼太郎(県立船橋高)を労った。
リーグ4連覇へ黄色信号が灯った早大・
小宮山悟監督は、敗因を明かした。
「この春、明治は相当、悔しい思いをしているでしょうから、それを跳ね返せるか、でした。彼らの圧がものすごかった。力負けです」
明大はあと1勝で「天皇杯奪還」となる。(10月18日時点) 毛利と小島はプロ志望届を提出しており、10月23日にはドラフト会議を控えている。良い形で、運命の日を待ちたいところだ。
「リーグ戦中なので……。今週は一番、大事なカード。自分のピッチングをすれば、評価していただけると思います」(毛利)
「目の前のことを全力でやっていくことが、(ドラフトに)つながっていく。次戦に向けて、しっかり準備していくだけです」(小島)
明大は開幕7連勝。大一番となる早大2回戦前も、縁起の良い、今秋負け知らずのテーマソングでスタートする。そして、試合後は思う存分「乾杯!!」を交わしたいところだ。
文=岡本朋祐