状況判断に長けた選手

一番としてチームの日本シリーズ進出に貢献した
CSファイナルステージで
DeNAに3連勝を飾り、日本シリーズに進出した
阪神。この短期決戦で流れを引き寄せたのは、リードオフマン・
近本光司の足だった。
第1戦は両軍が無得点のまま6回へ。近本が遊撃への内野安打で出塁すると、
中野拓夢が犠打を決めて二塁に進んだ。そして、左腕・
東克樹が
森下翔太に投じた初球で仕掛けた。三塁方向にステップすると、スピードを一瞬緩めた。そして、そこから一気に加速。DeNAバッテリーは対応できず、三盗に成功した。勇気を持った好走塁で甲子園の雰囲気が一気に変わった。阪神ファンのボルテージが一気に上がる中、森下が中前に先制の適時打。近本が本塁生還し、決勝点となった。
他球団のコーチは「NPBで最高のリードオフマンでしょう。打つ、走る、守るとすべての能力が高いことはもちろんですが、近本のすごさは状況判断です。相手の心理を読んで野球ができる。大きなケガがなく、高水準のパフォーマンスを出し続けていますし超一流の選手だと思います」と高い評価を口にする。
リーグ優勝の原動力に
今季は140試合出場で打率.279、3本塁打、34打点。リーグ3位の160安打を放ち、出塁率.348を記録した。6月7日の
オリックス戦(甲子園)で、7回裏二死一、二塁の好機に一塁線を破る2点適時打を放ち、通算1000安打に到達。出場861試合目での到達は
藤村富美男の864試合を抜き、日本人選手の球団史上最速だったが、通過点に過ぎない。「記録っていうのは、やはり更新されるときが名前が挙がる瞬間ですからね。そういった意味では記録っていうのは、どんどん塗り替えられるものなのかなと思っているんですよ」と語っていた。
コンディションが万全と言えず、夏場に打撃の状態が上がらなかった時期があったが、四球を選んで出塁するなどチャンスメークし続け、積極果敢に次の塁を狙う。32盗塁をマークし、4年連続6度目の盗塁王を獲得。「今年は後ろに任せられる人がたくさんいるので、僕はなんとか塁に出ていかにチャンスメークできるかだと思ってきました。その機会をできるだけ多くつくりたいなと思って打席に入っていました」と話していた。
深みのある野球論
近本の野球理論、打撃理論には深みがある。週刊ベースボールのコラムで以下のように語っていた。
「僕の中での今年の現段階での打撃のテーマがあります。それは『タイミング』です。いろいろな指導者が、バッティングを教えるときに『タイミングの取り方』をどうするか、と教えるはずです。まさにそこに今年はそこにフォーカスしようと思っています。例えば、打者は、自分のスイングを求めていきますよね。これって本当に大事なことですが、実際に試合の打席の中で自分のスイングができたと思っても、投手とのタイミングが合っていないと、そもそもバットの芯に当たらないのです。さらに、タイミングが合わずに焦って早くバットを振り出したり、遅れてファウルになったりするということは、自分のスイングができていないわけです。つまり、タイミングがちゃんと合ってないと自分の理想のスイング自体ができていないということです。だからこそ、オープン戦の最後のほうは、対投手に対して『タイミング』しか意識しませんでした」
2023年は日本シリーズMVP
今年は国内FA権を取得。リードオフマンを固定できず、補強ポイントの球団は多い。権利を行使すれば複数球団の争奪戦になることは必至だが、今は
ソフトバンクと対戦する日本シリーズに向け、神経を集中している。
心強いデータがある。オリックスと対戦した2023年の日本シリーズで、第1戦に先発した難敵の
山本由伸(現ドジャース)から2安打3出塁とチャンスを何度も演出し、攻略に貢献。全7試合で打率.483と広角に安打を打ち続け、日本シリーズMVPに輝いた。ソフトバンクも
リバン・モイネロ、
有原航平、
大関友久など好投手がそろうが、近本が打線に火をつけられるか。2年ぶりの日本一へ。攻守のキーマンであることは間違いない。
写真=BBM