プロでも希少の「強打の捕手」

西武からドラフト1位で指名された小島
西武にドラフト1位で指名された明大・小島大河が有終の美を飾った。10月27日に行われた東京六大学リーグ・立大2回戦で、15対0と圧勝。22歳の誕生日を迎えて4安打1打点と大暴れし、守備でも好リードで完封勝利に導いた。チームも1996年秋以来29年ぶりの10戦全勝で完全優勝を果たした。
プロでも希少価値の「強打の捕手」だ。今秋は打率.423をマーク。通算でもリーグ戦打率.349、現役選手最多の54打点をマークした。右足を大きく上げる打撃フォームで力強い打球を広角に飛ばすととも、コンタクト能力が非常に高い。他球団のスカウトは「
森友哉(
オリックス)と重なりますよね。柔らかい打撃でどの球にも対応できる。プロとアマチュアでは投手のレベルや球の質が変わりますが、小島は対応力が速いと思います」と分析する。
野球キャリアは華やかだ。山王中で相模ボーイズに所属し、3年時に二塁手で全国大会に出場。東海大相模高では2年秋から二塁手の定位置をつかんだ。同年冬に捕手に転向し、3年春のセンバツで優勝。高校通算28本塁打をマークした。明大進学後は2年春から正捕手になり、ベストナインを初受賞。3年春に打率.381、16打点をマークし、大学日本代表に初めて名を連ねたハーレム・ベースボールウィーク(オランダ)で打率.462、1本塁打、10打点と初対戦の投手を攻略してMVPを受賞した。4年春は肋骨骨折を乗り越えて、4季連続打率3割をクリア。理想の打者像について聞かれ、「率も残せて長打も打てるバッター。ホームランだけでなく、間を抜ける長打を打って野球を動かせるような選手」と語っている。
首位打者を獲りづらいポジション

捕手ながら三冠王に輝いたこともある野村
捕手で史上初の三冠王を獲得し、NPB通算2位の657本塁打をマークした
野村克也氏は、週刊ベースボールのコラムで「捕手の打撃」について以下のように語っていた。
「ポジション別でいうと、キャッチャーは首位打者の獲りづらいポジションだ。もちろん、私も現役時代はバッターなら誰もが思うように、1試合最低1本はヒットを打とうと考えて、打席に立っていた。しかし、首位打者のタイトルなど獲れるとは思わなかった。過去、キャッチャーの首位打者は一人もいなかったからだ。ましてやホームラン王まで獲ろうとは……。なんといっても、キャッチャーは重労働。私たちの時代、日祝日にはダブルヘッダーが組まれていた。特に真夏のダブルヘッダーはこたえたものだ。しかし、それでもダブルヘッダーの1試合を休もうとは思わなかった。当時、外国人選手からはよく『ムース、休ミナイ、ホワーイ?』と言われた。『お前、そんなに毎試合出て疲れないのか』と言いたかったのだろう。MLBシンシナティ・レッズの名捕手、ジョニー・ベンチですらダブルヘッダーのときは1試合休んだのに、と驚いていた」
「担当記者には、『ノムさん、ファーストに代わったらどうですか?』と言われた。阿部のように、守備の負担を減らせば、もっと打てるんじゃないかというわけだ。確かに、バッティングは難しい。だがキャッチャーは守りにおける、監督の分身。野球という『筋書きのないドラマ)の脚本家である。当時の私は『生涯一捕手』という言葉こそまだ発していなかったが、そうありたいとは願っていた」
即戦力として大きな期待
小島が捕手に転向したのは高2の冬。守備面で課題はあるが、まだまだ伸びしろがある裏返しとも言える。西武は捕手の支配下登録が6人のみで、一軍で本塁打を放った左打者が2人しかいなかった。ドラフト前に小島の1位指名を公言したことからも、評価の高さがうかがえる。単独指名できて大成功だったと言えるだろう。
渡部聖弥、
滝澤夏央、
長谷川信哉と若い力が台頭している中で、小島もプロ1年目から即戦力として大きな期待がかかる。捕手以外にも打撃を生かして指名打者や、他の守備位置で起用される選択肢が考えられる。新人王の有力候補であることは間違いない。
写真=BBM