ドラフトの内幕

ソフトバンク・城島CBOは花巻東高・佐々木監督への指名あいさつ後、報道陣の取材に応じた[写真=田中慎一郎]
10月23日のドラフト会議でソフトバンクから1位指名を受けたスタン
フォード大・
佐々木麟太郎。
DeNAと競合し、交渉権確定のクジを引き当てた
城島健司CBO(チーフベースボールオフィサー)が10月28日、岩手県花巻市内の花巻東高を訪れ、父である佐々木洋監督に指名あいさつした。
「驚かれていました、まさか1位で指名されるとはお父様も麟太郎君も思っていなかったとおっしゃっていました。ただ、ウチは麟太郎君を高く評価しているとお伝えしたかった」
ドラフトの内幕を明かした。
「今回のことはイレギュラーなんですけれども、我々のドラフトのシミュレーションで2位、3位も考えていたんですけど、結果的にはそこには残っていない選手だ、と。ドラフト1位で結果、重なってしまったというのは、僕らの判断は間違っていなかった、と。そして、我々が麟太郎君を評価していたというのは間違いではなかった。クジ引きという、こればかりは運というか縁。彼の交渉権を獲得できたことはすごくうれしいことです。ただ、ドラフト1位で、獲得できないかもしれないリスクを覚悟して指名した。評価していることを(本人に)伝えてほしいと言いました」
プロ側として、強調したいことがあった。
「お父様が心配されていたのは、日本の大学とアメリカの大学を天秤にかけたみたいなことになっているのではないか、と。そうではなく、我々が勝手に指名したことで、そうなったので………。そこだけはお伝えしておきたい点です。初めてのケースなので、皆さん(報道陣関係者)も知らない。世の中も知らない。これを含めて、ややこしいことになっても、ウチは評価しているんだ、ということをわかってほしいです」
なぜ、そこまでこだわったのか。あらためて、佐々木麟太郎の魅力について語った。
「麟太郎君の打撃で十分、ウチのチームを何十年も引っ張ってくれる。我々は王会長がいるチームであり、九州の豪快な野球をテーマに掲げているチームですので、麟太郎君のあの打撃がウチの売りになってくれると思っています。唯一無二というか、彼の打撃を見てから帰ろう、そういうバッターになってくれる。福岡のホークスファンだけでなく、日本のプロ野球全体を盛り上げてくれるバッターになってくれると思います」
技術だけではない、プラス要素もある。
「彼にはまだ、直接会っていないのですが、彼を見てきたスカウトは人間性を評価していまして、野球に取り組む姿勢が素晴らしい。ウチのリーダーになってくれる、核になってくれる選手ではないかと思います。11月にはスタンフォード大で本人にごあいさつする予定です。1位で行ったことが間違いではなかったこと、そこでご縁が生まれたこと、どういう評価であるかを伝えるつもりです。ルールに則って物事を進めます。来年の大学シーズンを見守って、判断を待とうと思います」
人間性も高く評価

花巻東高は菊地雄星、大谷翔平のメジャー・リーガーを輩出。佐々木麟太郎は身近な先輩から影響を受けてきた[写真=田中慎一郎]
ソフトバンクの育成方針にあったプレーヤーであると、城島CBOは断言する。花巻東高では高校通算140本塁打。スタンフォード大でも昨季、7本塁打と持ち味の長打力を見せた。
「やっぱり、野球の花形はホームランですよ。あらためて思いますけど、ウチに縁があれば、王会長の寿命は10年延びると思います。それほど会長の笑顔と、麟太郎君に対する期待。日本では一番ウチが一番輝けて、ウチが一番、力を発揮する球団であると自負しています」
その裏付けをこう語る。
「一芸を伸ばす。ダメなところを上げるのではなくて、良いところを伸ばせばいい。歴代もそういう選手を獲得してきて、立派な戦力としてやってくれた過去がある。今の打撃を極めてくれればいい。人間性も素晴らしいと担当スカウトから聞いています。プロ野球にはクラブハウスリーダー、チームリーダーが必要なんです。いい選手はいますが、リーダーはそんなに出てこない。その資質があると聞いています。私自身も彼に興味を持っている。お父様の教育が根底にあるんでしょうね」
前日の27日、佐々木麟太郎の取材窓口であるマネジメント会社担当者が取材に応じた。スタンフォード大での来シーズンが終わるまで、動きはないという。これまでと同様、文武両道の日々を過ごす。そして、来年7月のMLBドラフトを待つ身だ。ソフトバンク側も長期的スタンスで、その決断を急いでいない。
城島CBOもドラフト当日に明かした方針から変わっていない。あらためて言った。
「彼がどちらかを選ぶかは、彼の意見を尊重したいと思います。ウチを選んでくれたら大活躍をしてほしいですし、アメリカを選んだらもちろん、アメリカで大活躍してもらいたい。個人的な思いですが……。ウチに来てほしいというメッセージは伝えていますけど、あとは彼が選ぶ。見守ってあげたい」
ソフトバンクはあくまでも指名した立場であり、本気度を見せつつも、今後は佐々木のスケジュールを最優先した上で、静観の構えだ。佐々木監督、佐々木本人にも、ホークスサイドの誠心誠意は十分、届いたはずである。