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【高校野球】2010年以来のセンバツ出場「当確」の帝京 「とにかく研究熱心」名門校が復活できた理由

 

名将の後を継いだ金田監督


2021年秋から母校を指揮する帝京高・金田監督は生徒たちの手によって、神宮の杜を舞った[写真=矢野寿明]


【秋季東京大会決勝】11月9日(神宮)
帝京8-4関東第一

 秋季東京都大会で帝京高が16年ぶり10度目の優勝を遂げた。関東第一高との決勝を8対4で勝利。同大会は来春のセンバツ甲子園の重要な資料となっており、2010年以来となる復活出場を「当確」の立場とした。

 帝京高は春14回、夏12回の甲子園出場で春優勝1度、夏優勝2度の実績を誇る。甲子園通算51勝23敗。1972年から2021年夏まで指揮した前田名誉監督の功績でもある。21年秋以降、名将の後を継いだ金田監督は言う。

「前田監督がつくられた帝京高校野球部。私もあこがれて入学してきた一人です。もう1回『強い帝京を』と取り組んできましたが、私以上に選手たちの気持ちが上回った。ようやく一つの壁を打ち破ったという、うれしさがある。この16年、OBたちが頑張ってきた。その積み重ねの上にあるということを忘れてはいけない。卒業生の顔が浮かんできました」

 ゲームセットの瞬間。マウンド付近で歓喜する選手たちを見届けることができないほど、涙があふれた。「長かったな〜。やったぞ! と。私もOBでもありますから、ようやく優勝できたという、率直な思いが出ました」。

 2011年夏を最後に甲子園から遠ざかっていた名門校がなぜ、復活することができたのか。金田監督の恩師の一人でもある根岸雅則副部長(東京都高野連理事長)は明かす。

「就任からこの秋で5年目のチームであり、本人の中でも『勝負の年』と位置づけていたようです。『勝つ』ではなく『自分が勝たせないといけない』と、かなり追い込んでいました。チームが負ければ監督の責任、と常々言っていました。だからこそ、練習は厳しい」

 具体的に優れている点を挙げた。

「とにかく、研究熱心です。分析を重ね、現場に落とし込んでいく。負けから多くを学び、次へと生かしていく学習能力もある。選手の基本である体づくりにも興味を持っており、専門のトレーニングコーチを置くなど、生徒のために常に動いている印象があります」

 金田監督は高校2年夏(02年)に背番号15を着け、甲子園4強を経験。「大甲子園の感動は、忘れません。入場行進したときの足の感触は今も、覚えています」。2年秋以降は主将としてチームを束ね、捕手のほか、投手などさまざまなポジションをこなした。筑波大では投手。大学では保健体育科(中学・高校)の教職課程を履修した。卒業後は一般企業に就職も「野球から離れて、自分のやりたいことは何かと考えるようになりました」と2年後、脱サラして教員の道を歩んだ。駒大高での1年間のコーチを経て11年、帝京高に赴任。前田名誉監督からの要請だった。苦節5年、ようやく恩師に恩返しすることができた。

頼もしい指揮官に成長


集合写真に収まるメンバー。練習から厳しく取り組んできた成果が出た[写真=矢野寿明]


 リベンジの機会でもあった。昨夏の東東京大会決勝では関東第一高に力負け(5対8)。金田監督は「監督の差を痛感した」と振り返る。敵将はキャリア十分の米澤貴光監督であり「落ち着いている。勝ち方を知っている。私はまだ力が足りない。来年夏はまた、甲子園をかけて対戦するかと思いますので、チャレンジできるように万全の準備を整えたい」と、先輩指揮官に対し、あくまでも低姿勢だった。

 躍進の秘密。昨今、住環境が充実している点も挙がる。19年、学校から自転車で約7分にある学生寮が完成。かつてはほぼ全部員が自宅通いで、一部の下宿生がいた時代があった。現在は遠方の選手も受け入れる態勢が整い、今秋のレギュラーでは青森、愛知、兵庫出身の選手が高い志を持って帝京高の門をたたいてきた。「全国から生徒が入学してくる背景はやはり、前田さんの力が大きい」(根岸副部長)。帝京ブランドは、中学生にとっても特別である。学生寮には専門の寮監がいるが、根岸副部長、金田監督、細田悠貴コーチ、佐藤秀栄コーチが交代で寝泊まりし、生徒の面倒を見る。細心のケアが行き届いているのだ。

「表情も厳しく、良い顔になっていますね」

 根岸理事長は神宮球場内の競技事務所で仕事をしながら、モニタに映った金田監督を見てニンマリ。頼もしい指揮官に成長した。

「これまでは届くか届かないかのところでしたが、今回、ようやく勝てたことで、今後は続いていくという期待感は十分にあります」

 選抜選考委員会は来年1月30日に控える。16年ぶりのセンバツを「当確」するも、出場することが目標ではない。全国舞台で勝ち上がらなければ、真の「名門復活」とは言えない。

「関東第一さんに勝てた勝因は守れたことと、無駄な四球を出さなかったことに尽きます。まだ、完成形ではない。チームとしての徹底事項、粘り、学校生活、私生活、練習と、すべてを突き詰めていけば、成長の余地はあります。帝京高校としての野球をつくりたい」

 息つく暇もなく、11月14日には明治神宮大会が開幕する。帝京高は1回戦で関東大会を制した山梨学院高と、初日に対戦する。

「東京代表として、センバツの枠(優勝した地区に明治神宮大会枠)もかかっている。関東第一さんの分まで、必死に戦いたい」

 ゲームセット直後に流した涙も、すっかり乾いていた。取材対応を終え、球場正面に向かうと大勢の関係者・ファンが出待ち。Vメンバーを大歓声で出迎えたのである。金田監督は深々と一礼し、移動バスに乗り込み、自らハンドルを握って神宮球場をあとにした。

文=岡本朋祐
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