悔やまれる1イニング

関東第一高は準優勝。3回裏の8失点から、コツコツ1点ずつをかえしていく粘りの真骨頂を見せた。母校を指揮する米澤監督[中央]は秋の成長に目を細めた[写真=矢野寿明]
【秋季東京大会決勝】11月9日(神宮)
帝京8-4関東第一
関東第一高は帝京高との秋季東京大会決勝で敗退した(4対8)。同大会は来春のセンバツ甲子園へ向けた重要な資料で、関東・東京の一般選考枠は「6」。関東4、東京1が基数となっており、残る1枠は関東5位校と東京2位校との比較検討となる。関東第一高は東京2位校が予想され、微妙な状況で来年1月30日の選抜選考委員会を迎えることになる。
2024年夏の甲子園で準優勝へ導くなど、経験豊富な米澤貴光監督は「経験ゼロからスタートし、よくやってくれました。ここまで来られたのは自信になる」と選手たちを労った。
2年連続で甲子園に出場した今夏のメンバー20人のうち、2年生以下のレギュラーは不在。2ケタ背番号は新チームでエースの左腕・石井翔と新主将に就任した内野手・井口瑛太。ともに甲子園では、1試合の出場だった。
帝京高との決勝は0対0の3回裏に打者12人、長短8安打の猛攻に遭い8失点。四球も絡んだが、相手打線の勢いを止めることができなかった。悔やまれる1イニングとなった。
「ビッグイニングをつくらない守備を鍛えてきました。2失点のところを1失点、1失点のところを無失点にしのぐ守り。当たり損ないや、不運な打球もありましたが、それも野球。こちらが、防げなかった。先制して、相手にプレッシャーを与えることができなかった。あの1イニングが何だったのかを考えて、ゼロに抑える強さを身につけていきたい」
序盤の大量ビハインドも、あきらめない姿勢を見せた。中盤、終盤と得点を重ね、持ち味の粘りを発揮。3回途中から救援したエース・石井も4回以降は追加点を与えず、攻守にスキのない伝統のチームカラーが浸透していた。
「コツコツやるのがゲームプラン。あそこまでよくつないでくれました」(米澤監督)
帝京高はかつて甲子園で春1度、夏2度の優勝を誇る強豪校だが、2011年夏を最後に聖地から遠ざかっていた。この間、東京の強豪校の地位を確立させたのが関東第一高である。00年に就任した米澤監督は春5回、夏7回の甲子園へと導き、通算21勝(12敗)。帝京高は、夏は同じ東東京勢のライバルである。
「帝京高校さんだから、という意識はない。(ライバルとして)戦うのはいつものこと。ただ、ここまで苦しまれていたのは事実。私たちとしては1年1年、1回1回の対戦が勝負であり、引くつもりもない。今回は帝京高校さんの力が上回ったということです。来年夏も、戦わなくてはならない相手であり、帝京高校さんに挑む形となる。夏のプレッシャーに負けないチームをつくりたい」
関東第一高は帝京高の10安打を上回る毎回の16安打を放ち、最後のアウト一つまで怯まず、意地を見せた。帝京高の勝利の校歌が神宮の杜に流れると、三塁側の関東第一高の応援席からは自然発生的に手拍子が起こった。歌い終えると、相手を称える拍手を送っていた。対戦校をリスペクトするフェアプレー精神。統率されたスタンドから、甲子園常連校・関東第一高の強さを垣間見ることができた。
文=岡本朋祐