変革期を迎えている巨人

2020、21年時にも巨人でコーチを務めていた石井氏。二軍監督として来季のV奪回に貢献できるか
V奪回を目指す巨人がコーチングスタッフを今オフに一新。
DeNAで野手コーチを務めていた
石井琢朗氏が二軍監督に就任した。
チームは変革期を迎えている。不動の四番を張っていた
岡本和真がポスティングシステムを利用してメジャーへ移籍予定。正二塁手の
吉川尚輝は10月下旬に両股関節の手術を受け、実戦復帰のメドが現時点で立っていない。今季ブレークした遊撃の
泉口友汰を除き、内野はレギュラーが固まっていない状況だ。外野の3枠も熾烈な競争が繰り広げられる。投手陣に目を移すと、規定投球回をクリアした投手は11勝を挙げた
山崎伊織のみ。エース・
戸郷翔征の復活、
赤星優志、
井上温大、
森田駿哉、
横川凱、
西舘勇陽など若手の一本立ちと共に新たな戦力を一軍に送り込めるか。二軍監督の役割は非常に大きい。
「100点か0点かではなく」
石井二軍監督は
広島、
ヤクルト、巨人、DeNAとコーチを歴任。広島のコーチ時代は
菊池涼介、
丸佳浩(現巨人)、
鈴木誠也(現カブス)ら主力選手たちの育成に尽力した。2016年から球団史上初のリーグ3連覇を飾ったが、個々の能力が高いだけでなく、打線全体に「つなぎの意識」が共有されていた。石井コーチは選手たちの意識改革について、17年9月に週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っていた。
「これまではチャンスで回ってきたら、どんな場面でも『俺が決めてやる』という部分がありました。その気持ちは絶対に必要なものですよ。ですが、状況によっては100点満点の結果──ヒットやホームランでなくても、得点につながる打撃はある。まずはそこから入ろうとしました。チャンスが来たら漠然と、根拠のない自信だけで打席に入って振り回し、100点満点を狙った結果、0点に終わってしまった、ではダメ。100点か0点かではなく、その間でも得点につながる打撃はあるだろうと」。
「打者は打って3割で、残りの7割は失敗です。それでも、その失敗をムダな凡打で終わらせるのではなく、悪あがきを、できることをしようということです。同じ三振でも簡単にするのではなく、球数を放らせる。3球で終わるのと、5球、6球で終わるのでは違います。それがジャブとして効いてきて、後半に相手投手が消耗して制球を乱すかもしれない。それもひとつのつながりです。はっきり言えば後づけでもいいんです。例えば一死二塁でヒットを狙って凡打に終わったとしても、それで走者が三塁に進めばいい。三塁に行けば単打で確実に還れますし、エラーやボーク、パスボールなど、得点できる可能性は二死二塁とは全然違う。仮にそれで得点できたら、打点を挙げたバッターはもちろんですが、走者を三塁に進めた凡打を後づけでもいいからしっかり評価する。そういう部分ですね」
DeNAでチーム打撃を重視
強打者をそろえても、戦術が徹底されていなければ得点はなかなか入らない。22年にDeNAのコーチに就任した際も真っ先に取り組んだのが意識改革だった。前年の21年は
牧秀悟、
佐野恵太、
宮崎敏郎、
桑原将志と4選手が打率3割を達成。
タイラー・オースティンもわずかに規定打席に足りなかったものの3割をマークしたが、チームは最下位に沈んだ。
「個人個人の力はあるんだけど、チーム力につながっていない。いかに勝利に結び付ける打撃をするか。もう一度見つめ直さないといけない」
バントやエンドラン、進塁打などチーム打撃を重視し、足で揺さぶるなど機動力を絡めて相手バッテリーに重圧を掛ける。横浜スタジアムでの試合前に石井コーチを中心として野手陣が輪をつくるのが日常の風景だった。その日の試合で攻撃の狙いを明確にし、頭の中を整理する。
ネフタリ・ソト(現
ロッテ)は「勝ったチームの経験があるコーチ。メンタル的にもすごく強いものを持っているし、みんなにすごくいい影響を与えてくれる」と信頼を口にしていた。
巨人は20、21年にコーチを務めて以来、5年ぶりの復帰になる。ファームのスローガンを聞かれると、「強さというところをイメージするのであれば、巨人軍だけに強人(きょうじん)軍でありたい」と語った。秋季キャンプでは選手と積極的にコミュニケーションを取る姿が連日見られる。チーム改革は始まったばかりだ。
写真=BBM