「キッズファーストアクション in東京ドーム」が開催

「キッズファーストアクション in東京ドーム」の特別ゲストとして球心会・王代表があいさつした。後方左からNPB・榊原コミッショナー、日本高野連・寶会長[写真=BBM]
日本高等学校野球連盟と日本野球機構が主催した「キッズファーストアクション in東京ドーム」が11月16日、東京ドームで開催された。午前10時から2時間、この日の19時からの侍ジャパンの韓国との強化試合を控えた夢舞台で、子どもたちが体を動かした。
日本高野連とNPBは7月18日、野球殿堂博物館内で記者会見を開き、共同事業に合意した。事業内容は「野球の普及・振興事業の連携協力」で『キッズ ファーストアクション〜みらいへのキャッチボールプロジェクト〜』とされた。意図はこう記されていた。
キッズファーストでは「キッズ(幼児)を第一、中心に考え、幼児と高校生が一緒に楽しく『あそぶ』ことで幼児の健やかな成長を促進します」。ファーストアクションは「幼児が初めてボール遊びを体験する機会を創出します。そしてこの活動と笑顔を全国に広めます」。
日本高野連とNPBが連携、協力して「高校球児と幼児がボール遊びを通じて触れ合う機会」を創出する場である。計画的に全国展開し、継続的に実施することを目指している。
今年から3年の結果を踏まえて、4年目以降を検討。最終ゴールとしては全国47都道府県において高校生が地元の保育園、幼稚園などを訪問し、ボールを投げる、受けるといった野球の動きを通じて、幼児の健全な成長と、体を動かす楽しさ、面白さを知るきっかけを与えていくのが目的だ。
高校生にとっても、未就学児とボール遊びの体験活動を通じて、豊かな人間形成が期待される。学校、地元社会との連携、協働により、地域全体で幼児と高校生の成長を支える。
NPB側はこれまでの野球の普及・振興に関してのノウハウを伝え、教本、資料、用具を提供。また、保育園、幼稚園訪問のための基礎知識、幼児への体育実技指導方法を習得したリーダー養成(監督、部長、連盟関係者ら学生を指導する立場を対象)を目的とした「KPL(キッズ・パートナー・リーダー)養成講習会」も実施する流れが示された。
高校野球とプロ野球がタッグを組んだ11月16日は、歴史的な1日となった。
講師役は東京都高野連加盟校の9校から380人の部員のほか、NPB4球団ら計9人が務めた。参加者は園児約350人とその保護者で、バット、ボールなどを使って体を動かす楽しさを知ってもらい、スポーツに親しみを持つ場が提供された。
日本高野連・寶馨会長は「意義のある一日」と語り、日本野球機構・榊原コミッショナーは「感動的な一日」「画期的な日」「有意義な機会」と話した。この日の開会式における特別ゲストとして登場した球心会・
王貞治代表(
ソフトバンク会長)は「野球界にとっても雪解け。将来の野球界を考える動きが出てきたのは良いこと」と総括した。
球児にとって学びとなる機会

子どもたちはボール、バットを使った「あそび」を楽しんだ[写真=BBM]
参加者にとっても、有意義な時間だった。
「東京都高野連ではここ何年かでティーボールを通じて子どもたちと接する機会がありますが、プロ野球が使用する球場で、生徒たちは教わる側から教える側になり、すごく良い経験になりました。こういった機会を大切にし、子どもたちには、野球を好きになってもらいたいです」(日大三高・三木有造監督)
「子どもたちと関わることで、逆に元気をもらいました。これから冬のトレーニング期間に入りますが、選手間のコミュニケーションにも生かされる場でした。(今日に向けて)楽しいムードをつくり上げていくために、目線を合わせることなど、いろいろと調べてきました」(日大三高・田中諒主将)
「生徒を預かる身として、学びとなる機会をいただきました。自分から言葉を発し、理解させること、教えることの難しさ。子どもたち、保護者の方も笑顔で、温かい雰囲気の中でやらせていただきました。笑顔を増やすための取り組みを、今後も努力していきたいと思います」(明大八王子高・椙原貴文監督)
「純粋に子どもたちは可愛いな、と。明るさと純粋さを感じました。(今日に向けた準備として)優しい笑顔の確認をしました。いかに楽しんでもらうか。今後にチームづくりに生かせることがあり、皆で考えていきたいと思います」(明大八王子高・佐藤啓太主将)
双方のさらなる連携強化を強調
高校野球とプロ野球との関係性は長く「冬の時代」があった。一例を挙げれば、1955年、ハワイに派遣された全日本選抜チームに対して、プロ野球スカウトの行動に目に余るものがあった。佐伯達夫氏(67年から80年まで日本高野連第3代会長)が同チームの選手が所属する校長、保護者に「佐伯通達」を出した。62年には元プロ野球関係者のアマ復帰未承認、64年には夏の甲子園大会が終了するまでプロ球団との入団交渉の禁止規定を、地方大会規定に追加。佐伯氏は一貫としたポリシーがあった。「佐伯通達」の一部を抜粋する。
「高校の野球がプロ球団に入団してはいけないというのではありません。しかし私どもがやっている高校野球は決してプロ選手を養成するのが目的ではありません。野球を通じて将来日本のために役立つ立派な人間をつくる以外には何ものもない」
時代は経過し、日本高野連と日本野球機構は話し合いを重ね、理解を深め、信頼関係を再構築。2003年7月、NPB・川島廣守コミッショナーが初めて日本高野連を訪問し、日本高野連・脇村春夫会長と会談。同年12月にはプロ現役選手によるシンポジウム「夢の向こうに」が始まった。04年1月には日本高野連とNPBが「高校生のドラフト制度に関する覚書」を締結。07年10月には日本高野連の上部団体である日本学生野球協会とNPBが、野球界発展にための覚書を締結。13年には日本学生野球協会とNPBで学生野球回復資格回復制度による研修が始まり、学生を現場指導する上でのルールが大幅に緩和された。新型コロナ禍の2020年には「対策連絡会議」に、日本高野連が参加。8、9月には甲子園と東京ドームでプロ志望高校生合同練習会を開催した。そして、今回の普及振興事業の連携。王代表が言う「雪解け」は、加速している。
今後の全国展開についてNPB・榊原コミッショナーは「日本高野連には行動力、47都道府県の組織力があります。NPBとしても力になれるようにしていきたい」と語れば、日本高野連・寶会長は「(開催は)シーズン前後を狙っていき、47都道府県のネットワークの強みを生かしていきたい」と、双方のさらなる連携強化を強調した。
文=岡本朋祐