地元球団で濃密な3年間
日本ハム・
伏見寅威と
阪神・
島本浩也のトレードが成立したことが両球団から11月14日に発表され、大きな反響を呼んだ。
北海道千歳市出身の伏見は、ファンに愛された選手だった。FA権を行使してオリックスから22年オフに移籍すると、日本ハムが強くなる礎を作った。今年は64試合出場で打率.241、2本塁打、11打点。チームは
ソフトバンクと熾烈な優勝争いを繰り広げて最後に力尽きたが、35歳のベテラン捕手の存在感は大きかった。ソフトバンクと対戦したCSファイナルステージ第4戦では先発マスクをかぶり、好リードで
北山亘基を引っ張ると、打撃でも5回に中越え適時三塁打。攻守にわたる活躍でチームの勝利に貢献した。
地元球団で過ごした3年間は濃厚な時間だった。トレード移籍が決まった後に日本ハムの球団公式サイトを通じ、「FAで入団してからの3年間、気持ちよくプレーできたのは球団の支えがあったからだと感じています。いい思い出で、これからの野球人生にとって貴重な経験となりました。またファンの皆さんには、調子の良い時も悪い時も変わらず応援してくださり、何度もくじけそうになった時に背中を押してもらいました。本当に感謝しています。これからも変わらず応援していただけると嬉しいです」とコメントした。
『最善を尽くす』がテーマ
今年は
田宮裕涼が正捕手となり、
進藤勇也が出場機会を増やしていた。内外野を守る
郡司裕也もマスクをかぶる。伏見は後半戦に入って出場機会を減らしていたが、まだまだやれる思いが強かっただろう。7月に週刊ベースボールの取材で、捕手として大事にしていることを聞かれて以下のように語っていた。
「ミットにずっと入れている刺繍の言葉でもあるんですけど、『最善を尽くす』というのを自分のテーマにしています。正直、結果を左右するのはピッチャーの力量の部分が大きくて、ただ捕るだけだったらキャッチャーの良い悪いなんて出ないです。じゃあどこで出るのかとなると、サインの出し方とか、伝え方、構え方といったところ。抑えたにしても打たれたにしても、そうした部分を全部自分はできていたのかと、反省するときには自問自答しています。『あのときもうちょっとこういうことができたな』という思いにはならないように、日頃からピッチャーと会話したりというのは意識してやっているところですかね」
「準備はめちゃくちゃ大事なんですけど、ただそれだけだと「なんかちょっとおかしいな」というのに気づけないこともあるんですよね。当日どうなるかというのは準備とはやっぱり別なので、その日その日の変化に気づけるアンテナも大事です」
さらなるチーム力向上のために
藤川球児監督が就任した阪神は今年、圧倒的な強さでリーグ制覇を達成した。
坂本誠志郎という正捕手がいるが、さらにチーム力を底上げするためには経験豊富な伏見の力が必要と判断したのだろう。オリックスで
宮城大弥、
山崎福也(現日本ハム)とバッテリーを組み、日本ハムではエース・
伊藤大海や今年大ブレークした
達孝太を支えた。阪神には東海大札幌高の後輩で先発ローテーション定着を目指す
門別啓人、プロ1年目の今季に先発と救援で稼働した
伊原陵人、育成入団でプロ1年目に支配下昇格し、プロ初勝利を含む2勝を挙げた
早川太貴など将来を嘱望される投手が多い。
他球団のスコアラーは「伏見のリードによって、新たな能力を引き出される投手が出てくるでしょう。坂本とは違った色を出してくると思いますし、バッテリーの力が上がることは間違いない。良い補強をしたと思いますよ」と警戒を強める。
オリックス、日本ハムで得た経験を阪神に還元することは大きなプラスアルファをもたらす。伏見自身も「第2捕手」と位置づけられることは望んでいないだろう。1人の野球人として正捕手の座をつかみにいく。縦縞のユニフォームを身にまとい、新たな野球人生が始まる。
写真=BBM