昨年は首位打者獲得
DeNAがタイラー・オースティンを自由契約にしたことを11月13日に発表した。6日にウエーバー公示手続きを行っていた。退団となる見通しで、ファンは複雑な思いだろう。
「TA」の愛称で親しまれ、応援歌が流れると球場のボルテージが一気に上がった。オースティンも横浜の街をすっかり気に入り、「(おすすめは)ベイクォーターにあるお店です。シュラスコ(中南米料理)の専門店なのですが本当に居心地が良くて、料理がおいしい。特に奥さんがいないときは後藤通訳も一緒に食べに行ったりしています」と声をはずませていた。
球界屈指の強打者であることは間違いない。だが、故障が多すぎることがネックだった。DeNAでプレーした6年間で100試合以上出場したシーズンは2年、規定打席到達は打率.316で首位打者に輝いた昨年のみだった。このシーズンも全力プレーの代償で何度も故障に見舞われている。4月10日の
中日戦(横浜)で二塁打を放ってヘッドスライディングした際に足を負傷して交代。「右太腿裏肉離れ」で登録抹消された。
オールスターでも一塁の守備に就いた際にイレギュラーした打球が口付近に直撃して出血。負傷交代後に頭痛を訴え、脳震盪の疑いがあると病院で診断された。
ソフトバンクと対戦した日本シリーズでも第1戦、第3戦と左足の甲に直撃するアクシデントに見舞われたが、痛みを我慢して強行出場。打率.375、1本塁打、3打点の大活躍で、26年ぶりの日本一の立役者となった。
目の前のプレーに全集中
オースティンはケガと隣り合わせのハッスルプレーについて、自身の信念を週刊ベースボールのインタビューで語っている。
「シーズンが長いということはもちろん理解しているのですが、やはり1試合1試合の積み重ねであることも間違いありません。そして、勝利と敗北の差は、ワンプレーの成功で1点差で勝利することもあれば、逆もあり得るほど些細なもの。だからこそ、自分自身が目の前のプレーに対して、全集中できるかどうかが大事だと思っています。1勝を取り続けた先に優勝があるからこそ、このプレースタイルを続けています」
リーグ優勝、2年連続日本一を目指した今年は「四番・一塁」で開幕スタメンに名を連ねた。シーズンを通じて稼働することが期待されたが、10日も経たず下半身のコンディションで登録抹消に。1カ月の調整期間を経て5月上旬に一軍昇格したが、6月上旬に入って右膝の違和感を訴えて再び離脱した。
この故障が重症で、一軍復帰に約2か月の期間を要することに。8月に一軍合流すると、気温の上昇と共にバットの振りが鋭さを増す。9月は15試合出場で月間打率.396、4本塁打、9打点。だが、またもアクシデントに見舞われた。9月26日の
巨人戦(東京ドーム)で走塁中に膝を痛めて交代。今季3度目の登録抹消となり、クライマックスシリーズに間に合わず終戦を迎えた。65試合で打率.269、11本塁打、28打点。得点圏打率.180と勝負強さも鳴りを潜めた。
通算OPSは.945
他球団のスコアラーは「実力で言えば、球界屈指の強打者です。変化球への対応力が高く、広角に長打を打てる。同じ攻め方が通用しないので神経を使います。試合に出続けられるコンディションを維持すれば三冠王を狙える強打者だと思います」と評価するが、グラウンドに立ってプレーする稼働率が低いと戦力として計算するのが難しい。
来年の去就が不透明な中、NPBで獲得に乗り出す球団は現れるか。今年の推定年俸4億9500万円からの大幅ダウンは不可避だが、打者としての資質は申し分ない。このまま見られなくなるのは惜しいと感じるファンは多いだろう。NPB通算打率.293、85本塁打、236打点。出塁率と長打率を足し合わせた数値のOPSは.945と高い数字をマークしている。
指名打者制のパ・リーグや、得点力不足に悩むセ・リーグ球団は獲得を検討する価値がある。オースティンの勇姿を来年も日本で見られるか。
写真=BBM