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伊原春樹の全力主義

監督を孤独にさせてはいけない…阪神の和田豊ヘッドコーチ就任はいい選択/伊原春樹の全力主義

 

一軍監督経験のあるヘッドコーチ


今季はヘッドコーチ不在だった藤川監督率いる阪神


 来季の阪神のヘッドコーチに和田豊が就任した。藤川球児監督が誕生した今年、阪神はヘッドコーチが不在。リーグ優勝を遂げたとはいえ、連覇に向けてヘッドコーチがいたほうがいいと藤川監督自身が痛感したのだろう。和田は一軍監督の経験もあり、適任であるのは間違いない。私も一軍監督経験後、2007年から10年までの間、巨人原辰徳監督の下でヘッドコーチを務めた。

 その経験から言うと、まずヘッドコーチの仕事で重要なのは「監督が考える野球をチームに浸透させること」になる。監督の意図をくみ取って、コーチ、選手にそれを浸透させる。私が就任した際、原監督が口にしていたのは「伊原さん、今のジャイアンツには“弱い選手”が多いんですよ」だった。ちょっとしたことでも「あそこが痛い、ここが痛い」と言い、試合を休んだり、最大限のパフォーマンスを発揮できなかったりする。レギュラークラスの選手なら多少、痛みがあっても試合に出なければいけないのは確かだが、そういった意識が欠如していた。06年、2度目の巨人指揮官の座に就いた原監督だったが、そこが4位に終わった大きな原因と考えていたのだ。まず、そこを正すことがヘッドコーチとしての大きな仕事になるだろうと考えた。「レギュラーとは何か?」――キャンプ中から厳しい言葉を選手に投げかけたと思う。

 さらに、監督が言いたいけど我慢していることを感じ取って、チームの空気を締めることも重要な役割だ。巨人ではこんなことがあった。ある試合で無死一、二塁の場面で打者にはバントのサイン。三塁コーチャーの私は二塁走者のルイス・ゴンザレスに「飛び出すなよ」とジェスチャーを送った。しっかり、打者がバントで打球を転がしたのを判断してスタートしなければいけないからだ。しかし、ゴンザレスは打者が見送ったのに三塁へ行きかけてしまいアウトに。同じ試合、同じ状況で今度は二塁走者の木村拓也が飛び出してアウトになってしまった。もちろん、原監督はカッカしている。試合後、監督が不参加のミーティングでミスを指摘して、あらためてチーム全体に“やってはいけないプレー”を徹底させた。

監督の苦悩を分かち合う


 また、監督がさい配ミスをすることもあるが、そのときに「あの場面はこうだったのではないですか」といった聞き方はしなかった。尋ねるとすれば「どういうことを意図されたのですか」という感じだった。やはり、真正面から否定することを言ってはいけない。監督の考えを聞いてから、話し合っていくほうが建設的だ。

 そもそも監督とは孤独なもの。チームの調子がいいときは、周囲もチヤホヤしてくれるが一転、不調に陥ると腫れ物に触るような扱いをされる。それはコーチも同様だ。勝利から見放され続けると、自然と監督から離れていき、監督は一人になってしまう。そんなときでも、ヘッドコーチは常に監督に寄り添っていなければいけない。監督の苦悩をともに分かち合うようにしなければ、ヘッドコーチとしては失格だ。

 和田ヘッドコーチは非常に穏やかな人物で、常識人でもある。一軍監督経験もあるから、いいヘッドコーチになるだろう。藤川監督も素晴らしい選択をしたと思う。

写真=BBM
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