ブレない心

青学大・安藤監督[中央]はプロ入りする中西[左]と小田[右]に、熱きメッセージを送った[写真=矢野寿明]
青学大はここ数年、ドラフトの中心にいる。2023年は
広島・
常廣羽也斗、
阪神・
下村海翔、24年は
ロッテ・
西川史礁、広島・
佐々木泰、そして25年は
中日・
中西聖輝、
DeNA・
小田康一郎が1位指名を受けた。3年連続でドライチを3人輩出という、快挙を遂げている。
2019年1月から母校・青学大を率いる安藤寧則監督は生徒との「縁」を大切にしている。高校生の勧誘には足繁く通い、誠意を伝える。スポーツ推薦で入学するのは、1学年8人。AOGAKUの門をたたいてきた学生は「後輩」として、親身に面倒を見る。甘やかすのではない。愛情の根底には、厳しさがある。そして、大学卒業後の「出口」の部分でも、細心のケアを欠かせない。
安藤監督は東都大学リーグ戦通算17勝を挙げた152キロ右腕エース・中西と、同通算9本塁打を放った左の主砲・小田へ向けて、プロ入りに際して熱いエールを送った。なぜ、プロ球団から1位評価を受けたのか。指揮官が明かすエピソードから、その理由が垣間見える。
▽中日・中西聖輝
この4年間で人間的にも、技術的にも大きく成長しました。プロの打者と対戦した際、洗礼を浴びる場面が見られるかもしれません。ただ、壁にぶち当たってから、課題を見つめ、考えて、修正し、レベルアップする姿が想像できるんです。
なぜならば、気持ちの強い学生だったからです。我慢ができる選手だからです。大学入学前に右肘を手術して、復帰までのリハビリは先の見えない、大変な時間だったと思います。タイミングを見て、中西には「ブレていないか? オレは、ブレていないぞ!」と話してきました。それが何かと言えば、高校3年時に青山学院大学とご縁をいただいたとき、二人で約束した「4年後にドラフト1位でプロ入り」。中日さんとのご縁はまさに、本人がつかみ取った努力の結晶です。
先ほど、「我慢強さ」について触れましたが、中西に限らず、選手に必要なのは「対応力だぞ!」と言い続けています。平日開催の東都大学一部リーグ戦は、日程が変更となるケースがあります。神宮球場が試合会場の際、週末からの開催である東京六大学さんの試合消化により、臨機応変に動く必要があるわけです(水曜日までは、東京六大学の予備日)。
特に先発投手は調整が難しくなるのですが、常廣羽也斗(広島)、下村海翔(阪神)が在籍していた2023年のチームあたりからは、こうしたスケジュール変更にも動じない図太さがありました。2学年後輩・中西にも継がれ、象徴的だったのは、ドラフト翌日に開催された亜大3回戦です。勝てばリーグ6連覇という大一番で、中西は完封(3対0)しました。
ドラフト会議後、一連の取材対応等が終わったのは相当、夜も遅かったと記憶しています。翌日の試合は13時前開始。できる範囲で最高の準備で試合に臨み、チームに勝利をもたらせたわけです。野手が得点できなければ、投手がゼロに抑える。2点を取れば、1点にしのぐ。間違いなく、この世代のナンバーワン投手。根っこには、負けず嫌いが性分としてあったことも、付け加えておきます。
洞察力と器用さ
▽DeNA・小田康一郎
グラウンドでプレーを見ていただければ分かりますが、野球の深みが違う選手です。打撃が目立ちますが、守りを含めた総合力が高い。主に一塁で起用しましたが、小田の判断力、冷静かつクレバーなプレーで、何度もチームを救いました。時に致命的なミスにつながることもある、投手、野手との連係プレーに長けているんです。
今年7月、日米大学選手権に出場した侍ジャパン大学代表でも、小田の持ち味が存分に発揮されました。私はアシスタントコーチとして帯同させていただきましたが、試合を控えたスタッフミーティングで、大学日本代表・堀井哲也監督(慶大監督)が翌日の先発オーダーを決める際にまず「小田のファーストだけは、外せない」と言われるんです。
私と全く同じ視点で、野手からの送球や打球を捕球するだけではなく、さまざまな動きに対して、先が見えているのです。つまりは、洞察力。首脳陣のリクエストに、見事なまでに応えていたわけです。そこを、ご理解いただけた堀井監督には、感謝しかありません。
小田は一塁だけでなく、二塁、三塁、外野もうまいんです。打撃も飛ばすだけでなく、器用さも、抜群です。実は本来の左打席だけでなく、右打席からでもスタンドに放り込むパワーがあります。右のノックも上手です。
DeNAさんは指導スタッフと選手が近い印象があり、ファンも熱く、やりがいしかないと思います。大事にしてくれそうな、アットホームな雰囲気。ドラフトで改めて感じた球団イメージです。あとは勝負の世界ですから、本人の取り組み次第です。
2人には、新人王を期待しています。同じセ・リーグ。良い競争ができればいいです。
取材・構成=岡本朋祐