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【社会人野球】三菱重工East・West硬式野球部を運営するGMの役割とは何か

 

統合・再編から5年


三菱重工East・West硬式野球部は2026年シーズンへ向けて、大川GM[左]から中根新GM[右]へと交代になる[写真=BBM]


 三菱重工East・West硬式野球部は12月19日、2026年シーズンへ向けた新たな体制を発表した。21年から両チームの運営に携わってきた大川広誉GM(ゼネラルマネジャー)が25年限りで勇退し、26年からは中根慎一郎新GMが就任する。

 大川GMは光陵高(神奈川)、慶大を経て、三菱重工神戸に入社。強打の左打者として、1997年の社会人野球日本選手権で優勝し、同年の社会人ベストナイン(指名打者部門)を受賞した。06年からは6シーズン、同社の監督を務め、勇退後の12年、本社社長室広報部に異動(ブランド戦略グループ長等歴任)し、20年に設置されたグループ戦略推進室広報部企業スポーツ推進センターの副センター長兼野球部GM)就任した。

 三菱重工は21年、全国各地に4チームあった硬式野球部を2チームに再編・統合した。三菱重工Westと三菱重工Eastとして新たなスタート。スポーツを通じて感動を共有し、模範的な存在としてアマチュア球界の最高峰をリードすることを目指し「三菱重工スポーツチャレンジ」を活動理念に掲げた。チーム編成のトップを託されたのが、大川GMであった。三菱重工Eastが24年に都市対抗初優勝を遂げると、三菱重工Westも都市対抗、社会人日本選手権の二大大会の常連として、上位進出を遂げるチームへと成長した。

 大川GMは同野球部公式HPでコメントした。

「4チーム統合・再編については悲喜交々ありましたが、三菱重工スポーツチャレンジの旗印のもと、チームの『常勝化』に向け、とにかく『勝ちたい』と強く願う精鋭たちが賛同し集まってくれました。GMという仕事は重責でしたが、EastとWestという新しく生まれたチームが年々成長していく姿を見るのが最大の喜びでした。Eastは都市対抗では23年ベスト8、24年優勝、日本選手権では21年準優勝、22年、24年ベスト4、Westは都市対抗では24年ベスト8、日本選手権では22年にベスト8という成績を上げてくれました。これからも両チームは常に勝利を目指していきますが、中根新GMの下、さらに大きく成長する姿を見せてくれると期待しています」

24時間&365日体制


 大川GMは19日、取材に応じた。5年間の任務を終える、率直な感想はこうだ。

「寂しい、晴れやか、やり切った。この3つの感情が交錯しています」

 寂しさ、とは何か。

「チームのために24時間営業、365日で動いてきました。実を言うと、今日もまだ契約をする選手が残っていたり、採用の話をしたりまだ全然、止まってはいないんですけど……(苦笑)。本日、発表しましたので、今日中に全部、僕がやるべきことは終わらせようと思っているんですが、クセが抜けないというか……。年が明ければ、そんな感じにはならないのかなと思いますが……。今後は人事異動で、スポーツとは関わりのない事業会社で仕事をさせてもらいます。これからもずっと、元 GMという立場から両チームのことは見守っていきたい。また今後、何が起こっても大丈夫なように準備をしようと思っています」

 晴れやか、やり切った理由をこう明かす。

「実際にやっても5年間。(自分の中で)最初から期限を決めた中で、全力で駆け抜け続けられるのはこれぐらいか、と。都市対抗優勝を最大の目標にしてやってきました。本当にできるかというのは、神のみぞ知る、だったんですけど、1回でも優勝できたのは幸運でしたし、仲間に恵まれたかなと思っています。仮に結果が出てなくても『やり切った』と言えるだけの自負はあるんですが、結果が出て本当に良かったと思います。Westについては、もう少し結果を出したかったところはあるんですが、来年以降の『お楽しみ』ということで、さらに期待したいと思います」

 この5年で実績を上げた理由の一つとして、確固たる組織を構築したのが背景にある。

「常勝チーム、三菱重工スポーツチャレンジと、今までにない、誰もできなかった取り組みをやり遂げた上で、結果もついてきたのは、自分でもよくやったなとは思います。自分がいなくなったら、またすべてが変わってしまうというようなことではなくて、後に託せる人材も出てきました。安心して後に継ぐ人間を作れたのも、良かったと思います」

 大川GMが全幅の信頼を置く「後継者」こそが、中根新GMである。

「この1年、特に半年、3カ月は引き継ぎ期間として、一緒に動いてきました。実際に関わってみないと分からないこともたくさんあります。中根は『これを継ぐと思うと、大変なプレッシャーです』みたいなことは言っていましたけど、僕と同じようにやり方をすることはなくて、中根流でやってもらったらいいんじゃないかなと思います。目指すところは同じですから。ポーカーフェイスですが、ハートというか、僕よりも芯が強い。彼には、僕にはない静かな秘めた力を持っていますので、僕以上の成果を出すと信じています」

引き継ぐ3原則


 中根新GMは中京大中京高(愛知)、慶大を通じ左投手として活躍した。三菱重工名古屋では1年目の07年に社会人日本選手権準優勝に貢献し、優秀選手賞を受賞。14年までプレーした後は社業に専念し、22年から24年まで慶大助監督を務め、23年秋のリーグ優勝、明治神宮大会優勝に尽力した。慶大を指揮していたのは三菱自動車岡崎、JR東日本と社会人で実績十分の堀井哲也監督。大学生を相手にした、学生スポーツとの接点は貴重だった。

「堀井監督の下で3年間、勉強をさせていただき、4学年で200人以上という大所帯である慶應義塾体育会野球部という大きな組織の中で学んだチームビルディングは必ず、これからに生かせる。『やっぱり慶應に行って良かった』と言えるように、今後も頑張りたいなと思っています」

 慶大から三菱重工に戻ったこの1年間は次期GM候補として、大川GMの下で働いた。

「大川さんのやり方、考え方は素晴らしいですし、僕には真似できないところだと思いますし、真似する必要もないと思っているんです。僕なりに今までの経験を生かせるように、慶應での助監督時代もそうでしたが、今までの野球、社会人での経験も含めて、自分の色を出していけたらなと思っております」

 大川GMのカラーとは、何だったのか

「簡単に言うと、カリスマ的存在でしたね。会社におけるスポーツチームの組織を変えていきました。さらには、結果も残しました。0から1にするエネルギーは相当、大変だったと思いますが、そこに尽力したのは、なかなかできないことだと思います。大川さんがGMとしてチーム編成してからグッと力をつけ、引き継ぐ部分では重圧に感じるところはあります。基盤を作っていただいたので、それを受け継ぐのが、私の役割になります」

 チーム強化。大川GMは常に二大大会で4強以上を追い求める「戦う集団」を目指してきた。中根新GMも、その信念は揺るがない。

「三菱重工スポーツチャレンジというところでは、『CSR/地域・社会貢献』『社員エンゲージメント』『企業ブランド』の3原則が不変であります。その根本的なところをブレず、チームとしては常勝軍団、日本一を目指してやっていく。そのために何をするかというところで、僕なりにいろいろ考えてEast・Westのチームとコミュニケーションをしっかり取りながらやっていきたいと思います」

 三菱重工Eastが加盟する神奈川はENEOS、東芝、さらには今年、16年ぶりに活動を再開した日産自動車と強豪チームぞろい。三菱重工Eastが加盟する近畿地区も日本生命、NTT西日本、大阪ガス、パナソニックら超激戦区であり、気の抜けない戦いが続く。大川GMは都市対抗を制した1年前に「ベスト4に常に2チームが入り、覇権を争うのが理想の構図です」と語っていた。この青写真を具現化するのは、中根新GMの仕事ということになる。

取材・文=岡本朋祐
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