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【大学野球】慶大・今津慶介はなぜ、2026年の新主将に就任したのか

 

4年間で成長できる土壌


慶大・今津は鋭い視線で、左打席で構える。正真正銘の勝負師だ[写真=矢野寿明]


 慶大は12月19日、2026年の新幹部を発表した。主将は今津慶介(新4年・旭川東高)が務める。新2年から新4年まで、162人という大所帯を一手に束ねていく。

 たたき上げ。今津というプレーヤーを表現するならば、この一言に尽きる。努力で這い上がってきた男だ。慶大は伝統的に甲子園出場など高校時代に目立った実績がなくても、大学4年間で成長できる土壌がある。2019年12月から母校を指揮する堀井哲也監督は静岡県立韮山高校から一般入試で入学し、4年秋に外野の定位置を奪取した練習の虫。慶大・小泉信三元塾長の教えである「練習ハ不可能ヲ可能ニス」の文化が、今も脈々と根付いている。

 今津は道内有数の公立進学校・旭川東高出身。3年夏の北北海道大会で準優勝を遂げた。決勝では旭川大高(現・旭川志峯高)に惜敗し、春夏を通じて初の甲子園出場にはあと一歩、及ばなかったが、旭川明成高、帯広大谷高の私学に勝利し、準決勝では夏の甲子園3回出場の滝川西高を撃破した。同校の快進撃をけん引したのが、主将の今津だった。

猛勉強で難関入試突破


 今津の祖父(寛さん、元衆議院議員)と伯父(寛史さん、北海道議会議員)は元高校球児で、大学時代は中大と法大の応援団に在籍。神宮では野球部を後押しする側だった。父(寛介さん、旭川市長)も元高校球児で、中大では準硬式野球部。野球一家に育った今津は、高校時代から東京六大学でのプレーを夢見た。

 当初は慶大以外の東京六大学の各校を志望するも、北北海道大会後、22年8月に旭川市内でキャンプを張っていた慶大の練習に参加。その雰囲気に惹かれ、慶大入試に方針転換した。猛勉強の末、総合政策学部のAO入試(一次の書類選考、二次の面接)を突破している。

 50メートル走6秒1の俊足。もともと右打ちだったが、脚力を生かすため、小学校6年には左打ちに挑戦し、スイッチヒッターとなった。慶大でも「両打ち」という持ち味を生かすため、人の二倍以上のメニューを消化。いつもグラウンド、室内練習場には黙々とバットスイングする姿が見られたという。

 2年春に神宮デビュー。立大2回戦のリーグ戦初打席(代打)で初安打を放った。同秋は出場がなかったが、一冬を越してレベルアップ。3年春の開幕前のオープン戦での猛アピールが実り、一軍を意味するAチーム入り。右翼のレギュラーをつかんだ。リーグ戦のベンチ入りメンバー25人が中心に生活する「第一寮」への入寮も果たした。同春は打率.358、3本塁打、9打点と慶大打線をけん引。「右の強みもありますが、今は左のほうがベスト」と、対左投手でも左打席に立った。

代打逆転3ランで確信


 東京六大学は多くの情報が公開されており、対戦5校は徹底的に研究してくる。相手校からの徹底マークで投手、打者とも「丸裸」にされ、結果を残し続けるのは相当、難しい。

 今津も今秋は苦しんだ。法大との開幕カード3試合で12打数1安打と不振で、同4回戦では先発から外れた。明大、東大との5試合は21打数5安打とやや調子を取り戻した。だが、立大1回戦で5打数無安打に終わると、2回戦、3回戦はいずれもベンチスタートとなった。誰もが通る道。この壁を乗り越えなければ、一流選手の仲間入りはできない。

 たたき上げは、簡単に崩れない。大学入学時から修羅場をくぐり抜け、激しいチーム内競争を勝ち抜いてきた自負がある。1勝1敗と勝ち点をかけた立大3回戦では、2点を追う7回表に代打逆転3ラン。限られたチャンスをものにし、一振りで試合を決め、勝ち点奪取に貢献。根拠はないが、この一発で、今津の次期主将就任を確信した。信頼を得るには、この上ない打席だったからだ。早慶戦ではクリーンアップに入り、3年秋を終えた。この秋は打率.188と低調な数字だったものの、2本塁打8打点と、ここ一番での勝負強さを発揮した。

 慶大は新4年生の話し合いにより、新主将が決まる。なぜ、今津が選ばれたのか。3年間の歩みを見れば、当然の流れと言っていい。姿勢で手本を示してきたからだ。かつて堀井監督は「ハートが強い」と、今津のプレースタイルを評価。最後は気持ちの勝負。高校時代から「打倒・私学」と、積み重ねてきたハングリー精神は、指揮官の心にも十分届いていた。

 政治家の家系だからなのか、今津には発信力があり、言語化する能力も高いという。ゲームに入れば、陣頭指揮を取り、勢いで相手校に立ち向かう。これ以上のチームリーダーはいない。26年春、慶大は「戦う姿勢」を前面にし、23年秋以来の天皇杯奪還に挑んでいく。

取材・文=岡本朋祐
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