1年春から3年秋まで正捕手で6連覇

母校・青学大を指揮する安藤寧則監督[中央]は154キロ右腕・鈴木[左]、正捕手の新主将・渡部[右]に全幅の信頼を寄せている。写真は 11月の明治神宮大会連覇時[写真=矢野寿明]
青学大は12月23日、年内最後の練習日だった。年末年始のオフ期間を経て、年明けからは目標の「4冠」に向けて本格始動する。2026年のドラフト有力候補において、注目バッテリーがいる。154キロの右腕・
鈴木泰成(3年・東海大菅生高)と強肩強打捕手の主将・
渡部海(3年・智弁和歌山高)だ。
青学大は今秋、東都大学リーグで史上3校目の6連覇を遂げた。2023年春から25年秋まで勝ち続けているわけだが、この間、全日本大学選手権は23、24年に連覇、明治神宮大会は24、25年に連覇。24年は史上5校目(6度目)の年間タイトル4冠を達成している。
令和の絶対王者・青学大の栄光の6連覇は、不動の正捕手・渡部の3年間の歩みでもある。1年春からマスクをかぶり、3年秋まで6シーズン、すべてのリーグ戦で優勝、4度の日本一に貢献している。さらには、侍ジャパン大学代表の正捕手として、今年7月の日米大学選手権で5戦全勝優勝に貢献した。
「負けないキャッチャー」の真骨頂を見せたのは、今年11月の明治神宮大会決勝(対立命大)である。6回表の先制3ランで主導権を握ると、高校時代からコンビを組んできた1学年上の右腕・
中西聖輝(
中日ドラフト1位)を好リードで完封勝利(4対0)へと導いた。勝負どころを熟知している。最高の形で、集大成の4年生を送り出し、渡部へ新主将のバトンがつながれたのだった。渡部は高校2年夏の甲子園で、中西とともに全国制覇を達成している。
なぜ、高校、大学を通じて大舞台で力を発揮できるのか。
「チャンスでは気負い過ぎないようにしています。多くの経験をさせていただいているので、力むことなく、練習してきたこと、いつもやっていることをやろうと意識しています」
主将就任は既定路線だったが、いざその立場になると、身が引き締まる思いだという。
「今までも自分が引っ張っていこうという気持ちでしたが、責任を感じます。背中を見せることもそうですが、発言でも示していきたい。他の部員が接しやすいようなキャプテンを目指し、後輩たちともしっかりコミュニケーションを取っていきたいと思います」
6連覇はあくまでも通過点。来春はリーグ史上初の7連覇への挑戦となるわけだが、青学大はさらに先の「10連覇」を目指している。チームとしての合言葉であり、渡部の代は27年の後輩へと継承していかなければならない。
「自分たちの代でも結果を残さないと『先輩がけん引してくれたから』という評価になってしまう。僕が主将として、優勝するにふさわしいチームをつくっていきたいと思います」
10連覇を目指す理由
大黒柱として期待される新エース・鈴木は、渡部とともに侍ジャパン大学代表でプレー。リリーバーで存在感を示し、日本の優勝に貢献した。自チームでは今秋から先発としての実績を積み、最終学年は文字通り、主戦としてのフル回転が期待される。自覚十分の鈴木は内野手・星子天真(3年・大阪桐蔭高)とともに副将に就任した。星子は高校3年春のセンバツ甲子園で優勝キャプテン。鈴木も小学校時代に主将、中学、高校で副将を経験しており、主将・渡部を支えていく役職となる。
「渡部はキャプテン、主将、四番を背負うことになる。まさか、ないとは思いますが、あまりに負担が大きく、プレーが落ちることがあるかもしれないので、星子とともに支えていきたいと思います。青学はいつも『全員戦力』と言っているのですが、主将、副将だけのチームではありません。他の部員を含めて、皆で戦っていきたいと思っています」
鈴木の1年時は3学年上の
常廣羽也斗(
広島ドラフト1位)、
下村海翔(
阪神ドラフト1位)、2年時は2学年上の左腕・
児玉悠紀(JR東日本)、1学年上の中西と主戦の背中を見てきた。今年のリーグ5連覇、6連覇の原動力となった中西は最も身近な大黒柱だった。
「(中西が完封した)立命大との明治神宮大会決勝はブルペンに入ってはいたものの、内心では『これは、ないな』と見ていました。あの展開では代えられないですよ。中西さんからはエースとしてのお手本、あるべき姿を学んできました。継承。言葉で言うのは簡単ですけど、7連覇、8連覇。それしかありません」
学生野球は毎年、メンバーが入れ替わる。勝ち続けるのは大変である。鈴木は前人未到の「10連覇」について、こう言及する。
「24年は常廣さん、下村さんが卒業して『投手力が落ちる』と言われていましたが、児玉さん、中西さんらが台頭し、25年は佐々木さん(佐々木泰、広島ドラフト1位)、西川さん(西川史礁、
ロッテドラフト1位)が抜けて『打線が落ちる』と言われましたが『全員戦力』を合言葉に、小田さん(小田康一郎、
DeNAドラフト1位)らがけん引してきた。26年は多くの野手が抜けて、自分自身も先発経験が浅い状況ですが、安藤監督は『負ける気がしない』『勝つしかない』と、言っています。日本一に値するチームをつくっていきたいと思います」
将来の日本球界の「顔」
青学大の6連覇はドラフトの足跡でもある。23、24、25年とドラフト1位2人を輩出。26年も渡部と鈴木が1位候補に挙がっている。チームを勝利へと導いた上で「4年連続」への思いを、鈴木は包み隠さずに明かす。
「ドラフトへの思いは人一倍強いです。1位で行くことにこだわってやっている。明治神宮大会では、大学ジャパンで一緒にプレーした立命大・有馬(有馬伽久、3年・愛工大名電高)が、ものすごいピッチングをしました。日米大学選手権が行われた7月からわずか数カ月で、あそこまで状態を上げてくるのは圧巻でした。自分も負けていられないです」
渡部も「(鈴木と)2人で(ドラフトのことを)話したりすることはないですが、多少なりとも意識はする。常に目標は高く設定しておきたいと思います」と、ドラフト1位を照準とする。
渡部には、同世代をけん引する覚悟も備わる。
「今年は大学日本代表を経験させていただき、来年は自分が伝えていく役目が求められる。自分が大学ジャパンも引っ張っていきたい」
気は早いのは承知の上で、渡部は将来の日本球界の「顔」となるような予感がする。すべての言動に魂があり、それが攻守のプレーにも出ている。正真正銘の司令塔。主将・渡部がいる限り、青学大の牙城は崩れない。そして、鈴木は先輩からの系譜を継ぎ、絶対的エースとして君臨する。過去の4冠は1972年の関大、89年、97年の近大、02年の亜大、08年の東洋大、24年の青学大。史上2校目となる2度目の偉業にチャレンジする。
取材・文=岡本朋祐