1年目は31試合に出場

レギュラー争いを勝ち抜いて2年目の飛躍を目指す荒巻
来季の
巨人で注目されるのは一、三塁の定位置争いだ。大黒柱の
岡本和真がメジャー挑戦することで、2つのポジション争いは激化している。
坂本勇人、
リチャード、
門脇誠、
増田陸、浦田俊輔、高卒2年目を迎えるドラフト1位の石塚裕惺のほか、新外国人選手を補強する可能性がある。その中で、一、三塁を守るこの若武者も定位置獲りを狙う。大卒2年目の荒巻悠だ。
上武大からドラフト3位で入団し、新人の今年は31試合出場で打率.296、1本塁打、1打点。スイングスピードが速く直球に強い。変化球への対応力も高く、広角に長打を飛ばせる。選球眼の良さにも定評があり、出塁率.377と高い数字を記録した。他球団のスコアラーは「印象に残ったルーキーの一人ですね。タイミングを外されても体の軸がブレずにバットが後から出てくるので、うまく拾ってヒットゾーンに飛ばせる。長打も打てますし、
福留孝介さん(
中日、
阪神ほか)と重なります」と高く評価する。
身長184センチ、体重93キロと恵まれた体格で、打席に立つと威圧感を感じる。攻守でまだまだ課題があるが、大きな伸びしろを秘めていることは間違いない。来季の一軍打撃コーチに
イ・スンヨプ氏が就任することで能力が引き出される可能性が十分にある。
来日1年目は苦労の連続
現役時代にNPB通算159本塁打、日韓通算で626本塁打を放った「韓国の国民的打者」は球を遠くに飛ばすパワーと技術を兼ね備えた長距離砲だった。日本で8年間プレーしたが、常に輝いていたわけではない。
ロッテに入団した来日1年目の04年は100試合出場で打率.240、14本塁打、50打点。本職の一塁は
福浦和也(現ロッテ二軍監督)が守ったため不慣れな外野や指名打者で起用されるケースが多く、ボビー・バレンタイン監督の「日替わり打順」への対応にも苦労した。ロッテOBの
大村巌氏(現
DeNA一軍打撃育成コーチ)が直撃した週刊ベースボールのインタビューで、葛藤を口にしていた。
「日本は細かいですね。自分に対しても徹底的に研究してきます。カウント1-3で真っすぐを狙っても、変化球が来ます。あと、(韓国では)初球からフォークということもないです。それは勝負球として最後に投げるものですから」
「自分はどうしても指名打者には慣れません。考え込むタイプなので。試合が終わって、満足しないんですよ。一日、何をやっていたんだろうと思ってしまいます。ベンチと守備位置を行ったり来たり、忙しい方がいいですね」

巨人移籍1年目の2006年には自己最高の成績を残したイ・スンヨプ
スタメンを外され、ファーム降格を経験したが下を向くことはなかった。日本語を流ちょうに話し、ナインと積極的にコミュニケーションを取る姿が。日本野球だけでなく、生活環境にも適応とする努力が実を結ぶ。翌05年は打率.260、30本塁打、82打点の活躍で31年ぶりのリーグ優勝に貢献。「プライドは、韓国に捨ててきたので関係ありません。試合に出られるのであれば、与えられた仕事をきっちりこなすだけです。去年(1年目)は気持ちに余裕がなかったので、そういうことを考えることもできませんでした。今年から捨てています。開幕もファームだったし……。そういう意味では、気持ちが軽かったです」と振り返っていた。
新コーチの指導を受けて
巨人に移籍した06年は四番に座り、143試合出場で打率.323、41本塁打、108打点と来日以降で最高の成績を残した。07年も30本塁打を放ち、リーグ優勝に貢献。現役引退後は韓国・斗山で監督を務めるなど指導者として経験を積み、15年ぶりに巨人に復帰した。
広角に長打を打つことが持ち味だった左打者のイ・スンヨプ氏は身長183センチ、87キロ。背格好が重なり、強打者の覚醒を目指す荒巻は指導を受けることで得られるものは多いだろう。今年はプロ2年目の
泉口友汰が遊撃の定位置をつかみ、リーグ2位の打率.301をマークして自身初のゴールデン・グラブ賞、ベストナインを受賞と飛躍のシーズンにした。荒巻も新人で培った経験を糧に、来季は大輪の花を咲かせたい。
写真=BBM