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【大学野球】2026ドラフト候補捕手の青学大・渡部海が智弁和歌山高・中谷仁監督を慕う理由

 

冬の過ごし方を伝授


母校・智弁和歌山高を指揮する中谷監督[右]は、1997年夏の甲子園で全国制覇。渡部[左]は元プロ捕手の指導を受けるため、大阪から和歌山の強豪校へと進学した[写真=宮原和也]


 青学大の正捕手・渡部海主将(3年・智弁和歌山高)が12月24日、母校のグラウンドを訪問。3年間、指導を受けた中谷仁監督に挨拶した後、後輩たちには激励の言葉を送った。

 智弁和歌山高は今春のセンバツで準優勝を遂げ、同夏の甲子園は1回戦敗退。秋の新チームは和歌山県大会準々決勝敗退と、来年の「夏一本」に向けて汗を流している状況だ。渡部は自身の高校時代と重ね合わせて、経験談を披露した。

「僕たちは2、3年春のセンバツを逃したんです。この時期をどう頑張るかで、夏の結果が変わってくる。 夏までは遠い目標であり、今はなかなかしんどいですけど、どう強い思いを持って過ごすか。そこを伝えさせてもらいました」

 渡部は1年夏、甲子園交流試合(同春の新型コロナ禍によるセンバツ大会中止を受けて、出場32校を招待)を背番号19でベンチ入り。下級生時代から英才教育を受けてきた。

 打撃が買われ、1年秋から一番・三塁に抜てき。智弁和歌山高は同秋、小園健太(DeNA)と松川虎生(ロッテ)のバッテリーを擁する市和歌山高との近畿大会準々決勝で敗退。県内ライバル校に屈し、センバツ出場を逃した。

 一冬を越えて心身とも成長し、2年夏の和歌山大会決勝では正捕手として、市和歌山高にリベンジに成功。同夏の甲子園では1学年上の中西聖輝(青学大-中日1位)とコンビで、21年ぶり3度目の全国制覇を遂げた。2年秋は県大会準決勝敗退。悔しさを糧に、3年夏は2年連続で夏の甲子園の土を踏みしめた。つまり、冬を制する者は夏を制す、を体現したのである。

後輩捕手にアドバイス


 現チームの正捕手は、1年秋からマスクをかぶる山田凜虎(2年)だ。渡部とは下級生から司令塔、という共通点がある。さかのぼれば、5季連続で甲子園に出場した東妻純平(DeNA)も下級生時代から扇の要を担ってきた。

 2018年秋から母校を指揮する中谷監督はNPB3球団で計15年プレー。現役時代の定位置だった捕手への注文は相当、厳しい。求めるプレーの質も、当然のように高い。東妻、渡部、山田とも主将の器はあるが、指揮官の配慮から副主将に据えた。中谷監督は1997年夏の甲子園で、同校初の全国制覇を遂げた当時の主将。強豪校を背負う重みを肌で知るだけに、少しでも負担を軽減させ、プレーに専念できる環境を整える「親心」を見せているのだ。

 渡部はグラウンドに戻るたび、後輩・山田に声をかけてきた。常日頃から連絡を取り合う仲であり、相談に乗っているという。

「自分の高校の時代よりも全然、良いキャッチャーです。具体的には守備が安定しています。 座っている雰囲気がいい捕手だと思います。キャッチャーはいつも怒られ役。そこでキャプテンの役職もあったら、なかなかこのチームでは、しんどいんですよ(苦笑)」

正月は箱根駅伝観戦も


来る日も来る日もブロッキングを練習した一塁側ブルペン付近で撮影。中谷監督の熱血指導が渡部の捕手としての基本としてある[写真=宮原和也]


 渡部には、原点の場所がある。グラウンドの一塁側ブルペン付近だ。ここで、たくさんの防具を装着し、ブロッキングの練習を気が遠くなるまでこなしたのが思い出だという。

「監督が怒っているときはもう、めちゃくちゃ速い球を投げられて……(苦笑)。高校在学中は本当に厳しかったです。逃げ出したい? そうですね。寮に帰っても監督がいたので、そこでも厳しい指導を受けて……。今思えばいい経験だったですけど、そのときはきつかったです。今となっては本当にお父さんのような感じで、優しいですね。リーグ戦中も何かあれば、連絡をさせてもらっています」

 渡部は青学大で1年春から不動のレギュラー。この秋の3年秋まで6シーズンすべて優勝で、リーグ6連覇の立役者の一人だ。全日本大学選手権連覇(2023、24年)、明治神宮大会連覇(24、25年)と、誰もが認める「勝てる捕手」。高校3年時もドラフト有力候補に挙がったが、「突出したものがない」と、2年冬の段階で大学進学の方針を固めた。中谷監督は高卒ドラフト1位でプロ入り後、多くの壁にぶち当たった。プロ在籍15年も、実働7年で通算111試合出場と、定位置をつかむことはできなかった。元プロとして、教え子には大学野球での鍛錬を勧めた。渡部は中谷監督の話に素直に耳を傾け、即決だったという。

 大学は野球だけでなく、キャンパスライフを通じ、人としての幅も身につけることができる。しっかり地力をつけてから、4年後に上位指名の評価を得てほしい、と。渡部はこの3年間、中谷監督が思い描いてきた以上の理想的なルートを歩んでいるという。

 中谷監督は渡部の訪問を楽しみにしていた。

「主将に就任し、立派になりました。しゃべる内容も大人になったというか、安藤(安藤寧則)監督(青学大)の下で成長させていただいているなと感じます。高校時代は岡西(岡西佑弥、早大3年)がいたので、キャプテンには据えるまでにはいかなかったんですけど、この3年間で、いろいろな重圧を乗り越えて、かなりレベルアップしているなと感じました。残り1年、ケガ無く、過ごしてほしいと思います」

 現役部員にとってはあこがれの卒業生を前にして、至福の時間となった。中谷監督は言う。

「夏に向けて、ウチはもちろん甲子園で勝てるチームを目指してハードな練習をやっているところです。渡部の存在は後輩たちにもすごく刺激になり、山田も順調にというか、伸びてきている。渡部の後継者となるようなキャッチャーになってほしいなと思います」

 渡部はこの日の母校訪問後、大阪に帰省し、束の間のオフを過ごす。青学大の年明けの練習始動日は1月4日。「少し、ゆっくりさせてもらいます。時間を見つけて、箱根駅伝もテレビ観戦したいと思います」。日ごろからともに相模原キャンパス内で活動している陸上競技部(長距離ブロック)から、戦う姿勢を学ぶ。

取材・文=岡本朋祐
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