村上が守った三塁の後継者
池山隆寛新監督が就任し、最下位からの巻き返しを図るヤクルトは変革期を迎えている。「四番・三塁」で長年チームの大黒柱だった
村上宗隆が今オフにポスティングシステムを利用し、ホワイトソックスに移籍。三塁の後継者が注目される中、最有力候補とみられるのがドラフト1位で入団した
松下歩叶(法大)だ。
村上のように生粋の長距離打者ではないが、総合力の高い大型内野手だ。三塁の守備能力はフットワークが軽く、送球が安定している。打撃もコンタクト能力と長打力を兼ね備え、東京六大学リーグ通算14本塁打を記録。2年秋から3季連続ベストナインに輝いている。大学日本代表でも実績十分で、3年時のハーレムベースボールウィークでは決勝で逆転2ラン。今夏の日米大学選手権で主将を務めて優勝に導き、MVPを受賞した。ヤクルトが背番号「6」を用意したことからも期待の大きさを物語っている。遊撃手と三塁手で計10度ゴールデン・グラブ賞に輝き、通算2133安打を放った
宮本慎也氏が背負った背番号で、「チームの顔になってほしい」というメッセージが込められている。
勝負強い打撃を見せた今岡

2005年には147打点をマークした今岡
松下の魅力は欠点がないことだろう。試合中に修正する能力が高く、打ち取られた球を次の打席できっちりヒットゾーンに飛ばす。大学日本代表で共にプレーし、大きな刺激を受けた
阪神ドラフト1位の立石正広(創価大)のように派手さがあるわけではないが、実戦向きの選手だ。そのプレースタイルが重なり、お手本になるのが阪神で活躍した
今岡誠だろう。
線が細いように見えるが、パンチ力がある点で2人は重なる。松下が六大学リーグ通算打率.293、14本塁打、51打点に対し、東洋大に進学した今岡は東都大学リーグ通算打率.299、12本塁打、73打点。リーグは違うが、大学時代に残した成績も似ている。今岡は天才肌の選手だった。ドラフト1位で阪神に入団すると、03年に打率.340で首位打者を獲得。12本塁打中7本が先頭打者アーチで得点圏打率.428と勝負強さが光り、18年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献した。
05年は全146試合出場で打率.279、29本塁打、147打点をマーク。球団新記録の打点を叩き出してタイトルを獲得した。走者を置いた場面で集中力が最大限に研ぎ澄まされ、驚異的なバットコントロールで難しい球をいとも簡単に安打にする。得点圏打率.371をマークし、満塁では25打数15安打で驚異の打率.600。4本の満塁アーチは歴代2位タイ記録だった。
随所に出るあきらめない気持ち
将来を嘱望される松下に求められるのも、勝負強い打撃だ。ヤクルトに1位指名され、大学ラストゲームとなった東大3回戦で、歴代17位タイの通算14号を放つなど6打数4安打4打点の大暴れ。三塁の守備でも三塁線を襲う鋭い打球をダイビングキャッチし、素早く起き上がると一塁に矢のような送球でアウトにするなど攻守が目立った。
試合を視察した余田雄飛担当スカウトは「1位にふさわしいプレーの連続でした。現状でも素晴らしいですが、伸びシロがある。スワローズに入団して、存分に暴れてほしいと思います。
青木宣親GM特別補佐の言葉ですが『プレーを見ていて“何とかしようという気持ち”とか“あきらめない気持ち”とかがすごく出ていた。それを野球を通して感じたので。人間的な部分がプレーに出る選手って、そうはいない』と。今年は法政大学で主将を務め『チーム・松下』としてけん引し、周りへのサポート役にも徹していたと聞いています。プロではまず、自分のことに集中してもらい、いずれはスワローズの中心選手として引っ張ってくれれば、と思います」とエールを送っている。
池山監督、
古田敦也、宮本慎也、青木宣親、
山田哲人、村上と「ミスター・スワローズ」の系譜が引き継がれてきた。松下も先輩たちの領域にたどりつくことができるか。三塁の定位置をつかんで試合に出続ければ、今年の
荘司宏太に続いて球団史上2度目の2年連続新人王を受賞する可能性が十分にある。
写真=BBM