センバツは当落線上の立場

横浜高の主将・小野は名門校のリーダーとしての自覚がみなぎっている
横浜高は12月26日、活動拠点の長浜グラウンドで年内最後の練習を行った。27日には全員で環境整備(大掃除)をして解散となった。
主将・小野舜友(2年)は2025年シーズンをこう振り返った。
「人生の中で最も濃かったというか、日本一を経験させてもらいましたし、専大松戸に甲子園をかけた一戦で負け、当確ランプを灯せなかったという地獄も見ました」
横浜高は今春のセンバツ甲子園で19年ぶり4度目の優勝。小野は五番・一塁として、紫紺の大優勝旗の奪取に貢献した。夏の甲子園は8強進出。秋の新チームでは横浜高・村田浩明監督から新主将に指名された。
「キャプテンに任命していただいたときには、素直に頑張ろう、と。横浜高校に入学してから、それぐらいの覚悟でずっとやっていました」
今秋は専大松戸高との関東大会準々決勝で敗退。来春のセンバツ甲子園の関東・東京の一般選考枠は「6」。関東4枠、東京1枠が基数であり、この一戦を制していれば、2年連続選出に大きく近づけたが、現状は当落線上の立場にある。
小野世代が束となって

関東大会準々決勝敗退以降、バットを振り込んでおり、主将・小野の手はマメだらけだ。猛練習を姿勢で示す
冬場のテーマは「練習の質と量」。今夏の甲子園後は十分な準備期間がないまま、秋の公式戦を迎えた。関東大会敗退後は足場を見つめ直し、一から基礎練習に励んでいる。打線強化もテーマの一つであり、バットを振り込んできた。小野の手はマメだらけ。うまくいかないことのほうが多い。村田監督は「小野は主将として相当、苦しんでいるはず」と明かす。
「自分がチームを作り上げる。作り上げないといけない立場だと思うので、それはキャプテンとしての使命です。選手を導いていかないといけないポジションを任されているので、いい形で噛み合えば、本当にいいチームをつくれると思っています。甲子園で通用する集団へと、成長していきたいと思っています」
旧チームの主将は阿部葉太(早大進学)だった。超異例の2年生5月から名門校をけん引、高校日本代表でも主将を託されたキャプテンシーがあった。
「阿部さんと比較されることもありますし、前の世代はこうだったとかも言われるんですけど、自分の中ではまったく関係ないと思っています。阿部さんたちが残したいい伝統は自分たちの代にしっかりと受け継いでやらないといけないと思いますし、逆に自分たちの代で、さらによくしていこうと思っています。阿部さんたちの代はすごくいい循環ができており、見習いたいとは思いますが、同じことをしても、そもそもメンバーが違います。個々のそれぞれのやるべきことを明確にしながら、自分たちの世代として、新たな挑戦をして、突き詰めていけたらと思っています」
活動拠点・長浜グラウンドの三塁ベンチのホワイトボードには「小野世代 0歩目からのスタート」と書かれている。その意図を横浜高・村田浩明監督は明かす。
「阿部世代からは、学びしかなかったですね。結果もうれしかったですけど、勝っていかないと学べないものがあるんです。やはり、印象的だったのは、この夏の平塚学園高との神奈川大会準々決勝(9回裏逆転サヨナラ)。ビハインドからでも、負けないチームを作ると、ああいう形になるんだと。それまでは『勝ちたい、勝ちたい』だったので、 勝つために必要なことばっかりを求めていたんですけど、全然、うまくいかなくて……。逆の発想で、本当のチームづくりを学ばせてもらいました」
さらに、続ける。
「私も『横浜高校の継承』と言ってやってきましたけど、渡辺(元智)監督、小倉(清一郎)コーチの野球をお手本とし、同じことをやっていても継承に結びつかなくて……。自分なりに思い切って変えたときに継承し始めたと言いますか、結果が出始めたんです。新チーム結成以降、グラウンド内にあるラミネートにも『小野世代』と全部書いているんですよ。阿部世代は夏で終わっていますので、小野、小野、小野としていかないといけない。本人も理解しています」
各ポジションにバランスよく152キロエース・織田翔希(2年)ら副将7人を置き、主将・小野をバックアップ。「小野世代」が束となって戦う集団を目指している。
「最高の仲間、メンバーに恵まれているので、そのメンバーたちと日本一を目指す。あとはやはり、村田監督を『日本一の男』にもう一度したい。甲子園が一番似合うと思うんです。日々、厳しいことばかりですけど、絶対に乗り越えて、自分たちの代で、絶対にあの場所で、仲間たちと胴上げしたいです」
目標がその日その日を支配する

2015年夏まで母校・横浜高を指揮した渡辺監督が長浜グラウンドへ激励に訪れた
横浜高は26年1月30日の選抜選考委員会を待つ身だが、25年の練習最終日に名将が激励に訪れ、パワーをもらった。甲子園で春3度、夏2度の優勝へ導き、15年夏限りで勇退した渡辺元智元監督が長浜グラウンドで約3分、現役部員の前で話をした。
「(センバツという)望みがある以上、目標に向かってやらなきゃいけない。仮に望みがなくても、皆には『甲子園優勝』という最終目標がある。毎年、言っているが、各自が帰省するシーズンオフは、自分一人の時間になるわけだが、そこをどうやって取り組んでいくのか。正月は体を休めるのか、それとも体を動かすのか。それはもう、皆に託された個人の課題。体調管理には十分に注意して、新年、元気な顔でまた皆で集まれるようにしましょう」
渡辺元監督の座右の銘である「目標がその日その日を支配する」を再認識する場となった。
神奈川6連覇が目標

甲子園通算51勝の名将・渡辺元監督[左]は「人が人を動かす。愛情がないと人は動かない。言葉の野球を教えないといけない」と指導者生活を貫いてきた。村田監督[右]は恩師から多くを学んでいる
主将・小野は26年への決意を語った。
「仮に(センバツに)選んでいただけた際は、もちろん優勝しなければまったく意味がないと思っていますし、戦える準備をしていきたいです。そして、夏はすべての集大成。2026年は本当に自分たちにとって高校野球のラストイヤーです。今秋までに神奈川で4連覇しているので、春・夏と6連覇して、必ず甲子園に出場し、優勝したいと思います」
心身とも成長を遂げた1年。年内最終日の長浜グラウンドは、キビキビとした部員たちの声が響き渡っていた。心は一つになっている。
取材・文=岡本朋祐 写真=BBM