一歩ずつ前に進む右腕

プロに入って2年、まだ実戦登板がない下村
来年は甲子園のマウンドで勇姿が見られるか。ドラフト1位で入団して2年。右肘のトミー・ジョン手術からの復帰を目指しているのが、
阪神の
下村海翔だ。
新人だった昨年4月に手術を受け、リハビリから地道に取り組んできた。今年8月17日に入団後初のシート打撃登板を果たして最速153キロを計測。順調に階段を上っているかに見えたが、1週間後に2度目のシート打撃に登板後は再びペースダウン。実戦復帰はお預けとなった。
入団以来一、二軍で登板がない。同期入団の
武内夏暉(
西武)が1年目に2ケタ勝利をマークして新人王を受賞するなどプロの舞台で活躍している姿を見ると、精神的につらいかもしれないが、焦りは禁物だ。万全のコンディションを取り戻すことに集中して、一歩ずつ進むしかない。
『なんでだろう』と思う日々

トミー・ジョン手術から復活を果たし、23年から3年連続2ケタ勝利の山崎
巨人のエースに成長した
山崎伊織も故障から復活した右腕だ。東海大の4年時に右肘のトミー・ジョン手術を受けたが、将来の投手陣を担う逸材としてドラフト2位で指名された。プロ1年目はリハビリに打ち込み、2年目の2022年に一軍デビュー。20試合登板で5勝5敗、防御率3.14と頭角を現すと、23年以降は3年連続2ケタ勝利と先発陣の大黒柱として稼働している。
山崎は手術を受けて実戦復帰までの道のりを、週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っている。
「手術を受けてからはとにかく『投げられるようになりたい』という一心でリハビリに取り組むことができたんですけど、いざ投げられるようになったときのほうが難しかったですね。投げたら痛みが出るというのは賢慎(
堀田賢慎)から聞いていたので覚悟はしていたんですけど、投げ始めてみたら全然思うようにいかなくて。どうしても昔の自分と比べてしまう。全然思ったようなボールが投げられない。『なんでだろう』と思う日々が本当にしんどかったです。
「(トミー・ジョン手術を受けてともに復帰を目指した)賢慎は1人で黙々と取り組むことができるピッチャーなので、『賢慎がやっているから自分もやろう』というのはリハビリ期間中もずっと思っていました。桑田さん(
桑田真澄元一軍投手チーフコーチ)も月に何回かジャイアンツ球場に来ていただいて、いろいろな話をしていただきました。何回も言われたのが『焦るなよ』ということ。リハビリをしているときは必死で自分でも気づかなかったのですが、今振り返ると焦る気持ちはすごくあったと思います。そこで声を掛けていただくことで楽になる部分もありました。オフシーズンも細かく投げるプランを組んでいただいたので、すごくありがたかったですね」
本人にとって大きな励み
阪神では
高橋遥人、
才木浩人がトミー・ジョン手術を受け、見事な復活劇を果たしている。下村は高橋、才木と違って一軍での実績がないが、青山学院大で大学球界を代表する投手として活躍を見せて潜在能力を高く評価されている。
藤川球児監督の期待も大きい。11月下旬にららぽーと甲子園で行われた「阪神タイガース優勝西宮市民報告会」に参加した際、「西宮出身の佐藤(
佐藤輝明)もいますけど、今ファームのほうでは下村が西宮出身で頑張っています」と名指しで言及したことが報じられた。本人にとっては大きな励みになるだろう。
下村の自宅から甲子園は自転車で行ける距離で、子どものころから阪神戦を観戦していた。
金本知憲のファンで当時の選手たちの応援歌もよく覚えている。ドラフト1位で入団した際、「今まではずっと観客席だったので、あの甲子園のマウンドで投げられるのは楽しみですね」と声を弾ませていた。プロ入りしてから2年間の経験は決して無駄にはならない。少し時間が掛かるかもしれないが、一軍のマウンドで活躍することが指揮官、支えてくれたトレーナー、応援してくれたファンへの恩返しになる。
写真=BBM