熾烈なポジション争い

中大からドラフト4位で巨人に入団した皆川
巨人で今季の定位置が確定していると言えるのは、遊撃の
泉口友汰だけだ。不動のレギュラーとして長年活躍してきた
岡本和真はメジャー挑戦を決断し、正二塁手の
吉川尚輝も左右の股関節の手術を受けてリハビリスタートのため、開幕一軍に間に合うか不透明な状況になっている。
各ポジションで熾烈な競争が繰り広げられることは、若手にとってチャンスと言える。昨秋のドラフトで4位指名された皆川岳飛もその一人だ。広角に安打を飛ばす打撃技術に定評があり、東都リーグで4年春に打率.366をマークすると、秋に打率.447で首位打者を獲得した。他球団のスカウトは「バットコントロールがうまい中距離打者ですね。空振りが少なく、打撃が柔らかい。
小園海斗(
広島)と重なります」と評する。
皆川の魅力は打撃だけではない。前橋育英高では投手で最速147キロを計測するなど肩の強さに定評があり、外野の守備範囲が広い。巨人の外野陣を見ると、守備力が課題の選手が意外に多い。春季キャンプ、オープン戦で攻守にアピールすれば、現役時代の
阿部慎之助監督以来、25年ぶりとなる大卒新人野手の開幕スタメンが見えてくる。
3学年上には阪神入団の森下
中大では3学年上に
森下翔太(
阪神)がいた。憧れの存在がプロの舞台で活躍している姿は大きな刺激になっている。阪神は
浅野翔吾(巨人)をドラフト1位で指名したが抽選で当たりクジと縁がなかったため、「外れ1位」で森下を指名した経緯がある。当時阪神の
岡田彰布監督は週刊ベースボールのコラムで、以下のように振り返っている。
「そらドラフトは重要よ。ホンマに大事な補強になるわな。オレが阪神の監督に復帰した2022年の末。監督初仕事になったのがドラフト会議やった。注目は高松商高の浅野(浅野翔吾)で、巨人が早々と1位指名を公表。阪神は……というと、公表はしないが浅野1位で決まっていた。オレはそらスカウト任せよ。ただチームとして打てる右のバッターが欲しいというのがあった。もし浅野を外したらどうする? そこで得た結論が『中大の森下(森下翔太)』やった。スカウトはまったくブレずにいたし、そこはスカウトに任せるしかない。そのために1年間、スカウトは情報収集に努めてきたのやからね。ドラフトはスカウトの腕の見せ所。その晴れの舞台よ」
「結局、巨人は浅野、阪神は森下ということになったんやけど、これがどうチームに影響したか。森下はチームの日本一に大きく貢献。3年目の今シーズンも首位快走の原動力になっている。もちろん浅野は将来性十分の選手やし、これから先が楽しみでしかないけど、現時点においてはあのドラフトは阪神に優位に運んだ……ということなんよね。こういうこともドラフトの物語やし、球団としてもそれを受け入れるしかない。それもこれも、先に書いたようにスカウトを信頼し、明確なドラフトのビジョンに沿って進めていく。これが球団として大事な方針やと思うよね」
期待のホープが多いドラフト4位
巨人のドラフト4位は期待のホープが多い。昨年ブレークした泉口を筆頭に、新人のシーズンで活躍した
門脇誠、先発ローテーションで一本立ちが期待される左腕の
井上温大、
横川凱がいる。他球団では現役時代に広島、阪神で主軸を務めて1492連続試合フルイニング出場の世界記録を樹立し、2539安打、476本塁打と球史に残る強打者として活躍した
金本知憲が東北福祉大からドラフト4位で広島に入団。首位打者を3度獲得し、日米通算2730安打を記録した
青木宣親(現
ヤクルトGM)も早大からドラフト4位で入団し、安打製造機として大ブレークした。
今秋のドラフトでは、大学No.1スラッガーの阪神・立石正広(創価大)、卓越した打撃センスに定評がある
西武・小島大河(明大)、
DeNA・小田康一郎(青学大)、ヤクルトで三塁を守ってきた
村上宗隆(ホワイトソックス)の後継者として期待される
松下歩叶(法大)、身体能力の高いスイッチヒッターの広島・平川
蓮(仙台大)と5人の大学生野手がドラフト1位指名されたが、プロは実力がすべての世界だ。皆川は自身の力を信じ、サクセスストーリーを切り拓く。
写真=BBM