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【大学野球】なぜ、明大の卒業生は御大・島岡吉郎元監督を慕うのか

 

優勝の瞬間にまさかの行動


明大野球部のレジェンドOBがトークセッションを行った。左から武田一浩氏、土井淳氏、高田繁氏、広澤克実氏[写真=BBM]


 明大は1月12日、東京都千代田区の同大学駿河台キャンパス内で優勝祝賀会を開催した。結成100周年の昨秋、東京六大学リーグ戦で1996年秋以来、29年ぶり2度目の10戦全勝優勝(リーグ史上6度目)。この日は大学・球界関係者、卒業生など約400人が出席した。

 東京六大学野球連盟は昨年、結成100周年。記念イベントとして開催されたレジェンド始球式(加盟6校から各5人)に登場した明大OB4人が登壇した。明大野球部卒業生のお決まりの話題は、御大のエピソードである。

 御大(おんたい)とは、母校・明大の野球部を計37年率いた島岡吉郎元監督だ。

 駿台倶楽部・土井淳前会長は92歳。レジェンド始球式を務めた30人で最年長で、この日も元気な姿を見せた。始球式の感想は「ホームが遠かったですねえ(苦笑)」。土井氏は島岡監督が就任した1952年に入学。岡山東高、明大、大洋を通じて秋山登と計18年、バッテリーを組んだ名捕手だった。秋山氏との思い出を明かす。

「キャッチャーをやっていて、彼が私のサインに首を振ったことはありませんでした。長年、プレーしているとお互い、バッターのクセが自然と分かるものです。そこで私は、ノーサインで、自分の投げたいボールを投げてくれ、と。どんな球種が来てもいいように、構え、捕球できる準備をしていました。腕の位置が低いので、ストレートもナチュラルに変化するので、キャッチングで苦労したのも良き思い出です」

 53年秋。明大は先に全日程を終えており、最終週・早慶戦の結果待ちだった。神宮球場に試合を見学に行く出発前、島岡監督はメンバーを集めて、こう告げたというが……。

「早慶戦で優勝が決まっても『絶対に、騒ぐな。みっともないから静かにしておけ』と。実際に優勝が決まっても、私たちは喜ばずにいたんです。ところが、一人だけ万歳をしている。それが、島岡監督だったわけです(苦笑)。戦後初優勝。御大にとっても初の天皇杯。優勝パレード、提灯行列は忘れられないです」

キャプテンの重圧


 高田繁氏(80歳、元巨人)は東京六大学歴代2位の127安打を放ち、1年秋から4年秋まで7季連続ベストナインを受賞している。

「プロ野球は個人成績が大事になりますが、学生野球はあくまでもチームが勝たないと意味がない。ただ、7季連続は1年からレギュラーで、積み重ねていかないといけないわけで、大変かと思います。ただ、大学在学中、1度も優勝することができず、いつもこうした場に来ると、本当に肩身が狭いんです(苦笑)。4年時は主将を務めましたが、明治の歴代キャプテンは最終学年で成績を落とす傾向にありました。それは、なぜかと言えば、島岡さんのプレッシャーがものすごかったからです。4年間、御大に優勝という形で恩返しできなかったのは心残りではあります」

 広澤克実氏(63歳、元ヤクルトほか)は歴代8位タイの通算18本塁打を放っている。長距離砲として、打撃開眼のきっかけは、御大からの助言が大きかったという。

「ずっと、ユニフォームを着ていろ、と。何を言っているんだと思いましたよ(苦笑)。練習以外、寮で過ごしているとき、寝るときも、着続けていました。バットを抱えて布団に入ることもありました。御大が何を訴えたかったのかと言えば、ずっと野球のことを考え、野球と向き合えということ。すると、ある時期、コツをつかんだんです。今の時代は効率性を求めがちですが、伸び悩んでいる選手は一つのヒントになるかもしれません」

 広澤氏の3学年後輩の武田一浩氏(60歳、元日本ハムほか)は六大学通算20勝を挙げ、明大のエースとしてリーグ優勝に貢献した。武田氏は制球力抜群。その極意を披露した。

「目で投げるんじゃなくて、体で投げる。フォームで投げるんですよね。目で投げると顔が浮いてくるので、手が遅れるので、そのあたりは注意しながら投げていました」

 最後に土井氏は昨秋、後輩たちが29年ぶりの10戦全勝優勝を遂げた偉業に対して「良い思いをさせてもらいました。明治は(1910年から)創部116年。東京六大学200年に向かって、ますます発展することを願っています」と語った。大学時代の経験は、人生の財産だ。世代を越えても「明治大学野球部」という共通項で話題が尽きることはない。現役学生にとっても、大先輩からのエピソードの数々は参考になったはずである。

取材・文=岡本朋祐
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