シーズン途中に巨人へ

シーズン途中に巨人へ移籍した昨季は、自己最多の11本塁打を放ったリチャード
今年は真の覚醒へ――。巨人のリチャードは野球人生をかけた大事なシーズンになる。
ソフトバンクでは2020年から24年までウエスタン・リーグで5年連続本塁打王。長距離砲として稀有な才能は誰もが認めていたが、一軍でなかなか結果に結びつかなかった。昨年5月12日に
秋広優人、
大江竜聖との交換トレードで巨人に移籍。即スタメンで起用されたが、打率が1割を切り、ベンチのサインを見逃すボーンヘッドもあった。6月13日にファーム降格となった。リチャードは週刊ベースボールの取材で苦しい胸の内を明かしていた。
「毎年、6月18日の誕生日が過ぎたあたりからですかね、ポンポンと調子が上がってくることが多いです。春先は毎年のように大きなスランプみたいなのがありますが、自分の中ではいつも夏からシーズン終盤にかけて打てるイメージがあります。ただ、今年はまだ上がってきているとは言えません。6月末からは二軍戦で(死球を挟んで)11打席連続三振したりして。苦痛でしたね。チャンスで打てないし、三振するし、打点も稼げないし……つらかったです」
ターニングポイントとなった試合

昨年7月21日の阪神戦で放った同点3ランが自身にとって大きかった
7月8日に一軍昇格。置かれた立場を考えると、即座に結果を出さなければいけなかった。その中で、球宴前の最後の試合となった同月21日の阪神戦(東京ドーム)がターニングポイントに。7回にニック・ネルソンの低めのチェンジアップを左中間に運ぶ同点3ラン。ソフトバンク時代を含めて右投手から初めて放った本塁打だった。「体勢を崩されながら打つことができたので価値があったな、と。阿部(
阿部慎之助)監督と、タイミングを外されても打つためにいろいろな練習をしてきた中で、あのときはとっさに練習していたような打ち方ができました。印象深いホームランでしたね」と振り返る。
後半戦に入ると、打撃に成長の跡が見られた。ボール球を見極められるようになり、際どい球はファウルで粘る。走者を置いた好機ではコンタクトを重視した打撃でヒットゾーンに飛ばす打席が増えた。9月は月間打率.272、3本塁打、12打点。スタメンに定着したことで、リズムをつかんだ部分があるだろう。移籍後は77試合出場で打率.211、自己最多の11本塁打をマークした。喜怒哀楽を前面に出すプレースタイルで、ファンにも愛されている。
トレードのメリット
現役時代にNPB歴代最多の通算3085安打をマークした
張本勲氏は、
日本ハムから巨人、巨人から
ロッテと2度のトレードを経験している。23年11月に週刊ベースボールのコラムで、トレードのメリットを強調している。
「私の現役時代、トレードと言うと、どうしてもマイナスのイメージが大きかった。球団にたてついたり、文句ばかり言ったり、チームの輪を乱したりと、『厄介払い』の側面が強かった。だからトレードを告げられた選手も『チームを出された』という気持ちになったと思うが、今はそうではない。トレードをプラスにとらえる選手が多く、むしろ求められた新天地のほうがチャンスが増えると前向きだ。そもそもトレードというのは本来、そういうものだ。お互いのチームが戦力の穴を埋め合うための交換なのだから、そこに感情が入る余地などないのだ」
「縁あって入団した球団一筋で現役生活を終えるのは素晴らしいことだが、大切なのはプロとして活躍できるかどうかだ。私も日本ハムのままだったら指名打者に専念させられ、数年後に引退していただろう。その意味では巨人へのトレードは大正解だった。このオフにも少なからずトレードは成立すると思うが、選手にとっては大きなチャンス。飛躍のきっかけにつなげてもらいたい」
リチャードの魅力は長打力だ。確実性を磨く必要は当然あるが、「甘く入ればスタンドに叩き込まれる」と相手バッテリーに恐怖心を抱かせる打者はなかなかいない。今オフは不動の四番として活躍してきた
岡本和真がポスティングシステムでブルージェイズに移籍した。主砲の穴は1人の選手で埋められるものではないが、本塁打を量産することがチームに大きなプラスアルファをもたらす。
ただ、定位置を確約されているわけではない。一、三塁が主戦場だが、守備位置が重なるメジャー通算47本塁打のボビー・ダルベックが加入。昨年は打撃不振に苦しんだベテランの
坂本勇人、高卒2年目の石塚裕惺、大卒2年目の荒巻悠もライバルとなる。熾烈な競争を勝ち抜き、大ブレークを目指す。
写真=BBM