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【大学野球】なぜ、東京六大学のカレッジソングは卒業生の活力になるのか

 

学生当時に戻れる時間


1992年から95年まで東京六大学でともに時間を過ごした同級生が同窓会を開催。立大の主将・広池氏(右)、早大の正捕手・荒井氏(左)らは旧交を温めた[写真=BBM]


 平成8年卒東京六大学野球部・応援団合同同窓会が1月17日、神奈川県横浜市内で開催された。1995年に最上級生だった各校の野球部、応援団・応援部・應援指導部からOB・OG約50人が出席した。卒業から30年の節目として、昨年1月19日に初めて同級生が集結し、今年が2回目。前回の会場は東京都内のホテルだったが、今回は慶大が幹事校であり、同大学の日吉キャンパス内で行われた。

 今回、初参加した早大OB・荒井修光さん(元日本ハム、現同球団職員)は感想を語った。

「大学卒業から30年以上が経過し、こうして皆で集まることができ、感謝しかありません。神宮球場で4年間、母校の伝統と誇りを胸にプレーしたメンバーとの再会、本当にありがたい機会でした。『久しぶり!!』の次には、すぐに学生当時に戻れる。幸せな時間でした」

 荒井さんは1991年夏、我孫子高(千葉)の右腕エースとして甲子園に出場し、2勝を挙げた。早大では1年時から背番号16を着け、登板機会に恵まれ、リーグ戦でも勝利を重ねている。ところが、2年春を前に突然、当時の石井連藏監督から「捕手転向」を言い渡された。

「高校時代に少しだけマスクをかぶったことはありますが、ほぼ未経験。なぜ、コンバートされたのか……。聞くことができないまま、石井さんは亡くなられてしまったんです。それが数年前、先輩を通じて確認できたんです」

 1960年秋の早慶6連戦で正捕手だった野村徹氏(元早大監督)のほか、野球部OB3人が3日間、東伏見グラウンド(現・安部球場)で練習を視察。3日後、石井監督は卒業生3人に対して「捕手に適性のある学生は誰か?」と問いかけると、3人全員が「荒井」と答えた。荒井さんは練習で投手のほか、遊撃手も守るなど潜在能力が高く、捕手としての資質を認められたという。

 2年春から早大の正捕手を意味する伝統の背番号6が託された。リーグ戦で実績のない選手に与えられるのは、超異例の抜てきである。

「早稲田の6は重みのある番号です。プレッシャーはありましたが、一度、いただいた以上は卒業まで手放すことはできない。自分にあえて重圧をかけていた部分はあります」

 2年春。うまくいかないことばかりだった。目の前のことで必死。結果を残せなければ、2学年上の主将・仁志敏久(元巨人ほか)からは「お前のせいで負けた」と厳しい言葉を投げかけられたこともあった。「悔しくて、涙を流したこともある」。しかし、へこたれるわけにはいかない。屈辱をバネに、必死に食らいつき、鍛錬を重ね、2年秋にはリーグ優勝を遂げた。「仁志さんから『よくやってくれた』との言葉をいただき、もう、涙が止まりませんでした」。4年秋まで背番号6を死守し、日本ハムからドラフト2位指名(逆指名)。プロで8年プレーした。「捕手に転向していなければ、いまの自分はない。石井さんに感謝しています」。

共存共栄の伝統


同窓会の後半は6校の校歌・応援歌を披露。立大は体育会応援団OBリーダーの下で「行け立教健児」を歌った。広池氏は後列左から2人目 [写真=BBM]


 立大の主将を務めた広池浩司さん(西武球団本部長)は「荒井は自分たちの代で言えば、甲子園のヒーローです。野球センスの塊でした。急にコンバートされても普通にこなしていたんですからね。良いキャッチャーがいるチームが強い。大学時代はやれられたイメージしかないです(苦笑)」と振り返った。

 広池さんは現在、編成部門のトップとしてチーム強化に尽力している。ときに仕事で壁にぶつかると、ある行動を起こすという。

「落ち込んでいるとき、車のBGMは東京六大学応援のCDを流しているんです。各校の校歌・塾歌、応援歌を聞くと、嫌なことも忘れる。次へと向かう気分転換になっています。在学当時は外野手でしたから、守りのときは、俯瞰しながら、対戦校の応援を聞いていたものです。昨年もこの同窓会に参加させていただきましたが、会の後半で6校が校歌・応援歌を披露する場がある。やはり、東京六大学リーグ戦は、野球と応援は一心同体。今年も立教を含めた6校のパフォーマンスを楽しませていただきました。明日への活力になる」

 広池さんは立教のパートでは、壇上に上がって応援歌『行け立教健児』を、かつての仲間と肩を組んで、声高らかに歌っていた。

 6校によるリレーは最後、幹事校・慶大の応援歌『若き血』で締められた。カレッジソングを、大学の枠を越えて、出席者全員が歌う。「共存共栄」の伝統を感じる時間だった。27年の当番校は明大であり、31年前に主将を務めた守谷武士さん(国士舘高)が閉会あいさつ。次年度へと六大学の「絆」がつながれた。

取材・文=岡本朋祐
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