「まだまだ先がある」

今季で20年目を迎える坂本。まだまだチームに欠かせない存在だ
球史に残るスーパースターが、野球人生の岐路を迎えている。
巨人の
坂本勇人だ。
昨年は春先から打撃の状態が上がらず、2度のファーム降格を経験。後半はスタメン出場が減少し、主に代打での出場だった。62試合出場で打率.208、3本塁打、22打点。レギュラーに定着した2008年以降でキャリアワーストの数字だった。
高卒2年目から球界を代表する遊撃手として長年活躍し、20年に通算2000安打を達成。31歳10カ月での記録達成は
榎本喜八の31歳7カ月に次ぐ史上2番目の速さだった。コロナ禍の短縮シーズンで115試合に出場して打率.289、19本塁打、65打点を記録したが、NPB史上最多の通算3085安打を達成した
張本勲氏は期待が大きいからこそ、叱咤激励の言葉を週刊ベースボールのコラムで送っていた。
「巨人では坂本勇人と
丸佳浩の2人に注目している。優勝できたからいいようなものの、もしV逸となっていれば戦犯になっていた2人だ。それだけ前半戦の不振はひどいものだった。終盤に入ってようやく2人とも調子を上げてきたが、私に言わせれば遅過ぎる。それを帳尻合わせと言うのだ。マスコミもマスコミだ。優勝の立役者のように報じているが、シーズンを通して働いたのは誰かをしっかりと見極めるべきだろう。坂本と丸は並の成績では困るのだ。それは2人の年俸を見れば分かるはずだ。だから年俸に見合った働きをするべく、日本シリーズではシーズンの分まで頑張らなければならないということだ」
「最後に坂本が2000安打を打ったようだが、それで喜んでいるようでは話にならない。坂本にはまだまだ先がある。2000なんてただの通過点に過ぎない。2500、3000と積み上げていき、やがては私の記録(3085)も抜いてほしいと願っている。満足してしまったらそこで終わり、成長はないと坂本には言っておきたい」
「何がなんでも活躍できるように」
坂本の凄味はシーズンのトータルできっちり結果を残し続けることだ。打撃不振の時期があってもその後に取り返す。だが、その能力に陰りが見え始めたのが、長年守った遊撃から三塁にコンバートした24年だった。守備の負担が軽減されることで打撃への集中力が高まることが期待されたが、状態が一向に上がってこない。6月下旬に登録抹消に。成績不振によるファーム降格は新人の07年以来17年ぶりだった。2週間後に再昇格したが好調の時期が長続きしない。109試合出場で打率.238、7本塁打、34打点。三塁で自身初のゴールデン・グラブ賞を受賞してチームもリーグ優勝したが、心から喜べなかっただろう。
昨年は復活を期したシーズンだったが、さらに下降線に入る結果に。このままでは終われない。三塁を守る
岡本和真がメジャー挑戦でブルージェイズに移籍し、「和真が抜けて、僕はチャンスが出てきている。レギュラーでもう1回、長い時間グラウンドにいられるように。何がなんでも活躍できるように。それだけ」と闘志を燃やしている。
野球人生をかけた1年
定位置争いは熾烈だ。昨年のシーズン途中にトレード移籍して自己最多の11本塁打をマークした
リチャード、ミート能力と長打力を兼ね備えた荒巻悠、高卒2年目のホープ・石塚裕惺がライバルとなる。実力がすべての世界で、実績十分の坂本も例外ではない。オープン戦から打撃で復調をアピールし、首脳陣の信頼を取り戻す必要がある。
通算2447安打まで積み上げたが、張本氏の期待に応えるためにはレギュラーを再奪取して輝きを取り戻さなければいけない。昨年6月に
長嶋茂雄終身名誉監督が逝去した際に、「『お前はいつまでもジャイアンツのリーダーでいなきゃいけない』と言っていただいたことが心に残っています」と語っていた。
まだまだ若手には負けられない。37歳の野球人生をかけた1年が始まった。
写真=BBM