配球を読む力を生かした打撃

昨年は捕手としてだけでなく、打撃でも存在感を発揮した岸田
巨人のV奪回のキーマンになることは間違いない。正捕手に最も近い
岸田行倫だ。
昨年は87試合出場で打率.293、8本塁打、39打点をマーク。得点圏打率.359と勝負強さが光り、8月下旬から第96代四番打者を務めた。他球団のスコアラーは「去年で言えば、巨人打線で最も厄介な打者でしたね。150キロ以上の直球をきっちりはじき返すし、変化球にもコンタクト能力が高い。逆方向に軽打で安打を打てるし、甘く入ればスタンドに運ぶパンチ力がある。捕手で配球を読む力も鋭いので、打ち取るのが難しい打者です」と警戒を口にする。
守備面でもリーグ2位の盗塁阻止率.419を記録。ブロッキング技術、配球に磨きをかけて積極的に声を掛ける姿が見られた。投手陣の信頼は厚い。5月17日の
中日戦(東京ドーム)でバッテリーを組んだ
フォスター・グリフィンが7回を無四球3安打無失点の快投で勝利に導くと、お立ち台で「本当は岸田もここにのぼってもらいたいくらい、打者に的を絞らせないリードをしてくれた」と絶賛した。
定位置を奪い取った姿勢は大きな価値がある。2024年にチームトップの72試合で先発マスクをかぶったが、オフに
ソフトバンクから
甲斐拓也がFA移籍。常勝軍団の扇の要として活躍し、侍ジャパンの常連でもある名捕手は強力なライバルだ。昨年は甲斐が開幕からマスクをかぶり、岸田はベンチで戦況を見守る時期が続いた。だが、「最初から控えでいいなんて思ってないですよ。だからこそ、いつ出番が来ても、そこで自分の力を出せるように。それこそ“我慢強く”ですね」と気持ちが切れることはなかった。先発マスクの機会が巡ってくると攻守で高いパフォーマンスを発揮し、試合に出場する機会が増えていった。甲斐が8月下旬に「右中指中手骨頭骨折」で戦線離脱した影響もあり、正捕手争いの序列をひっくり返した。
首脳陣も働きぶりを評価
首脳陣は岸田の働きぶりを高く評価している。
村田善則一軍バッテリーチーフコーチは現役時代の00年に自己最多の76試合に出場したが、翌年はドラフト1位で入団した
阿部慎之助監督の活躍で出場数が激減した経験がある。
週刊ベースボールの取材で、「俺も経験があるけど、いつ出番が来るか分からない中で、パって出たときに勝てなかったりすると『あ、やっぱり』って言われるのが絶対イヤ。岸田も絶対に『出たら全部勝つ』っていう気持ちでいるはずだから。いつ来るか分からない中での準備は結構大変なんだけど、来たときに絶対そう思われたくないっていう気持ちはあると思うから、そこのモチベーションをしっかり保っていると思う」と出場機会が少なかった春先から最善の準備を尽くす姿勢を認めていた。
實松一成一軍バッテリーコーチも「練習でも試合に出たい、負けたくないっていう気持ちがすごく伝わってくる。試合に出てなくてもミーティングで発言もあるし、準備はできている」と目を細めていた。
持ち味は総合力の高さ
巨人だけにとどまらず、侍ジャパンでも活躍が光った。昨年11月に開催された韓国代表との強化試合で同点の5回無死一、二塁の好機に代打で登場すると、左中間に勝ち越し3ラン。この一撃が決勝打となった。今年3月に開催されるWBCで侍ジャパンのメンバーは
坂本誠志郎(
阪神)、
若月健矢(
オリックス)が選出されている。
井端弘和監督は捕手について3枠の考えを示しており、残りの1人は岸田か前回大会に出場している
中村悠平(
ヤクルト)のどちらかが選ばれる公算が高い。
岸田の持ち味は総合力の高さだ。WBCの大舞台で活躍する姿を見たいが、巨人でも攻守の軸として期待値が高い。意外なことにプロ8年間で規定打席に到達したシーズンがない。相手球団やバッテリーを組む投手との相性を配慮して複数の捕手を起用するのが球界のトレンドになっているため試合に出続けるハードルは高いが、今年は不動の正捕手を目指す。
写真=BBM