満身創痍の状態でも奮闘

開幕一軍に間に合うかは不透明だが、巨人に吉川の力が必要なのは言うまでもない
WBCに出場する侍ジャパンのメンバーが29選手発表された。巨人からは
大勢が選出されたほか、昨年まで巨人でプレーし、オフにポスティングシステムでブルージェイズに移籍した
岡本和真の出場が決まったが、コンディションが万全だったらこの選手も選ばれていたかもしれない。巨人の攻守の要・
吉川尚輝だ。
昨年は岡本が「左肘の靭帯損傷」で長期離脱した際に四番を務めるなど奮闘。107試合で打率.277、3本塁打、32打点をマークした。責任感の強い男は満身創痍の状態でも試合に出続けた。7月31日に腰痛で登録抹消されて3週間後に復帰したが、9月14日に右脇腹痛で再び離脱。懸命のリハビリによりフリー打撃で快音を連発するまでに回復すると、
DeNAと対戦したCSファーストステージで復帰した。2戦目の初回に中前打、3回に右前打を放つと、同点の延長11回に一度は勝ち越しにつながる犠打を決めたが、その裏に逆転サヨナラ負け。非情な結末で終戦を迎えた。
替えの利かない存在
戦いが終わると、「両側関節鏡視下股関節唇形成術」という両股関節の手術を受けた。新シーズンに向けてリハビリからスタートし、現時点で開幕に間に合うか不透明だが焦りは禁物だ。吉川の力は長丁場のシーズンで必要になる。「巨人史上最強の助っ人」と称される
ウォーレン・クロマティ氏は、吉川が替えの利かない存在であることを強調している。
昨年7月に週刊ベースボールのコラムで、「もし来年、岡本がメジャーに移籍したら、このチームはますますどうなってしまうのだろう。余計なおせっかいだが、もし僕が打順に口を出せる立場にあったなら、まず現状で最も信用できる打者を中心に置く。それは吉川尚輝だ。吉川を中心に、打線を整えていくのである。僕は吉川が好きだから、吉川が9人いてもいいんだけど、そうもいかないかな(笑)」と絶賛。
シーズン後も、「巨人はチームの心臓である岡本が抜ける以上、思い切ってチームの哲学を変えたほうがいい。ドラフト戦略もその後のコーチングも、大いに改善すべきだ。僕は巨人の来年のキーマンは吉川尚輝だと思っている。吉川は攻守に安定し、今のNPBではNo.1のセカンドだ。巨人は彼をリードオフマンとして固定するべきだ。今の巨人には、一番打者がいない。というより、一番から五番まで、誰一人決まっていなかった。その中で、吉川は堅いと思う」と指摘した。
何番を打つのがベスト?
スピードを生かした広い守備範囲に加え、球際に強い。2024年にゴールデン・グラブ賞を受賞するなど二塁の守備力は球界トップクラスだ。打撃でも直球に強く、きっちりはじき返せる。強いキャプテンシーを発揮するタイプではないが、攻守で懸命なプレーがナインの士気を上げる。今年は昨年ブレークした
泉口友汰のみ遊撃の定位置が確約されているが、吉川もコンディションが整えば、二塁で常時試合に出続けることは間違いないだろう。
注目されるのは打順だ。昨年の先発出場を調べると三番が最も多く、66試合出ている。クロマティ氏が提案する一番は意外なことに1試合しかない。6月6日の
楽天戦(東京ドーム)で起用されたが、4打数無安打と快音が聞かれなかった。
昨年一番で先発起用された選手を見ると、
丸佳浩がチーム最多の66試合、泉口が43試合、
若林楽人が14試合、
増田陸が11試合だった。オフに
松本剛が
日本ハムからFA移籍し、ロイヤルズ傘下3Aの
ボビー・ダルベックの加入が決まったなか、打線をどう構築するか。吉川はチャンスメーク能力が高いが、ポイントゲッターにもなれる。どの打順でも力を発揮できるが、
阿部慎之助監督がどのような戦略を思い描くか。俊足巧打でダイヤモンドを駆け回り、二塁の好守で投手をもり立てる。V奪回に不可欠なキーマンであることは間違いない。
写真=BBM