大きな改革が断行
春季キャンプがスタートし、各球団の選手たちがアピールする中で特別な思いで臨んでいる選手がいる。2019年以来7年ぶりに主将に就任したDeNAの
筒香嘉智だ。
昨年はリーグ覇者の
阪神に13ゲームの大差をつけられて2位。9月以降は17勝6敗1分けと盛り返したが、借金生活から抜け出したのが9月14日とエンジンがかかるのが遅過ぎた。24年はレギュラーシーズン3位からCS、日本シリーズを勝ち抜いて頂点に立ち、「横浜奪首」をスローガンにリーグ優勝から連続日本シリーズ連覇を目標に掲げただけに、昨年の戦いぶりは悔しさが大きかった。
5年間指揮を振るった
三浦大輔監督が昨年限りで退任し、
相川亮二新監督が就任。現場のトップが交代するだけでなく、大きな改革が断行された。チームの顔である
牧秀悟に代わり、筒香が主将に復帰した。牧がリーダーシップを張れない人間ではない。選手間でも人望が厚いが、優勝するためにチームの体質を変える必要があると球団が判断したのだろう。厳しい言葉をナインに伝えられる筒香を主将に据えることを決めた。
勝つ集団に変貌するためには、変化が必要だ。近年のDeNAは毎年のように優勝候補に挙げられてきた。個々の選手の能力が高く、タレントがそろっているが頂点に毎年届かない。昨年はリーグトップの510得点をマークしたが、456失点は阪神の352失点より100点以上多く、救援防御率3.37はリーグワーストだった。勢いに乗ったら手がつけられない一方で、負けると歯止めが利かない。投手だけの責任ではない。1点を競り合うローゲームで得点を奪えずに落とした試合も少なくなかった。豪快な野球は魅力だが、攻守で緻密さに欠けていた。細部にこだわらなければ、強さを持続できない。
暗黒時代に逆戻りする怖さ
中堅、ベテランの選手たちは現状に危機感を覚えていたのだろう。筒香だけでなく、
柴田竜拓、
東克樹、
山崎康晃、
石田健大が昨オフに契約更改を終えた後、若手に対して苦言を呈していた。「風呂場でテーピングが放置されたままになっている」、「ごみの分別をきっちりしていない」、「スマホを触りながらストレッチをしていた」、「大事な試合中に談笑していた」など指摘されたプロ意識の甘さは、グラウンド上の結果につながる。昨年まで4年連続AクラスのDeNAだが、緩んだ空気が蔓延すると暗黒時代に逆戻りする怖さを彼らは知っている。
今年は投打共に大きな柱が抜けただけに、若手の台頭が不可欠だ。チャンスメーカーの
桑原将志は昨オフに
西武へFA移籍し、先発の左右の柱だった
アンドレ・ジャクソンは
ロッテ、
アンソニー・ケイはホワイトソックスに移籍した。
ジャクソン、ケイの両投手で昨年は計305回2/3イニングを投げただけに、この穴を埋めるのは容易ではない。
チームにとって大きなプラスアルファ
主将を務める筒香もポジションを確約されたわけではない。昨年は75試合出場で打率.228、20本塁打、43打点。開幕から打撃の状態が上がらず、2度のファーム降格を経験したが、8月以降は33試合で14本塁打と量産して6年ぶりの20本塁打に到達した。今年は外野手から内野手登録に代わり、一塁や三塁で軽快な動きを見せている。春先からアーチを積み重ねて主軸に座れば、チームにとって大きなプラスアルファになる。
若手たちも自覚が芽生えている。3年目の飛躍を期す
度会隆輝は「年齢が近い世代がたくさんいます。そういった選手がチームを引っ張っていかないとダメ」と強調する。1学年上の
石田裕太郎、
石上泰輝、
森敬斗、同学年の
篠木健太郎、1学年下の
小園健太ら若手成長株が台頭してこなければ頂点が見えてこない。「優勝したときに『度会の活躍があったから』と一言でも言ってもらえるような準備をしたい」と気合十分だ。
シーズン予想の下馬評では阪神の圧倒的優位を予想する声が多いが、勝負事は何が起きるか分からない。1998年以来のリーグ優勝へ。筒香主将を筆頭に勝利に飢えた選手たちが頂点を目指す。
写真=BBM