投手三冠に輝いた昨季

安定感抜群のピッチングで昨季はタイトルを独占した村上
WBCに出場する侍ジャパンの全30選手が発表された。メジャー、NPBを代表する選手たちがそろったが、今回のメンバーから漏れた選手たちの中に侍ジャパン戦士と遜色ない実力を持つ投手がいる。他球団のスコアラーが「間違いなくセ・リーグNo.1の投手でしょう」と認めるのが、
阪神の
村上頌樹だ。
自身初の開幕投手を務めた昨年は26試合登板で14勝4敗、防御率2.10をマーク。最多勝、最高勝率(.778)、最多奪三振(144)と投手三冠に輝いた。カード頭で他球団のエースと投げ合う機会が多かった中で、この成績は大きな価値がある。正確無比な制球力でアウトを積み重ねる投球は芸術の域だ。5月2日の
ヤクルト戦(甲子園)で5安打無四死球無失点の完封勝利を飾ると、続く10日の
中日戦(甲子園)も98球を投げて7安打無失点で2試合連続無四死球完封勝利。5月は3勝0敗、防御率0.69と圧巻の成績で自身2度目の月間MVPを受賞した。シーズンを通じて安定した投球を続け、5回を投げ切れなかった試合は2度のみ。同学年の
才木浩人と共に先発陣を牽引した。
マウンドでは「無」になって集中
壁を乗り越えて、新たな高みにたどりついた。村上が大ブレークしたのはプロ3年目の2023年だった。前年まで一軍未勝利だったが、22試合登板で10勝6敗、防御率1.75で最優秀防御率に輝き、新人王とMVPを受賞。リーグ優勝、38年ぶり日本一の立役者となった。ただ、翌24年は25試合登板で7勝11敗、防御率2.58とリーグワーストの黒星で負け越し。投球内容が決して悪かったわけではない。打線の援護に恵まれない登板が目立ち、勝ち越していても不思議でなかった。苦しい経験も成長の糧にする。村上は昨年12月に週刊ベースボールのインタビューで、以下のように振り返っていた。
「今季は、打線に対して点を取ってほしいということを考えなくなったこともよかったですね。まずは自分の仕事をして、勝ち星が付いてきたらいいな、という感覚で投げていました。マウンドでは『無』になり、投げることだけに集中していったという感じです。去年の経験を今年進化させて成長させたことは大きかったですね」
「昨年までのように『ちゃんとやらないと』と思い過ぎていたら今年は、ここまでの成績にはならなかったはずです。悪いことを考えない、ということを考えられるようになったのは大きいですね。以前は、このチャンスで点数が入らなかったから、次の回点取られるんじゃないか? などとも考えていました。今年はそういうのがまったくなかったんです。同じ状況であっても『点が入らんかったわ』とだけ思ってマウンドに上がっていました。
自分の力でコントロールできないことに気持ちを左右されず、マウンドで任務を遂行する。頭では理解しているが、実際に投球で表現するのは難しい。自然体を貫いたことが、投手タイトルの独占につながった。
同期入団の四番への感謝
謙虚なエースは同期入団の四番へ感謝の思いを口にしている。
「本当に今年は、周りを見ながら投げられていたんです。でも何より、開幕戦で勝てたことが、大きな自信となりシーズンを支配していました。自主トレでやってきたことが、開幕戦ですぐに結果が出て報われたので、この1勝が最後まで効きました。あとは、テル(
佐藤輝明)が1回表に2ランを打ってくれて、2点を貰って開幕の初回のマウンドに立てた。このアドバンテージが、今季の活躍につながりましたね。ほんまにテルのおかげですよ、守備もよかったですから……テルの話になってしまいましたね(笑)。そして来年、この流れを維持して、最後また3冠獲れたら『うれしい』かなと思います。ここで『来年も絶対3冠獲るぞ!』って宣言して気持ちをつくってしまったら、ここまでの話が、意味のないものになりますからね(笑)」
侍ジャパンとは無縁だが、実力が誰もが認めている。阪神のエースから、球界を代表するエースへ。球団史上初のリーグ連覇に向けて今年も右腕を振り続ける。
写真=BBM