ホークスの伝統

生目の杜運動公園のメーン会場・アイビースタジアムのエントランスを入ると、小久保監督が筆で直筆した3カ条が目に入る[写真=BBM]
第2クール最終日(2月8日)。この日の宮崎市内の最高気温は5度だった。強風と寒さも吹き飛ばし、選手たちは集中力を高めたメニューを消化。とにかく、すべてにおいてポジティブ。これが、ホークスの伝統。
王貞治会長から指導陣、球団スタッフ、選手へとつないできた「王イズム」の継承である。
選手、コーチ陣のほとんどが移動バス等でホテルへ引き揚げた夕方5時前、球場正面に姿を見せたのが
倉野信次投手チーフコーチ兼ヘッドコーディネーター(投手)だった。全体メニュー後、スタッフによるミーティングは1時間以上。終了後は携帯電話を手に関係者へ連絡するなど、多忙を極める。青学大の先輩・
小久保裕紀監督が就任した2024年から同ポストを担い、全幅の信頼を受けている。
宇治山田高、青学大を経て97年にドラフト4位でダイエーに入団。164試合(19勝9敗1セーブ)に登板した11年の現役生活を終えた後は、一、二、三軍のコーチとしてホークス投手陣の育成に尽力。2022、23年は渡米し、レンジャースでコーチ研修、投手育成コーチの経験を積んだ。帰国後の24年、3年ぶりにホークスに復帰し、24、25年はリーグ連覇、25年は5年ぶりの日本一に貢献している。
背番号94。球団から与えられた役割、分野は多岐にわたり、年々、責務は重くなるばかりだが「それは仕事だから、大したことない」と、倉野投手チーフコーチは事もなげに答えた。
共有する合言葉

アイビースタジアムの正面エントランス付近にはホークスキャンプ10年(2013年)、20年(23年)の記念モニュメントがある[写真=BBM]
ホークスのキャンプ地・生目の杜運動公園のメーン会場・アイビースタジアムのエントランスには、小久保監督が筆で直筆した3カ条が目に飛び込んでくる。
・愉しむ(Play happy)
・出し切る(Give it your all)
・追い求める(Never settle)
この3カ条は昨年1月31日、宮崎入り後の全体ミーティングで指揮官が披露したもの。今年も不変のモットーとして掲げられた。昨年はホワイトボードに貼られ、シーズン中は、本拠地・みずほPayPayドーム福岡の選手サロンにおいて、目に入る場所に設置。今年は額縁に入れ、さらに共有すべき合言葉となった。
倉野投手チーフコーチはこう受け止めている。
「それはもう(小久保監督が考えるのと)同じ気持ちですよね。『愉しむ』は楽しみで笑う、楽しさじゃない。『出し切る』というのは私自身の一つのモットーであり、最後の『追い求める』というのは当然、プロとして大事なことだと思います」
3カ条はチームの「約束事」として浸透し、グラウンドには活気がある。選手たちの前向きな取り組みが、来場する多くのファンを楽しませている。2004年に始まったホークス春季キャンプは、宮崎の「風物詩」として定着。9日は休養日で、10日から第3クールに入る。福岡移転後、初となる3年連続パ・リーグ制覇へ、2026年のチームスローガン「全新(ゼンシン)」あるのみだ。
取材・文=岡本朋祐