日本一パレードから職員総出

宮崎市では巨人、ソフトバンク、オリックスがキャンプを張る。一つの市で3球団がキャンプを行うのは、全国的に見ても宮崎市のみだという。受入事業を担当する宮崎市観光協会・長田事務局長は「現場主義」を貫き、人と人との縁を大切にしている[写真=BBM]
2月9日。宮崎市内でキャンプを張る巨人、ソフトバンク、オリックスはいずれも休養日だった。3球団のキャンプ受入事業を担う宮崎市観光協会・長田将明事務局長は言う。
「2004年から始まった春のホークスキャンプを担当していた当時、職員は5人ほどだったんですが、現在は25人と組織が大きくなりました。スポーツを通していろいろな経済交流が図られ、観光消費額も上がっています。3球団にそれぞれ協力会が設置され、担当者を配置して、年間を通して各球団さんとお付き合いをさせていただいております。毎年必ず、この時期にキャンプが宮崎で開催されるというわけではなく、協定書を結んでいるわけでもありません。毎年、リセットというような気持ちで、また、来年もいらしてくださいというような気持ちで皆さんをお迎えしています。どうしても2月のキャンプ期間だけになりがちなんですけども、各球団さんの本拠地球場にも定期的に伺って、公式戦では宮崎のキャンペーンをするなりして、密にコミュニケーションを取りながら、2月キャンプインをお待ちしているという状況です。こうした積み重ねが必要だと思っています」
1月31日にはソフトバンクの日本一パレードが宮崎市内で開催。宮崎市観光協会は同イベントにも関わっている。約4万5000人のファンが沿道を埋め、職員総出で調整に追われた。2月1日にはキャンプイン。そして、第1クールを終えた最初の休養日(巨人、オリックスは4日、ソフトバンクは5日)は、新人選手恒例の体験会が開催されたため、3球団の担当者はイベント対応に追われた。第2クールは3球団とも8日に終え、9日は担当者にとっても久々のオフとなったという。
一つの市で3球団がキャンプを行うのは、全国的に見ても宮崎市のみ。3球団で約57万人を動員。長田氏は04年のホークスキャンプの立ち上げから立ち会ってきている。拠点である生目の杜運動公園内の施設を有効活用し、一つのテーマパークへと育てた。数多くの露店が並び、野球以外でもファンが楽しめる空間を創出。1959年からキャンプを張る巨人にも力を入れており、15年にスタートしたオリックスの誘致にも尽力。プロ野球キャンプを「観光資源」として根付かせ、一つの「文化」へと成長させたのである。
「宿泊観光業界において、ニッパチ(2月、8月)は悪いと言われるんです。このプロ野球キャンプのおかげで、非常に経済効果が上がっていて、宿泊の稼働率も良く、我々みたいな観光業を生業としているものに関しては、非常にありがたい期間だと思っております」
侍ジャパン合宿の対応

ソフトバンクは2004年から宮崎でキャンプを張り、今年で23年目。昨年は25万6000人を動員し「文化」として根づいている[写真=湯浅芳昭]
巨人は2月12日に打ち上げるが、もう一つのヤマが待ち構える。14日からは侍ジャパンがサンマ
リンスタジアム宮崎で、WBCへ向けた直前合宿に入る。第2回(09年)が教訓となっていると、長田事務局長は振り返る。
「2009年に
イチローさんが来られたんですけど、1日目よりも2日目、2日目よりも3日目と、どんどんお客様が増えていき、サンマリンスタジアムから市役所まで約20キロあるんですけど、そこが渋滞になってしまって……。今までキャンプというのは、球場をオープンしておけば、フリーで皆さんが行かれる。駐車場も、近くまで来ていただければ入れる。そういうイメージを持っていたんです。県運動公園には約3000台の駐車場があるので『全然、大丈夫だろう』と踏んでいたんですが、日に日にお客様が増えて対応ができなくなってしまったんです。すべて後手になったものですから、その経験を生かし、その後は混乱のないよう受け入れ体制を整えています」
前回大会の23年は駐車場整理券、入場整理券を事前発行。大きな混乱がなく進み、今回の合宿でも踏襲していく流れだという。「4年に1回のありがたい機会。『お祭り』ですので、われわれとしても万全の準備でお迎えしたい」。宮崎の直前合宿が恒例化したのも、長田事務局長ら宮崎市観光協会の努力の賜物だ。
「侍ジャパンを運営するNPBエンタープライズさんとお会いしたり、NPBさんと関係を構築するためにも、10月のフェ
ニックスリーグ、ファーム日本選手権など、いろいろなものにチャレンジしてきました。人と人とのパイプづくりを、一つひとつの財産として大事にしています」
2月25日からは13年に創設された「球春みやざきベースボールゲームズ」が開催され、5チーム(オリックス、
西武、
ロッテ、ロッテジャイアンツ、斗山ベアーズ)が参加。宮崎の熱い春は、これからがピークである。
最後に長田事務局長は宮崎市観光協会としての「立ち位置」を語っている。
「我々の仕事は、どうしても我々がコンテンツなわけではありませんので、地元の方とチームの方との接着剤みたいな役割なので『つなぎ』なんです。我々のこの『つなぎ』の仕事を大切にしていけば、地元の方にも受け入れていただけるし、来られる方も宮崎を満喫し、楽しんでいただくことが最大のミッションです。『つなぎの仕事』として、これからも継続して、丁寧に対応すれば、評価していただけるのではないかなと思っています」
選手たちが充実のキャンプ期間を過ごしてもらうため、職員たちは奔走の日々を過ごす。来場者が笑顔で帰途に就く表情を見るのが、最高の喜びだ。「スポーツランド宮崎」。長田事務局長は人との縁に感謝し、自身のモットーである「現場主義」を貫き、信頼をつかんでいく。
取材・文=岡本朋祐