むちゃくちゃ速いスイング音

昨年8月7日の中日戦でプロ初本塁打。思い切りのいい打撃が身上だ
阪神の高卒5年目・
中川勇斗が、
日本ハムの
新庄剛志監督から絶賛されたのは、2月8日に名護で行われた日本ハム戦の練習試合だった。3打数無安打に終わったが、新庄監督は日本ハムの新人たちについて報道陣に聞かれた後、「タイガースの中川君、魅力を感じたね。なんかスイングしてる音、むちゃくちゃ速いんですよ。ファウルもいいし、変化球に対してもピタッと止まって右に強いのも打てる」と名指しで評価した。
他球団の指揮官に一目置かれることは名誉なことだが、新庄監督が初めてではない。「七番・左翼」でプロ初スタメンを飾った昨年5月6日の
巨人戦(東京ドーム)。中川は5回に左腕・
石川達也投手の初球のスクリューをはじき返すと、強烈な打球が三塁のグラブをはじいている間に、一塁にヘッドスライディング。セーフの判定にベース上でガッツポーズを繰り返して喜びを爆発させた。左翼の守備でも前方の難しい打球をダイビングキャッチ。攻守で執念を感じさせるプレーが敵将の
阿部慎之助監督の印象に残り、「いきなり多分スタメンでいって『よし!』みたいなのがすごい見えた。ガッツマンだなと思って、『あぁいいなぁ』と思いながら見ていました」とコメントしたことが報じられた。
飛距離が伸びている打球
ドラフト7位入団から成り上がりを目指す。本職は捕手だが打力を買われ、昨年は左翼で起用された。25試合出場で打率.268、2本塁打、2打点。8月7日の中日戦(バンテ
リン)で
金丸夢斗の直球を豪快に振り抜き、左翼へプロ初アーチを放つなどパンチ力が魅力だ。今年は一軍定着に向け、並々ならぬ決意が野球に向き合う姿勢に現れている。高校以来の丸刈り姿で春季キャンプ地の宜野座入り。オフの間に肉体強化を敢行し、体重が5キロ増えたことで打球の飛距離が明らかに伸びている。
左翼の定位置争いは熾烈だ。
前川右京、
高寺望夢、現役ドラフトで
ヤクルトから移籍した
濱田太貴のほか、ドラフト1位の
立石正広、ドラフト2位の
谷端将伍は本職が内野だが、出場機会を勝ち取るために外野に回る可能性がある。中川がアピールするためには、打撃で他の選手と違いを見せることが重要になる。22歳という年齢を考えると今後捕手に戻る可能性があるが、外野で出場機会を増やせば野球人生を切り拓ける。
苦しい野球ができる時期

昨年限りで現役を退いた原口。闘病生活を乗り越えて野球人生を全うした
昨年限りで現役引退した
原口文仁の生き様は、中川にとって励みになるだろう。帝京高からドラフト6位で入団したが、故障が重なった影響もあり育成契約に。ここからはい上がった。支配下復帰した16年に107試合出場で打率.299、11本塁打、46打点をマーク。クリーンアップで勝負強さを発揮した。本職の捕手だけでなく、一塁で起用されてチームを献身的に支えた。26歳の若さで大腸がんを発症したが、闘病生活を乗り越えて「代打の切り札」として活躍した。
原口は週刊ベースボールのインタビューで、以下のように語っている。
「好きなことを仕事にしている中で、誰しも苦しさは味わいます。また、プロ野球という狭き門でプレーでき、そのプレー期間とは短いですよね。苦しい野球ができるのはこの期間しかない、と思っていたんです。引退したら楽しい野球ができるだろうし、この期間は苦しんでやっていこうと。それは今しかできない。だから頑張れましたね」
「やはり何より一軍でプレーしたい、試合に出続けたいという思いがあります。より上のレベルでプレーすると、もっとそういう欲と気持ちが強くなっていきました。それと同時に年齢を重ねると、自分がプロ野球選手としてできる年数が決まっているので、そこを逆算し、考慮して、ポジションにこだわらずに一軍の試合に出たいという気持ちが強かったですね」
中川も勝負の時を迎えている。春季キャンプ、オープン戦で結果を残し、開幕スタメンをつかめるか。
写真=BBM