質が高い直球、変化球

今季、東北福祉大からドラフト2位で中日に入団した櫻井
春季キャンプで、注目度が高いのが新人選手だ。即戦力として入団した選手に対し、他球団の編成担当やスコアラーは実際に視察して目を光らせる。在京球団のスコアラーに印象に残った選手の話を聞くと即座に名前を挙げたのが、中日のドラフト2位右腕・
櫻井頼之介だった。
「直球と変化球の質が高く、1年目から一軍で通用する力を持っている。
村上頌樹(
阪神)と似ていますよね。恵まれた体格ではないけど、球を操る能力が高く、打者を抑える引き出しが多い。先発、救援のどちらでも対応できそうなので起用法の幅が広いと思います」
プロ初の実戦登板となった2月17日の練習試合・
日本ハム戦(名護)で、2点リードの3回から登板すると、
山縣秀、
五十幡亮汰にいきなり連打を浴びてピンチを招いたが動じない。
矢澤宏太、
水谷瞬を連続三振。二死満塁で
清宮幸太郎を遊ゴロに仕留めて無失点で切り抜けた。状態は決して良いとは言えなかったが、決定打を許さない。この投球スタイルが櫻井の真骨頂ともいえる。
総合力が高く「勝てる投手」
身長175cmと決して恵まれたフィジカルではない。カーブ、カットボール、スライダー、縦のスライダー、チェンジアップ、スプリット、ツーシームと多彩な変化球を操るが、決して技巧派ではない。常時150キロ前後の直球は浮き上がるような軌道で空振りを奪う。スタミナも十分で試合終盤に球威と制球力が落ちない。総合力が高く、「勝てる投手」の条件を備えている。
穏やかな好青年に見えるが、秘めた闘争心は熱い。兵庫県尼崎市で生まれ育ち、高校は愛媛・聖カタリナ学園高へ。3年春に同校初の甲子園出場に貢献してプロも進路の選択肢に入ってきたが、東北福祉大に進学した。大学の同級生には
西武のドラフト4位で指名された
堀越啓太がいた。大型右腕は大学入学時に球速が150キロを超えていた。櫻井は大学の初練習で堀越とキャッチボールした際、うなりを上げる剛速球で左手に青あざができた。途中でギブアップしたが、「絶対に負けたくない」と火がついた。2年時に頭角を現すと、エース格となった3年春、秋に敢闘賞、4年春はMVPを受賞。全日本大学選手権では2勝をマークする活躍でチームを7年ぶりの日本一に導いた。
新戦力の活躍が巻き返しのカギ

中日の投手の新人王は1998年の川上が最後だ
櫻井は週刊ベースボールの取材で「ストレートの球威や球速は成長しているかなと思いますが、堀越はすごく球が速いので、なかなか追いつけないなと感じています。それで、スピードではかなわなくても、ボールのキレや変化球で勝っていけるようにしようと考えたんです」と明かしている。直球の速さで勝てなくても、投球技術を磨けば活路を見出せる。指の掛かり方、投球フォームをチェックして投げ込んできた。
「自分の感覚に対して、実際にはどんなボールだったのかを確認。フォームについてはできるだけシンプルなほうが良いと考えていて、しっかりと左足を着地させてから投げるようにしています。それからもともと内野手だったせいか、体が開くクセがあるので、意識して投げることでボールが変わってきました」
創意工夫を重ねて大学球界を代表する投手に。「高校のときは『プロは無理やな』って感じでした。大学で練習もトレーニングもしっかりやってきてよかったなと思います。球速もコントロールする力も上がりましたし、投球の内容がすべてよくなった。そういった技術面もそうなんですけど、一番は気持ちや人間性の部分を伸ばすことができたと思います」と振り返っている。
中日の新人王受賞は17年の
京田陽太(現
DeNA)、投手では1998年の
川上憲伸までさかのぼる。チームは21年以来5年連続Bクラスと低迷期が続いているなか、新戦力の活躍が巻き返しのカギを握る。ドラフト1位右腕の
中西聖輝とともに、櫻井が投手陣の軸になれるか。名前のとおり、頼りになる右腕を目指す。
写真=BBM