待ち受けていた試練

昨季はわずか4勝に終わった井上。7年目の今季は大きく飛躍したい
WBC開幕に向けて侍ジャパンの注目度が高まっている中、1年2カ月前に日の丸を背負ってマウンドで強烈な輝きを放った投手がいた。
巨人の
井上温大だ。
プロ5年目の2024年は6月から先発ローテーションに入り、25試合登板で8勝5敗2ホールド、防御率2.76をマーク。好成績を評価されてシーズン後に侍ジャパンに選出され、さらに評価を高めた。11月3日の練習試合・
広島戦で4者連続三振を含む5奪三振で3回をパーフェクトに抑える快投。プレミア12開幕戦となる豪州戦の先発に抜擢され、6回途中5安打8奪三振2失点ときっちり試合を作り、代表初勝利を飾った。
井上には威風堂々という言葉がよく似合う。身長176cmと上背はないが、直球は打者の手元でホップする軌道でストライクゾーンにどんどん投げ込む。スライダー、スプリット、チェンジアップを織り交ぜて奪三振能力が高い。昨年は左腕エースとして期待されたが、試練が待ち受けていた。
鳴りを潜めた強気な投球
3、4月は5試合登板で2勝1敗、防御率2.12と幸先の良いスタートを切ったが、5月以降は要所で痛打を浴びる場面が目立つように。6、7月と2カ月連続未勝利に終わった。7月31日の
中日戦(バンテ
リン)では
阿部慎之助監督からベースカバーの遅れをマウンド上で叱責されるなど、投球以外にも課題を残した。「
長嶋茂雄終身名誉監督追悼試合」と銘打って開催された8月16日の
阪神戦(東京ドーム)で、「絶対に勝たなければいけない試合。そういう日に投げられることに感謝したい」とマウンドに立ったが、3回5安打3失点KO。初回に先頭打者の
近本光司に四球を与えると三番の
森下翔太に2ランを浴びるなど試合の主導権をすぐに明け渡し、「試合を壊してしまった。自分自身の技術とメンタル不足。レベルが低いなと思っています」と自身を責めた。
9月に左肘痛を発症して戦線離脱。20試合登板で4勝8敗、防御率3.70と悔しいシーズンに終わった。日米通算170勝をマークした野球解説者の
岩隈久志が「本来ならもう少し勝ち星が増えてもいい投手だと思います。2026年は25歳の7年目に入ります。今年こそは先発ローテとして1年間働いてほしい投手ですし、それだけいい資質を持っており、投球フォームでもほぼ欠点がない左腕だと思っています」と週刊ベースボールの企画「岩隈久志の連続写真に見るプロのテクニック」で能力を評価するように、投げている球は一級品だ。昨年も107回を投げて100三振を奪っている。だが、右打者の内角を突き切れず、好投していたが突然崩れるなど持ち前の強気な投球が鳴りを潜めていた。
先発ローテ入りに多くのライバル

ドラフト1位左腕の竹丸。実戦で結果を残している
首脳陣の信頼を取り戻すためには、結果で示すしかない。左肘痛からのリハビリ調整が続き、2月の春季キャンプは三軍スタートだったが、16日のライブBPで最速149キロを計測。5カ月ぶりに打者を相手に投げて順調な回復ぶりを見せ、キャンプ終盤に二軍に合流した。巨人で先発の座が確約されているのは
山崎伊織のみ。競争は熾烈だ。井上には刺激になる存在が加入した。ドラフト1位の
竹丸和幸は同学年。鷺宮製作所から入団した左腕は実戦登板で計8イニング投げて無失点とアピールしている。
2024年に頭角を現した際に「球界のエースになれる素材」と評された井上も負けられない。「フィジカル面で体の異変に早く気づくことの大切さ、気づく力の重要性を痛感させられた2025年でした。投球面ではコーナーに投げ分けられるコントロールをさらに磨いて、先発としてしっかり試合をつくっていくこと。目標とする2ケタ勝利を達成するためにも、先発ローテーションを最後まで守り切って規定投球回に到達したいと思います」と目標を掲げている。
竹丸、FAで加入した
則本昂大、助っ人新外国人の
フォレスト・ウィットリー、
スペンサー・ハワード、
ブライアン・マタと新戦力の加入でライバルが多いが、生え抜きの投手の奮起なくしてV奪回は望めない。今年は大輪の花を咲かせられるか。
写真=BBM