「美と野球が交差する空間」

ローンデポ・パークは侍ジャパンがWBC準々決勝で戦う試合会場となる[写真提供=Rod Mar/POPULOUS]
カリブ海の湿った空気、南フロリダの強烈な日差し、街を包むラテンのリズム。そのすべてが混ざり合う都市、マイアミ。その中心にそびえるのがローンデポ・パークだ。
侍ジャパンは第6回WBCにおいて、プールCの一次ラウンドを4連勝で1位突破。戦いの場は、東京ドームからアメリカへと移る。大会連覇まであと3勝。日本時間15日の準々決勝、そして勝ち進めば準決勝、決勝で使用するスタジアムである。
2012年に誕生したこのスタジアムは、約3万7000人を収容するボールパーク。MLBのマイアミ・マー
リンズの本拠地として知られる。だが日本の野球ファンにとって、この球場の意味はそれだけではない。ここは、日本野球の歴史が刻まれた場所でもある。
設計を担ったのは世界的なスポーツ建築設計事務所POPULOUS(ポピュラス)。掲げたコンセプトは「美と野球が交差する空間」。この球場は野球場でありながら、都市の芸術作品のような存在感を放つ。
開閉式の独創的な外観

ローンデポ・パークの外観[写真提供=Rod Mar/POPULOUS]
目に飛び込むのは独創的な外観。多面的な金属とガラスで構成されたフォルム。光の角度で表情を変える巨大な建造物は、海と陸が交わるマイアミの景観を抽象的に表現している。スタジアムの基壇にはアーケードと色鮮やかなモザイク。キューバ文化をはじめとするラテン文化の色彩が散りばめられ、街の鼓動が建築に流れ込む。
内部に足を踏み入れると巨大な可動式屋根が頭上に広がる。南フロリダ特有の日差しとス
コールに対応する構造で、わずか13分で完全に開閉する。屋根が開けば、外野のガラス越しにマイアミのスカイライン。夕暮れの高層ビル群とナイトゲームの照明が交差する光景は、この球場ならではのものだ。
屋根はスタジアム外側に収納される仕組み。開放時には球場周辺に広い広場が生まれ、イベントや地域の集まりの場となる。この場所は、かつて名門フットボール会場として知られたオレンジボウルの跡地。周辺道路の再整備によってリトルハバナ地区と主要道路が再び結ばれ、球場は街の中心として機能している。
新たな歴史の1ページ

ローンデポ・パークの内観[写真提供=Rod Mar/POPULOUS]
この球場は、日本野球とも深い縁を持つ。アメリカとの2023年WBC決勝。舞台はこのローンデポ・パーク。世界の視線が集まる中、侍ジャパンが最後の一球まで戦い抜き、世界一に輝いた。歓喜の輪が広がるフィールド。スタンドを揺らした大歓声は記憶に新しい。
24年9月には、この球場で再び歴史が動いた。ドジャース・
大谷翔平がMLB史上初の「50本塁打・50盗塁」を達成。スタンドが揺れ、球場全体がどよめきに包まれた。
そして26年。再び世界の野球ファンの視線がマイアミに集まる。
世界一の歓喜が生まれ、野球史を塗り替える記録が生まれた場所、ローンデポ・パーク。いよいよ迫ったWBC準々決勝。侍ジャパンにとって、2度目の連覇への挑戦である。南フロリダの夜風が吹き抜けるこのボールパークで、日本野球の新たな歴史の1ページが刻まれる。