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【大学野球】昨夏の甲子園で観客を魅了した県岐阜商高・横山温大が大学で野球を続ける理由

 

ハンディを克服


昨夏の甲子園で4強に進出した県岐阜商高の右翼手・横山は、地元の岐阜聖徳学園大でプレーを続けている[写真=BBM]


 岐阜聖徳学園大を指揮する近藤真市監督は元中日投手。高卒1年目(1987年)の巨人戦(8月9日、ナゴヤ球場)で、プロ野球史上初の初登板ノーヒットノーランを遂げた往年のサウスポーだ。中日のコーチ、スカウトを経て、2022年から大学野球の指導者になった。学生を見るその目は、厳しさの中にも愛情がある。沖縄・浦添で行われた早大とのオープン戦(3月14日)。「一番・右翼」で起用したのは1年生・横山温大(県岐阜商高)だった。

「誰よりも努力するので、何とかしたいという思いがあります。私は一生懸命やる子を使いたいんです。本人も注目されていることを力に変え、やる気十分ですから。人から見られるというプレッシャーも、プラスに転じている。これからもどんどん使っていきたい」

 横山は生まれつき左手の指が欠損しているハンディを克服。古豪・県岐阜商高の七番・右翼で出場した昨夏の甲子園では、16年ぶりの4強に貢献した。攻守で全力プレーを貫く姿は、多くの人々の感動を呼んだ。打撃ではほぼ右手一本ながら、バットに左手を添え、インパクトの瞬間に力を結集。守備では左用グラブを使用しており、右で捕球すると、すぐさまグラブを左手に持ち替え、右で送球する。スローイングは正確無比。マンモススタンドの観客を魅了し、2026年夏の甲子園の「顔」と言ってもいいほど、インパクト十分だった。

先頭安打で先制の生還


左打席ではインパクトの瞬間、添えた左手を押し込み、握った右手で力を結集させる[写真=BBM]


 1回表、先頭の横山は1ボール1ストライクからの3球目のストレートを左前に運んだ。早大の先発は3年秋までにリーグ戦で15試合に登板している右腕・越井颯一郎(4年・木更津総合高)。見事な逆方向への打撃だった。二死二塁から四番打者の適時打で先制のホームを踏んでいる。7回表には三遊間へのゴロを放つと、遊撃手がファンブル(記録は失策)する間に、一塁ベースを駆け抜けた。

 ライトの守備機会も無難にこなした。ビハインドの9回表は最後のバッター(二ゴロ)になったが、安田虎汰郎(3年・日大三高)が空振り三振を狙いにいった得意のチェンジアップをバットに当てるミート力の高さを見せた。高校から大学にステージが変わっても、攻守の軽快なプレーは健在だった(試合は早大が13対1で勝利)。

「自分の現時点でのレベルを知る貴重な機会でした。打ち損じもあったので、コンタクト率を上げていかないといけないです。今回の早稲田さんのような全国レベルの投手を攻略していかないと、上の世界では通用しない」

打撃、守備も試行錯誤


左用のグラブで右翼を守る。1プレーに対する準備にも長けている[写真=BBM]


 この日は1年生ながら背番号「1」を着けていたが、日替わりで変更になるという。A戦(一軍)での先発は2試合目。現状はゲーム途中からの出場が多く、定位置争いの真っただ中という状況だ。開幕までアピールが続く。バット選びも、試行錯誤の段階だという。

「高校時代に使用していた金属バットは900グラムで、今、使っている木製(850グラム)よりも重かったんです。この前も一本、折ってしまったんですが、バランスも難しい。芯に当たれば金属も木製も変わらないんですが、芯を外すと、右手一本だと厳しくなる。もっと体を鍛えていきたいです」

 この日のオープン戦はライトで出場も、安打処理、二塁送球の一連の流れで、すぐに切り替えができるレフトのほうが「守りやすい」と明かす。研究熱心で、最善のプレースタイルを模索している。試合後、早大・小宮山悟監督は「ソツなくプレーしていた。ボールを扱う様にも、無駄な動きがない。颯爽としたプレーに、感銘を受けました」と振り返った。

夢はプロ入り


捕球後はグラブをすぐさま左に持ち替え、右で送球する[写真=BBM]


 横山はなぜ、岐阜聖徳学園大を志望したのか。コメントを聞くと思わず応援したくなる。

「甲子園前から声をかけていただき、生まれ育った岐阜で、岐阜の野球を盛り上げたいと思ったんです。地元の人にプレーを見ていただき、この岐阜で活躍したい。甲子園では温かいご声援をいただきました。あの歓声を忘れることはありません。大学でも人の力になる、影響を与えられるようなプレーをしたいですが、まずは自分自身がこのチームで中心選手として、グラウンドで躍動したいです」

 相当な意気込みを見せる横山の思いをくんだ近藤監督は、父親のような目で語った。

「私の経験上、結果をほしがると、うまくいかないもの。思い切ってプレーしてくれれば、それで良いんです。使った監督の責任ですから。大学野球のレベルに順応してきているので、今後も見守っていきたいと思います」

 岐阜聖徳学園大は東海地区大学野球連盟に加盟している。4月に開幕する春、まずは岐阜県リーグを制し、静岡、三重の優勝校との決定戦を勝ち上がれば、全日本大学選手権の切符を手にできる。第一関門・岐阜県リーグは群雄割拠の勢力図であり、神宮球場&東京ドームへの道は険しいものがある。横山は甲子園に続き、全国舞台での躍動を誓う。

 気が早いのは承知の上で、横山に大学卒業後の進路を聞いた。「1年でも長く、野球を続けたいと思います」。近藤監督は補足する。「プロに行きたい思いもあるようですが、より一層、努力を重ねていかないといけないです」と、表情を引き締めた。夢と希望を持った大学生活が始まった。限界まで挑戦するその姿勢が、見ている者の心を熱くさせるのである。

取材・文=岡本朋祐
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