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第98回選抜高校野球大会

【センバツ】センバツ開会式が高校球児にとって「学び」となったメッセージとは

 

東日本大震災から15年


日本高野連・寶会長は開会式の励ましのことばで、最後に「頑張ろう!」と球児にエールを送った[写真=牛島寿人]


 第98回選抜高校野球大会が3月19日、阪神甲子園球場で開幕した。開会式における3氏によるトークはいずれも心温まるメッセージだった。晴れ舞台に立つ高校球児たちは、真剣勝負を前にして背筋が伸びたはずだ。

 大会主催者である毎日新聞社・松木健社長は開会のあいさつで、2011年に触れている。

「今年は東日本大震災から15年の年です。あの日から12日後、83回目のセンバツは多くの関係者の尽力によって幕を開けました。国難ともいうべき状況の中で、私たちが開催を決めたのは、こんな時こそ全国に希望を届けるべきではないかという思いからでした。開会式で創志学園の野山慎介主将は『人は仲間に支えられて大きな困難も超えることができると信じています。与えられている環境に感謝し、全身全霊で正々堂々とプレーすることを誓います』と選手宣誓をしました。この言葉に込められた思いや願いは、これまでもこれからも変わることはありません。選手の皆さん、甲子園でのプレーを思い切り楽しんでください」

 お祝いのことばでスポーツ庁・河合純一長官は、自身が競泳選手として出場した1992年のバルセロナパラリンピックについて語った。

「私が初めてパラリンピックという大きな舞台に立ったのは、皆さんと同じ高校生17歳の時でした。無我夢中で自分のすべてをかけて限界に挑戦し、そして未知のステージに立ち向かったあの時の震えるような緊張感、今でも忘れません。皆さんが今、この場所に立てているのは、何も自分の力だけではないはずです。一緒に汗を流してきてくれたチームメイト、そして支えてくださったご家族、いつも応援をくださる地域の方々。皆さんの背中には数え切れないほどの多くの方々の思いが託されています。だからこそ、皆さんが苦しい時こそ、そんな仲間たちの絆を思い出して、自分の力に変えてください。皆さんのはつらつとしたプレーは、誰かの勇気になります。皆さんの最後まで諦めない姿、誰かの希望になります。自分を信じ、仲間を信じ、この一球、この一瞬にすべてを出し切ってください。
皆さんのひたむきなチャレンジが、このグラウンドで最高の輝きを放つと私は確信しています。どうかこの憧れの地甲子園を存分に」

野球の楽しみ方


開会式では出場32校が元気良く、入場行進した[写真=毛受亮介]


 励ましのことばでは日本高野連・寶馨会長が世界レベルの各大会での日本代表選手の活躍を受けて、球児たちを激励している。

「皆さん、野球とは皆さんにとってどんなスポーツなんでしょうか? なぜ野球をしているのでしょう? まずは野球が楽しいからですね。プレーして楽しい野球。そして見て楽しい野球。ワールドベースボールクラシックのWBC侍ジャパンと外国チームの試合も見ましたね。日本代表チームは優勝したベネズエラには負けましたけれども、素晴らしいプレーをたくさん見せてくれました」

 さらに、野球への愛情を語った。

「参加して楽しい野球。ベンチ入りはできなかったけれども、選手たちがスタンドからチームメイトを応援する、あるいはさまざまな野球イベントに参加する。それもまた楽しいものであります。参加する応援団の皆さんも、審判委員の皆さんも、大いに野球を楽しんでください」

 次に大会運営する日本高野連について触れた。

「今年は日本高等学校野球連盟創立80周年の年に当たります。この阪神甲子園球場での高校野球の歴史と伝統を今後も守っていきたいと存じています。そして、この甲子園球場で皆さん大いに羽ばたいていただきたいと思います」

 改めて選手目線に立ち、言葉を締めている。

「イタリアで行われました冬季オリンピック、パラリンピックでも、日本の選手はすごい活躍をしてくれました。最後まであきらめなくて続けていてよかったという選手が何人もおりました。皆さんも最後まであきらめることなく頑張って、自分たちの実力を大いに発揮してください。ネバーギブアップ。プレーして楽しい野球、見て楽しい野球、そして参加して楽しい野球。今日からは皆さんの出番であります。大いに野球を楽しんでください。ネバーギブアップ。頑張ろう!」

野球王国・日本を形成


選手宣誓は北照高・手代森主将が務めた[写真=毛受亮介]


 選手宣誓は北照高・手代森煌斗(3年)が大役を務め上げた。

「16年前、この場所で私の高校の先輩が選手宣誓をしました。その先輩の指導を受けてきた私が、今、同じ場所で同じ役目を務めています。夢は一人のものではなく、人から人へと受け継がれ、未来へつながっていきます。かつて高校球児だった者たちが世界の頂点を争うその原点に甲子園があります。この夢の舞台を目指し、泥と汗にまみれながら歩んできたすべての高校球児の歩みが、野球王国・日本を作ってきました。こうしてつながっていく私たちの夢が広場の上に成り立っていることを忘れず、ともに戦ってくれる仲間、ここまで育ててくれた家族、そして夢を伝えてくれた先輩への感謝の気持ちを胸に、今、この時、この日をいつまでも大切に忘れずに、威風堂々戦い抜き、次の世代の夢となることを誓います」

 スポーツ庁・河合純一長官は開幕試合(帝京高-沖縄尚学高)が始球式を行った。プレートの前からの見事な投球に、マンモススタンドからは大きな拍手が沸き起こった。主催者を通じてコメントを出している。

「30、40年ぶりに野球のボールを投げました。お客さんから温かい拍手をいただき、ありがたかったです。やはり選手は声援の中で輝けると、私自身一番思っています。そういう舞台が高校野球にあって改めていいことだなと甲子園に来て感じました。一生懸命打ち込めることがあるのは幸せであり、素晴らしいことだと思います。今の時代、楽しみ方がたくさんある中で、心と体と、仲間とつながっていけることを実感できるのはスポーツの良さだと思います。バットに当てた時の感触などはどんなにAIが進んでも経験できないこと。甲子園を初めて訪れて開会式の入場行進を見て、こんなに選手が声をかけあって行進しているんだと、あの場所に立ったから感じられました。スポーツは生で見るものだと思いましたし、今後も魅力として多くのみなさんに伝えていきたいと思います」

 開会式、始球式を経て、1回戦から決勝まで31試合の熱戦がスタート。開会式の最後を飾った神戸山手グローバル高による大会歌『今ありて』の合唱は素晴らしい歌声で「球春到来」を実感した。球児にとって開会式は、今大会も学びの場となった。

取材・文=岡本朋祐
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