ジェットコースターのような思い

センバツ出場へと導いた横浜高・村田監督は抽選会で講話をした[写真=BBM]
神奈川春季県大会の組み合わせ抽選会が4月2日、横浜市内で行われた。地区予選を突破した81校に加えて、センバツ出場の横浜高(地区予選免除)と計82校のチーム代表者が出席。1、2回戦の対戦カードが決まった。
抽選を終え、県高野連理事の先生が試合会場を調整する時間を利用して、センバツ出場校・横浜高を指揮する村田浩明監督の講話があった。昨春は19年ぶり4度目の優勝。前回王者として聖地に立ったが、神村学園高(鹿児島)との1回戦で敗退(0対2)した。
「たくさんの人たちに支えていただきながら、初戦敗退という結果で神奈川に帰ってまいりました。すごく悔しい思いも、もちろんございますが、すべてが足りなかったという、非常に情けない姿を見せてしまったなというところで、反省している次第であります。昨年は、センバツ大会優勝という形で、今回は初戦敗退と、本当に天国と地獄みたいな形で、最高の思いと悔しい思いをして、今、ジェットコースターのような思いであります」
ちょうど1年前の講話ではセンバツ優勝のエピソードを語っていただけに、実感がこもる。村田監督はこの時間を有効活用する。抽選会を見届けると、新たな感情が芽生えた。
「毎回、大会は目の前に訪れます。春のセンバツが終われば、春の県大会、春の県大会が終われば、夏の選手権大会、そして秋の新チーム、センバツ大会と、目まぐるしく大会が控えている中で、一つひとつベストを出して結果を残すというところでは、必ず勝ちもある、負けもある、と。今回、本当に悔しい負けをして、この負けをどういうふうにエネルギーにしようかということで、選手もそうですし、スタッフもそうです。そのような形で再スタートを切っていますが、抽選会場で皆さんの姿を横から見させていただいたんですけれども、おそらくキャプテン、マネジャー、チームの代表、それぞれのチームの核となる人たちがこのクジを引いたと思うんです。その姿を見て、すごくやってやろうというようなエネルギーを感じることができました。その姿を見て、私もこの春、頑張らなければな、というような思いになりました」
センバツをこう回顧した。
「大会前に練習試合を9試合やりました。ものすごく調子が良かったんです。(エースの154キロ右腕の)織田(
織田翔希)もビタビタで153キロが出たり、大阪に入っての練習試合も圧倒的な勝ち方をして『よし、これなら間違いなく、うまく入れる』と自信を持って甲子園の初戦に入りました。ところが、甲子園は甘くないんですよね。試合後、神村学園さんに聞きました。神村学園さんは練習試合では、うまくいかない状況だったそうです。本番の甲子園ではベストゲーム。そこの差は何なのかなと思った時に、練習試合の前段階ですよね。どれだけ積み重ねてきたものがあるか。開幕前に調子が悪くても、公式戦で力を発揮できれば、それが一番の信頼なんです。練習試合でいくら力を発揮しても、意味ないんです。公式戦で勝たなければ……。そういったものも今回の甲子園で知ることができました」
自分たちの世界が作れるチーム
苦悩を明かす。
「昨年のチームは
阿部葉太主将(早大)、
奥村頼人(
ロッテ)が中心でいましたけども、どうしても比べられてしまうんですよね。比べられる中で、阿部の代に勝とうではなくて、自分たちの世界を作っていかなければいけないというのも大事だと思いました。監督である私も比べないようにしているんですけども、どうしても比べてしまうんです。比べれば、やっぱりすべてが劣ります」
抽選会は15時開始。14時頃に活動拠点の長浜グラウンドから抽選会場に向かったが、朝8時からの練習は「もう、ずっとミーティングです。全然、練習が進んでいかないです」と赤裸々に語った。
「今週末から県大会始まるという状況なんですけど、全然、選手がまとまりません。そして、明日から高校ジャパンの代表候補合宿に4人が選ばれたので、中心選手は2泊3日で不在。チームが今、崩壊までいかないかもしれないですけども、大変な状況になっています」
3回戦から登場の横浜高は、初戦を4月11日に控える。ここからが、村田監督の腕の見せ所である。チームの代表者に向かって、本音で語り出した。
「でも実は、その時間が大事なんですよね。そこから逃げない。そこの時間をしっかり使う。皆さんもおそらく、いろいろな選手たち、後輩たちがいると思うんですけど、うまくいかないチームって、やっぱり選手たちがバラバラなんですね。その時にやっぱり何が必要かっていう時に、ここにいる核となる選手たちが、仲間を引っ張ってやる。ここに監督が入って、監督がチームを作るという組織で、強いチームは1校もないですからね。やはり、キャプテン、副キャプテン、マネジャーがはっきりと物事を言って、自分たちのチームをどうしたいのか、と。本当に勝ちたいのか、本当に甲子園に行きたいのか、そのためにはどうしたらいいのかっていうことを、自分たちの世界が作れるチームというのが、絶対大事だと思います」
チームの現状を、こうも明かしている。
「今、甲子園が終わって、横浜もブレています。恥ずかしいんですけど……(苦笑)。今日も一言も、選手とは喋らず、午前中、朝8時から練習やろうとしたんですけど、全然、らちが明かなくて、バラバラなんですよね。この春の県大会で勝てるのかなと思うんですけど、それがまとまったらたぶん、また違った力を出すんじゃないかな、と。何が言いたいかと言えば、ここにいる部員の皆さんがやっぱりチームをどう作っていくかということが大事です。監督を絶対勝たせたいとか、いい思いをさせたいとか、最後まで一緒にやりたいと皆、思っています、絶対。どれだけ人のために、学校のために、監督のために、家族のために力を注げるのか。そういった集団になれば、おそらく神奈川大会を勝ち抜くことができるんじゃないかと思います。私からこんな高い席から、(センバツ)1回戦負けの監督がこんな話をするのも、申し訳ないんですけども、また横浜高校は、この春の県大会で出直していきたいと思っています。皆さんで、最高のこの春の県大会にして、最高の夏を迎えられるように、一緒になって頑張っていけたらなと思います」
この日の技術練習はなし

抽選会後、取材に応じた横浜高の主将・小野は厳しい表情のままだった[写真=BBM]
村田監督の講話を聞き入った小野舜友主将(3年)は言う。小野自身も高校日本代表候補に選出されており、4月3日から3日間、チームを離れなければならない。
「まずは自分たちがしっかりとチームを作り上げて、一から始めないといけない。チームとして戦っていく上で、チーム作りを一番にしていかないといけないなと思います。まずは、選手がまとまらないといけないと思っていますし、本当にそこが一番野球をするにおいて、自分たちはそこが足りてないと思うので、まずは選手でしっかりとグッと固まって戦っていきたいなと思います」
そして、具体的な取り組みについて触れた。
「負けたのには原因があると思いますし、あれだけの準備をして行ったのにもかかわらず、ああいった結果を残してしまった。監督さんは『自分の責任』とは言っていますけど、間違いなく自分の責任。キャプテンをやらせてもらっている自分自身の責任だと思っているので、誰もが納得のいく結果を残せなかったので、そこは、この県大会でその悔しさを晴らせたらなというふうに思っています」
この日は、技術練習をしていない。選手だけで、膝を突き合わせた。
「ミーティングを重ねて、どうしていかなければいけないとか、ここが、足りないとか、ここは絶対なくしていかないといけないとか、こんなこと絶対あってはいけないという、そういった話をずっとしていました」
村田監督は改めて「感謝」の思いを語る。
「神奈川大会は注目度が全然違います。そういった中で監督ができているのは幸せですし、ライバル校もたくさんいますけども、お互い切磋琢磨し、その中でできていることは実は、すごく幸せなことなんです。勝つ時もあれば負ける時もある。でもその時に、本当の姿が表れるんです。負けた時に本当に悔しがって、またさらに強くなれるのか。次の大会に向けて、頑張ろうと向かえるのか。高校野球は、満足したら終わりです。勝っても、次の大会がやってきますし、負けたら、その悔しさを次の大会に生かす。そうやって繰り返してレベルアップし、歴史と伝統、そして次世代に継承していく素晴らしいスポーツなんだなというのを、本当に肌で感じています。かつて、神奈川の公立高校で指導させていただいたことがありますが、勝つためにはどうしたらいいかということを、どれだけ積み重ねていって大会に入れるか。大会とは、取り組んできたことを発表する場。相手を見るよりも、自分たちの力を発揮する。それがきっと大きな力を生んで、最高の経験、最高の思い出になるんじゃないかなと、指導してまいりました。神奈川の高校野球はレベルが高いと思っていますし、皆さんが毎日練習して、毎日努力して、そして、目の前のゲームにすべてをかけてという中で、自分たちもたくさんの感動をすると思いますし、全力プレーの先に見ている方にも、応援してくださる方々にも感動を届けられる。ものすごく大事な時間、そして時を過ごしていると思います」
もがいた分だけ、その壁を乗り越えた際の充実感は格別である。横浜高の選手たちには、現状を打開するだけの思考力、行動力がある。春を経て、夏にはどんな顔で戦うのか。グラウンドで一緒に汗を流す村田監督は、生徒たちとともに日々、成長していく。
取材・文=岡本朋祐