充実した高校生活を

日本高野連・寶会長は3月31日、センバツ閉会式で講評を述べた[写真=毛受亮介]
4月に入って春休みが終わり、2026年の新年度が始まった。高校野球界では各校に新たな野球部員が入部。3月までの2学年から3学年がそろい、夏に向けて活気が増している。春季大会も全国各地で実施されている。
フレッシュな気分で部活動を本格化させるにあたり、学生野球の本分を考えてみるのも良い機会だ。日本学生野球憲章の第1章総則の第2条の「学生野球の基本原理」の冒頭には「学生野球は、教育の一環」と記されている。そこで、最高の教材となったのがセンバツ閉会式での講評だ。日本高野連・寶馨会長は全国の高校球児へメッセージを送った。
テレビ、パソコン、スマホの画面の向こうで見ている視聴者に話しているようだった。
「全国の高校野球部員の皆さん、昨年の秋からこの春までの間に大きく成長したことと思います。これから夏に向けて、さらに体も精神力も野球の技術も成長することと思います。野球も頑張り、勉強も頑張るということで、充実した高校生活を送ってください」
センバツ大会は熱戦の連続。寶会長は最後まであきらめない「ネバーギブアップ」についても、出場校の頑張りを評価していた。
あきらめない姿勢とは、どこから生まれるのか。常日頃からの真摯な活動に尽きる。
努力する姿勢の大切さ
センバツには32校が出場したが、日本高野連には3798校が加盟している(2024年5月末現在)。寶会長が発信した統括団体からの思いは、全国の加盟校にも十分、届いたはずだ。文武両道を実践していく中で、この3月には、大きな学習の機会があった。第6回WBCである。2016年から母校・池田高(徳島)を指揮した井上力監督(今年4月から名西高監督)は「世界一」を目指した侍ジャパンの戦いを通じて、気づきがあったという。2度目の大会連覇を遂げることはできなかったが、ハイレベルな強豪チームと立ち向かう上で、その原点には高校野球の精神があると、生徒たちに説いたのだ。
「日本の選手たちには、他国のスター軍団にはない『特別な絆』があります。その正体は、高校野球」という共通体験です。日本の野球選手は、プロになる前、全員が『甲子園』というたった一つの場所を目指し、青春のすべてを懸けて戦った経験を持っています。そこは、ただのスポーツの大会ではありません。『仲間のために何ができるか』を考え、自分の犠牲をいとわず、チーム全員で一つのボールを追いかける。勝っても負けても涙を流すほどの情熱を注いだ3年間が、彼らの体には染み付いているのです」
さらに、こう続ける。
「プロになり、技術やパワーがついた今も、彼らの心の根底には『チームのために』という精神が息づいています。急ごしらえのスター軍団には真似できない、阿吽(あうん)の呼吸や、ピンチでお互いを信じ抜く力。技術の戦いを超えた、日本独自の『心の野球』。それこそが、日本が世界と渡り合い、勝利をつかむための最大の武器なのです」
野球人である前に、高校生である。勝負に挑む上で切磋琢磨する過程こそが、学生野球の神髄。仲間と声を掛け合い、励まし合い、困難に立ち向かい、自ら考えて行動する姿こそが、高校球児を大きく成長させてくれる。白球を通じて、努力する姿勢の大切さを学ぶ。人生を生き抜いていく上で、大きな活力となっていくのだ。
取材・文=岡本朋祐