開幕から5試合連続無失点

今季の開幕前に支配下昇格を果たした廣澤。一軍戦力として腕を振っている
今年の
ヤクルトは一味違う。負ければ今季初の3連敗となる4月11日の
巨人戦(東京ドーム)で、3対2と接戦を制した。先発左腕の
山野太一が7回まで失点を2本のソロに抑えると、8回は
星知弥、9回は新外国人の守護神
ホセ・キハダがいずれも三者凡退の快投。我慢比べのローゲームを逃げ切った。
昨年は最下位に低迷したが、
池山隆寛監督が就任して巻き返しを図る今季は開幕から13試合を消化して9勝4敗。快進撃を支えるのは抜群の安定感を誇る救援陣だ。キハダが開幕から5試合連続セーブと剛速球を武器に快投を続け、セットアッパーに星、
木澤尚文、
荘司宏太、
清水昇、
田口麗斗、新外国人右腕の
ヘスス・リランソと個性あふれる投手たちがそろう。この中で新たな戦力として稼働しているのが、育成出身右腕の
廣澤優だ。
独立リーグ・愛媛マンダ
リンパイレーツから育成ドラフト2位で入団すると、ファームで経験を積み重ねて今年の春季キャンプで一軍メンバーに抜擢された。身長193センチの長身から投げ下ろす最速159キロの直球が最大の武器で、チェンジアップ、スライダー、フォークと変化球の質も高い。開幕前に支配下登録を勝ち取ると、5試合連続無失点の好投を見せている。
流れを引き寄せる力
廣澤は試合の流れを引き寄せる力を持っている。4月5日の
中日戦(神宮)で5点ビハインドの7回に登板。2つの四死球を出して暴投もあり二死二、三塁のピンチを招いたが、ドラフト6位・
花田旭を遊ゴロに仕留めた。すると、直後に打線が7得点の猛攻でプロ初勝利をつかんだ。8日の
阪神戦(甲子園)は1点差を追いかける5回に登板。
森下翔太を外角のスライダーで見逃し三振、
佐藤輝明を155キロ直球で空振り三振。
大山悠輔も154キロ直球で左飛と強力クリーンアップを三者凡退に抑えると、6回に味方が逆転して2試合連続白星をマークした。
日大三高で2年夏に甲子園出場してベスト4に進出し、世代屈指の大型右腕として注目された。だが、社会人・JFE東日本で過ごした4年間は目立った実績を残せず、愛媛に入団した。廣澤は社会人野球でプレーしていた23年6月の母・ひろみさんを癌で亡くしている。北海道への遠征中だったため、最後を看取ることはできなかった。四国アイランドリーグplus入りを選んだ理由について、「母が亡くなって、一番つらいのはやっぱり父(誠一さん)だと思うので。父を楽にさせてあげたいっていう気持ちは、自分の中にあります」と明かしていた。
この決断が運命を変えた。制球力が課題だったが、同リーグで実戦のマウンドを多く経験していく中で、状態がいい日と悪い日との違いを感じられるようになっていた。現役時代にヤクルトでセットアッパーとして活躍した
平井諒コーチから「調子が悪いとき、体が万全の状態じゃないときの投球をどうまとめるのか? が大事」と助言を受けた言葉が脳裏に刻まれている。
「そういうときに、いかにいいピッチングができたり、自分の思ったとおりに抑えられたりできるか。そこはずっと練習の中でも意識していますし、試合の中でも意識はしていますね」
新人王の可能性も十分
ヤクルトは昨年に荘司が球団新人記録のデビューから12試合連続無失点をマークするなど、45試合登板で2勝1敗28ホールド、防御率1.05をマークして新人王を受賞。「真っすぐとチェンジアップには自信を持って、そこを評価されてプロの世界に入れたと思っていたので。そこのスタイルを崩さなければ大丈夫だろうと」とブレない姿勢を貫いたことが、好結果につながった。
今年の新人は開幕投手を務めた
竹丸和幸、
田和廉(ともに巨人)、
中西聖輝、
櫻井頼之介(ともに中日)など即戦力の投手が多い。黄金ルーキーたちの注目度が高いが、昨年まで一軍未登板だったプロ2年目の廣澤も新人王の資格を持っている。シーズンはまだ始まったばかりだが、救援で1試合でも多くチームの勝利に貢献すれば、サクセスストーリーを切り拓ける。大きな可能性を秘めた右腕に要注目だ。
写真=BBM